「いいかげん無駄じゃね?」日経の記事から

 日本経済新聞社の出版物のホームページに掲載された記事から3つを拾ってみました。日経は土木建設関連の日経ケンプラッツの中でも南アルプスのトンネルの工事の困難なことを紹介していましたが、リニアの建設の意義についてもかなり批判的な記事を載せています。日経ですらこういうスタンスなのですから、建設促進派の方は頭を冷やしたほうが良いと思います。

素朴な問いだが、品川と名古屋のターミナルは地下40メートルの深さにつくるというが、その乗り換えにそれぞれ何分かかるのか。また、リニア中央新幹線の運行は1時間に5本を予定しているらしいが、そのうち中間駅に止まるのは何本か。地方の振興に役立つのか。
現在約1時間40分かかる東京-名古屋間を40分に、そして2045年に大阪まで全面開業した場合、東京-大阪間を1時間で結ぶことから経済が活性化する。また現在の東海道新幹線と2本立てになることから、地震や津波に強い大動脈が完成する。世界に先駆けて本格的なリニア新幹線を実用化すれば、海外への展開が図れる――。これらが代表的な期待の声だ。
 その一方で、「巨大で先端的で未来的で超絶的な科学技術の追求を無条件に賛美する態度に、しばらく前から疑問を感じはじめている」とし、「こういうのって、いいかげん無駄じゃね?」と素朴な感想を書きつつ、「トップの判断に反映されないことの不思議さは、やはり誰かが指摘しておかなければならないのだと思う」という声も。おそらくこうした意見は少なくないだろう。
上海国際空港のリニア・モーター・カーを初めて利用した。乗ってみて三つのことに驚いた。まず一つは,予想した以上に本格的に作られた交通機関だったこと・・・二つ目の驚きは,上海市がこのリニア線を超短期間で完成させたこと・・・三つ目の驚きは,このリニア路線が経済的にまったく成り立っていないこと
ところで,筆者が上海リニアに乗って感じたもう一つ別のことがある。「ああ,これでJRのリニア開発計画も終わったな」という何とも言えない思いである
日本の超電導リニア開発に注がれた数百億円の研究費と30年に及ぶ技術者の努力が水泡に帰そうとしている。今日も疾風のように駆け抜ける上海リニアは,日本の研究開発プロジェクト,あるいは日本という国のもたもたしたシステムに対する痛烈なメッセージである。そもそも新幹線を超える高速鉄道開発の着想自体が間違っていたのか,超電導方式を選んだことに無理があったのか。あるいは,途中で常電導方式に変更するという判断はできなかったのか。
リニアのようなリニアなものをリニアに追求している人たちの人生が、あまりにもリニアに過ぎないかということを言おうとしている……
速度の向上、時間短縮、といった効果は驚きも喜びもどんどん薄れていくものだ
何十年も取り組んできた目標から撤退することが容易なミッションでないという事情はよくわかる。  一度掲げた看板を下ろすことは、関係者が多ければ多いほど大きな犠牲を伴う作業だからだ。
この「撤退できなさ」に、エリートの不自由さを感じる。エリートは安易に撤退しない。  別の見方をするなら、彼らは、撤退しないからこそ、エリートになった人々でもある。  特に、エリートが集団になった時、彼らは、決して後戻りをしなくなる。  私は、このことを懸念している。
優等生は大人にならない。  だとしたら、実に困ったことではないか。
 原発があきらめられなかったり、リニアから撤退できなかったりすることの主要な原因は、企業の論理や集団の力学に求めるべきで、こういうところに「撤退経験なきエリート」みたいな思いつきを持ち込むのは、話を混乱させるだけなのかもしれない。
とはいえ、単純な話として、 「これ、無理してないかなあ」 「こういうのって、いいかげん無駄じゃね?」  という素朴な感想が、トップの判断に反映されないことの不思議さは、やはり誰かが指摘しておかなければならないのだと思う。
偉くなるにつれ、周囲が失敗から彼らを遮断するので、目覚めるチャンスが与えられない。

そういえば次の記事も日経のサイトに掲載されたものでした。

 これらを読んで、思い出すのは、関東軍の独走が日本を戦争に引きずり込んだこと。廬溝橋事件の張本人が現場の師団長たちの強い反対を押し切って、単に仲間内の情実で認められたインパール作戦を強行して大きな犠牲をだしたこと。そして誰も作戦失敗の責任をとらなかったこと。JR東海会長の葛西敬之さんも、中央新幹線小委員会の家田仁さんも東大出、国鉄入社のエリート。

(2014/02/13)