中川村リニアを考える会、第2回学習会
1月17日、中川村文化ホールで「中川村リニアを考える会」の2回目の学習会がありました。主催者の予測より多数の人数が集まったようで、会場は満員でした。
最初の話は地質学者の松島信幸先生。要点は、(1)リニアのトンネルのルート上に断層はたくさんある。地震でトンネルがずれるとしても、断層が動くことは1万年はないとJR東海は予測しているが、ルート上の活断層は未調査なのだから基本的にいつ動くかはわからないはず。(2)南海トラフ地震が発生すればリニアのルートの甲府盆地南部は震度7、赤石山地(富士川から天竜川の間の50km)は大きく崩れるから、JR東海のいうようなバイパスにはなり得ない。(3)南アルプスの構造線の破砕帯への理解が欠けている。(4)赤石山脈は世界でも最も新しい変動帯で山はたえず歪みトンネルは潰されていくのでたえず補修をし続けなくてはならない。(5)赤石山地は1500万年を費やして形成された。リニアのトンネルはせいぜい50年の寿命にすぎない。「人間の欲望の浅はかさと、倫理にそむく行為は、山が持つ動きとバランスを狂わせる。財界と安倍の欲望で悪夢のリニアを受け入れてはいけない。」
次は土木技術の経験のある桂川雅信先生。環境アセスメントでJR東海は残土の処分先について明確にしなかった理由は、伊那谷には安全な処分場所が存在しないことを理解していたので、将来の災害の責任を回避するためで、それに対して地元の自治体が処分地として手を上げるのはおかしいという指摘がありました。確かに豊丘村や松川町、下條村のようにいせて残土の受け入れを申し出たのは拙速すぎたかもしれません。残土の置場が決まらない限り工事はできないので、地元自治体の議員はしっかりして欲しいと思います。
質問の時間に誰が利益を得るのかという質問がありました。よくよく考えて見ると、商売として利益を得るのは誰かを予想するのは難しいと思いました。最近、『JR東日本』というムックを立ち読みしたのですが、それによると、JR東海の鉄道会社としての規模はJR東日本やJR西日本に比べるとかなり小さいのです。そんな鉄道会社がリニア単独では採算に合わないといっている。実におかしな話です。ゼネコンも事業主体が国であれば費用の追加も期待できるが、民間企業がお施主では、掘ってみないとわからないトンネル工事はリスクが大きすぎます。最終的に東京電力と同じように国費を投入という道筋がハッキリするまでは銀行だって融資はできないでしょう。冷静に考えると実に無理で道理のない計画だと思います。
戦争中のインパール作戦はビルマ方面軍の第15軍司令官の牟田口中将が主導した作戦です。15軍の参謀や師団長たちは、補給の困難を理由に反対したのに、強引に決行して失敗して多大の犠牲を出した作戦です。決定過程でも責任を持つべき人々が責任を持たず、多数の兵士が犠牲となったにもかかわらず、失敗の責任も誰一人負わなかったという作戦でした。リニアの事業計画の決定過程も、予想される失敗の結果の責任の問題もインパール作戦に似ていると思います。険しい山脈を越えるという点も。
桂川先生もいっていましたが、リニアは実は世界中の国々はもはや見向きもしない技術です。
(2015/01/17記、2015/01/21掲載)