リニアの父はバカ息子の真実を知っていた

 『日刊ゲンダイ』がリニア開発の中心的人物だった京谷好泰氏がリニア技術の軍事転用を懸念していたと伝えています。

リニアのように高速で物体を移動させる技術は、ロケット発射台や、航空母艦から航空機を発進させるカタパルトに応用できるのです(2002年の『読売新聞』の記事にあったとされる言葉)

 記事を読むと、もともとは『朝日新聞』の記事に触発されて『日刊ゲンダイ』が別の情報を根拠に記事にしたもの。

 『朝日』によればリニアの軍事技術転用は、レールガンには力不足、空母のカタパルトでは超伝導磁石の冷却が問題。あまり見込みはなさそうです。結局、ある政府関係者の「リニアは軍事転用の恐れもあるからこそ、絶対に信用できる米国とやりたい。リニアは『日米同盟の象徴』なのだ」という言葉だけが軍事転用の可能性の根拠だと思います。

 レールガンは原理が違うし、カタパルトで問題なのは加速力です。『朝日』の記事はおおげさすぎるように思います。

 むしろ『日刊ゲンダイ』の京谷好泰氏の懸念のほうが興味深いです。京谷好泰氏には内心リニア(=バカ息子)はたいした技術ではないことの自覚があったのでしょう。だから、開発に無駄に時間と巨費をかけた言い訳として、軍事技術への転用が考えられるほどの優れた技術といいたかっただけなのではと思います。京谷さんはまだご健在なので誰か確かめて反論してください。軍事技術から転用された民生技術のなかには危険なものが多いようです。その代表格は原発。リニアが万が一バカ息子でないとしても警戒すべきものでしょう。軍事技術こそ最高と考えていた技術者達が開発してきたんですから安全性は2の次です。

 太平洋戦争当時、すでにアメリカ海軍は多数の哨戒機による哨戒網、それからレーダーを使い日本軍機の行動を事前に把握して高々度で待ち伏せしたり、それでも近くにやってきた日本軍機には命中しなくても飛行機の近くに行けば爆発する砲弾を使いました。現代において、信頼性のない技術を用いてでも発進間隔をより短くして多数の戦闘機や攻撃機を発艦させる意義はあまりないと思います。中央新幹線へのリニア技術の応用も日本全体の鉄道体系という点からみれば、ほとんど無意味ということで同じですね。個々の技術よりは、それを道具として使いこなす組織をしっかり考えるほうが大切だと思います。高速道路の制限速度は20年前と変りませんが、物が届くはやさは20年前とは比較にならないほどはやくなっていますよ。

 リニアは技術的には優れているけれど、経済的な問題、環境問題から日本では無理なのではなくて、じつは、リニアは技術的にも筋の悪いもので洗練される見込みがないうえに、そしてだからこそ経済的に成り立たないし、環境にも多大の負荷をかけるのだと思います。無駄なものでも建設するという行為に価値があれば何でもやってきた結果の一つが福島の原発事故だと思います。これまでのそういうやり方について「ちょっとまて」と言われたと受け取るべきじゃありませんか。原発事故はまだ収束の糸口も見つかっていないのです。そして、別の原発が新たに事故を起こす可能性もある。

(2014/09/03)