「当該」
このごろその使い方が気になっている言葉に「当該」という言葉があります。
『広辞苑』(第4版、1991年)で調べると、名詞の前につけてという意味だと思うのですが、「名詞に冠して用いる」ものだとして、用例として、「当該事件の関係者」と「当該官庁」をあげています。前者は「そのこと。そのもの。」、後者は「そのことに当ること。その受け持ち。」をその意味としています。1952年版の三省堂の『明解国語辞典』にものっていました。2つの意味があるとして、「その・こと(もの)の。その。」と「そのかかりの。」をあげています。第5版として出版当時話題になった1997年版では、使い方としては体言を修飾するものとして、「その事に関係が有る(する)。」という意味で「当該の番地は現実に存在しない由/当該事項・当該警察署」という例文をあげています。
もしこれらの字引の用例のニュアンスが正しいなら、われわれ、人民が耳にして、ちょっとまどろっこしいと思うのは無理のないこと。われわれが使わなければならない言葉ではないようです。「まどろっこしい」は「することがのろいので、いらいらするさま。」という意味。
日本語にも、せっかく「その、この、あの」というような便利な言葉があるのですから使えばよいのに、法律的な厳密さ、ずるさともいえると思うのですが、おそらく本来はそういう目的で使うと思われる「当該」なんていう言葉をわれわれはつかう必要はないと思います。
(2013/09/14)