国策?

 リニア新幹線はJR東海という民間会社が単独で行なう事業といわれたとき、ほとんどの大人はJR東海って本当に民間会社なのかなと思ったのではないでしょうか。国有鉄道が分割民営された結果できた一応民間企業です。一方でJR東海はリニアは全国新幹線鉄道整備法に基づいて行なわれる事業であり、用地取得、残土処理などの重要なことがらについて地方公共団体が協力することは当然のように考えているようです。そしてリニアの沿線の建設推進期成同盟の人たちは国家的プロジェクトとか国策とかいって熱心に推進活動をしてきたし、現在は「準国策」なんてこともいっています。

 国策といわれてまず思い出すのは、「富国強兵」です。これは1945年8月に破綻しました。周辺諸国の人々を多数殺したり町や村を破壊したりしたのですが、国民もひどい目にあいました。「満蒙開拓」も国策でした。「高度経済成長」も国策の結果でしたが、公害などの負の側面もありました。原発も国策でした。国策で国民がほとんど被害を受けなかった例というのはむしろ少ないのでないでしょうか。逆に年金制度とか医療保険制度とか国民に利益のあると思われる政策はないがしろにされる。

 であるのに「国策」とか「国家的プロジェクト」といえば話が通じるというところが怖いです。大規模公共事業に期待する地方の政治家の何とかの一つ覚えとしか思えません。

 リニアは、あるときは民間企業の単独事業だという、あるときは国家的プロジェクトだと説明される。こういう矛盾する説明がなされる事業にはきっと法律的な抜け道とか大きな問題があるのではないかと思います。

(2013/11/04)