シンポジウム「中津川市坂本の湧水湿地保全を考える」


 7月21日、表題の会に参加しました。直接はリニアとは関係ありませんが、リニア駅へのアクセスのための道路(濃尾横断自動車道)がラムサール条約湿地として指定されてよいほどの価値をもつ坂本の湿地を破壊する恐れがあり、なんとか保全しようという内容の会でした。

 なかなか盛りだくさんの内容で時間がややオーバーしました。ハナノキやシデコブシの生育環境が非常に特異な条件のなかで出来上がっていること、ハナノキやシデコブシ以外にも多様な希少生物の生活環境であることなど。

 地域の環境に根ざした生活(里山を利用することが湿地を守ってきた)を守るということ、情報はすべて公開の場で論議されなくてはならないということ、住民の希望を行政にむかって述べるべきことなど・・・・。

 県のこの事業の担当者を呼んで事業内容の説明を集会のなかで実現できるこの会の交渉力はたいしたものと思いました。また、集会を最後まで、熱心に聞いている県の担当者の姿も立派でした。

 景観というと風景という目で見た感じのこと、個人の感情や好き嫌いに左右されるあやふやでどうでも良いものという印象がありますが、本当はドイツ語のラントシャフト Landschaft という概念を日本語で「景観」と表現したのが始まりで、単なる風景のことではないようです。これは、JR東海のアセスメントが景観をあたかも1枚のフォトモンタージュを検証すれば事足りる単なる視覚の問題だとするような態度に、われわれが何か違和感を感じる、そういう考えかたのすれ違い、食い違いに対応することがあるのではないかと思いました。ラントシャフト は古い時代には地方行政区、郡、郡会などのことをいったようです(三修社、ロベルト シンチンゲル他『現代独和辞典』)。自然環境の一区切りの中に一つの地域社会が一つのまとまりとして存在しえた時代のことなのでしょう。そして現在でもドイツはそういう景観が守られているように思えます。(参考)

 愛知県瀬戸市のグランドキャニオンができたのは、そんなに古い時代ではなくてわずか数十年前のことという話も意外でした。3~40年前にみた記憶があって、瀬戸物用原料の採掘のためだから昔からこうだったのだろうと思っていたのですが。確かに今思えば変なところがありますね。採掘しているのも主としては瀬戸物用原料ではないとのことでした。このくぼ地をリニアの残土処理に使うという話が出ているそうです。

 残念ながら湿地の現地を見学する時間的余裕がありませんでした。

 行きがけに清内路峠を越え南木曽の信号を右折し読書(よみかき)の災害現場を横目に見てきました。19号線は仮橋で通れるようになっていましたが、土砂や流木を片つける重機がまだ動いていました。木曽川の河原には多量の流木がありました。以前、頻繁に通ったことがある場所ですがこんな危険性があったとは思いませんでした。JR東海の中央西線はまだ復旧していないようです。JR東海はこういう路線も抱えているのですからリニアのような無謀な投資計画をする余裕は本来ないはずです。飯田線では2004年10月の台風23号で盛土が流失して列車が脱線転覆し負傷者がでた事故がありましたが、JR東海は辰野町と地元の水利管理組合に対して6300万円の損害補償訴訟を起こし、和解で300万年の解決金を受け取りました。今回もそういう訴訟を起こすのでしょうか。

 往復とも清内路トンネルを通りましたが、トンネルのほぼ中央に路面の高さが不自然に変化する場所が確かにあります。飯田方面から木曽方面に向かって走るほうが分かりやすい。これは地質の悪いところに十分な方策をせずにトンネルを掘った結果だという話を聞いた覚えがあります。距離の増える分(20.4km)の燃料代(約230円)と高速料金(1100円)を比較すると時間の許す限り、また目的地によっては清内路峠越えになるし、恵那山トンネルは天井パネルをはずしたのですが、やっぱりなんとなく怖いですね。リニアのトンネルも同じように中央アルプスを掘るわけです。中津川線は中央アルプス越えのトンネル掘削途中でオジャンになりました。着工したとしても多分リニアもトンネル工事の困難で頓挫するでしょう。


会場の坂本公民館。19号線の深沢信号から入っていく道の案内は坂本事務所になっていました。事務所=市役所の支所と公民館が一緒にあります。右の体育館が会場でした。


坂本事務所の入り口の左の入り口には「リニア推進坂本事務所」という表示が3つもあります。なんか無駄な感じです。


ここにもリニアの自販機がありました。サントリー製品を売っています。左はダイドー、中はチェリオです。チェリオだけが100円でした。青という色は食品のパッケージには向かない色だと思うのですが、まあどうでも良いです。


売り上げの一部は「リニアの見える丘公園」の建設基金に寄付されるそうです。

(2014/07/22)


 次の発言は、2013年秋の準備書の説明会のなかでのものです。発言者は準備書が出る直前までルートが通過するという予測のあった地区に住む方です。現在、実際には立ち退きとか日照権とか直接的には関係ない立場の方です。景観についてのJR東海の解釈を的確に指摘していると思います。また、われわれが「景観」という言葉の中に本来持たせるべきである意味内容についても簡明に述べておられると思います。

丁度トンネルから出る近くにおりまして心配しておりましたが、若干南のほうへいったということで、私どもの近所ではほっとしておりますが、とにかく今までの説明のなかで、イメージ図等からみて、非常に遠くの人たちは大変景観もいいじゃないか、というような、上手な作り方をしておるかと思いますが、そのほんと直接、建物、建物じゃなくて、工事によってかかわる近所の人たちについては非常に、私も、8月29日の、丁度、実験線の延長のときに、地元へいってみせていただいたんですが、やはり、付近の皆さんは、集落が非常に分断ということイメージはありませんでしたけれども、やはりその構造物等で非常に哀れといいますか、気の毒なそんな姿をみてまいりました。そういうことで大勢の皆さんは、やはりこの大プロジェクトのなかで歓迎はするとは思いますが、そういうほんとう直接的に不安だ、また困るという人たちの対応をぜひJR東海さんでせいいっぱいのこの相談にのっていただいて、あとでくいのないような、そのゆずっていただいた皆さんにくいのないような対応を是非お願いをしたい、強く要請をし、またそれにたいする回答をいただきたいと思います。

(2014/07/24)