リニアと原発の共通点
電力会社や財界が原発の再稼動をしたい理由は、エネルギー問題よりは、経済的な問題にあるようです。10月8日の毎日新聞(ウェブ版)によれば、東電が金融機関に示す収支計画で柏崎刈羽原発の再稼動を来年4月に予定しているそうです。「原発が1基動けば東電の収支は年1000億円程度改善する計算で、銀行団から融資継続に理解を得やすくなる」(※)からということです。
※ 『毎日新聞(ウェブ版)』 2013年10月08日 06時00分: 「柏崎刈羽:「来年4月再稼働」 東電、収支計画で設定」
リニアと原発の関係については、リニアが新幹線の3倍ほどの電気を食うことから、電力不足が問題でその解決のためには原発再稼働が必要なのではないかという見方があると思います。それは実は、こいうことだと思います。鉄道産業に詳しい拓殖大学の王曙光教授は『人民網日本語版』のインタビューのなかで、「リニア中央新幹線事業は自民党にとって原発再稼働の新たなカードともなるだろう」と語っています。自民党の主張としては「日本の最高技術を代表するリニアはひとたび営業運行が始まれば、莫大な電力を必要とする。そしてこの新たな電力需要を支える望みは原発再稼働に託すほかない」ということになる。しかし王曙光教授は、「東日本大震災後、日本は相次いで原発を停止し、毎年電力不足に陥っている。リニアの莫大な電力をどう確保するかは懸念材料だ」と、どうしても原発でなくてはならないといっているわけではありません。
『人民網日本語版』2013年7月11日 「日本のリニア中央新幹線が抱える懸念材料」
中国の寧杭高鉄の南京と広州の間は、249kmで、総投資額が237億元、工期4年半だそうです。それに比べ、似た長さ約290kmのリニアは、投資額が16倍、工期は13年以上かかるから、スピードの優位性はあったとしても「投入産出の経済性の観点から見れば」リニアは割りに合わないと王教授は指摘します。
リニアには多くの問題があるのに、日本が積極的に推し進めるのはなぜかという問いに対して、王教授はリニアは「日本政府の投資事業ではなく、民間企業であるJR東海の事業」である点を示した上で、JR東海がリニアを推進するのは「開発段階ですでに数百億円が飛んだため、JR東海は営業運行を実現して、国内のライバルに対する競争優位を維持し、できるだけ早くコストを回収することを強く望んでいる」からだといっています。
王教授のこの分析が正しいとすれば、なんか原発の再稼働とにていませんか。ドイツ以外の浮揚式鉄道を開発してきた各国が早々に開発を断念したのに、日本はだらだらと50年以上も開発をし続けて莫大なお金を費やしてしまったようです。
参考
(2013/10/09)