「丘の上」と「丘の下」の温度差
飯田市の東野まちづくり会議の会報「ひがしの」の第31号(平成26年11月26日発行)に、東野まちづくり会議が、リニア新幹線について基礎的な知識を学ぶために山梨リニア見学センターでおこなった研修会の様子の記事がのっています。研修会は昨年の10月18日に行われたようです。
見学センターでは最初見学者が少なく違和感を感じたそうですが、しばらくすると大型バスが次々に到着し混雑したのでリニアの人気のほどが伺えたと書いています。午前9時から1時間ほど見学したようです。
リニア見学センターの次は昼食で「ほうとう」を食べ、サントリーの白州醸造所へより、最後は「道の駅こぶちざわ」。午後5時に飯田に帰ってきたとのこと。リニア見学センター(どきどきリニア館)の実験車両の前の記念撮影場所での集合写真と白州醸造所でのスナップ写真がのっています。
一昨年、2013年秋のリニアのアセスメントの準備書の説明会では、各地でリニアの騒音の様子が知りたいので予定地の住民を対象に実験線の見学会を設定してほしいという要望が出されていました。
「東野まちづくり会議」の「研修会」はそういう切実な目的から行われたものではないようです。昨年の10月18日は日曜日でした。つまりリニアの試験走行は行われていなかったはずです。ずいぶんとお気楽なリクリエーションだったようです。
東野地区は飯田市の旧市街地で斜坑口が1箇所予定されているだけで、路線は全て地下のやや離れたところを通るので騒音の心配は一応ないといってよい地域です。こういう内容の「研修会」というのはどの地域でもありがちだと思います。参加者の積み立てもあるのかも知れませんが「公金」の補助もあるはず。
この記事を読んで、なにをやっているのかと思いました。
にたような話。三重県名張市の市議会で市議会の視察旅行の実態は懇親旅行だとして参加しなかった議員さんが議長から文書で厳重注意処分を受けたそうです(『中日』2月5日)。みんなでやることなんだから、本当は良くないんだけれど付き合えよ、というわけです。
全国的にこういうのが普通なのでしょうか。
一方、1月前の昨年9月11日にリニア駅ができる予定の飯沼北条リニア特別対策委員会は北陸新幹線の飯山駅と周辺の視察を行いました。上郷まちづくり委員会の広報「かみさと」の2014年10月25日(第91号)に報告がのっています。北条地区の直接にリニア工事にかかわる土地に住む人々のほとんどは移転したくないと考えているようです。しかし、リニアファシズム体制の飯田市では自由に物がいえないので紙面にはリニアそのものについての批判的な言葉はありません。飯山では当初70戸の移転予定が50戸に移転したが駅周辺と地区内に残れたとのことから飯田市も地域のコミュニティを重視すべきと書いています。また、いまだにショッピングモールが入るかどうか決まっていない予定の大きな空き地があるなどの報告も。
東野も含め段丘の上にある旧飯田市内を「丘の上」というらしいです。リニアによる直接の「犠牲」が無いと思いこんで暢気に構えている「丘の上」と、あとで合併した上郷や座光寺などの「丘の下」では随分と温度差があるようです。
中央自動車道ができてからの「丘の上」の衰退は明らかだと思います。われわれ村部在住のものでも昔は「丘の上」に買い物に行くことがしばしばありました。しかし、最近は「丘の上」で買い物をすることなどほとんどありません。「丘の上」はある意味ではもう「終わって」いるんだと思います。「丘の上」の人々はリニアを求めるなら、現在の「丘の上」にある中心地としての機能の全てを北条周辺に移動して、北条とか座光寺など「犠牲」になる地区の住民全部のために「丘の上」を開放するくらいの覚悟がいると思いますが、そんな覚悟があるはずはないでしょう。
2月6日にリニア建設促進期成同盟会と三遠南信道路建設促進期成同盟会の定期総会がありました。その席上でリニアの早期開通を目指す決議をしたそうです。その中で高森町の熊谷元尋町長は、リニアには課題もあるのだから「地元の同盟会として地域の声を吸い上げて関係機関に求めるべき」と発言したそうです。それに対して、会長の牧野光郎飯田市長は「別途、そうしていくことは必要だと考えている」と応じたそうです(『信毎』7日)。「犠牲」のでる自治体の首長さんも出席していたはずで、参加した方から聞いたところでは、熊谷町長は大鹿村の柳島村長さんの隣に座っていたそうです。非常に心配されているリニアによるデメリットにおかまいなしの議論のあまりの「ひどさ」に業を煮やしたのかもしれません。リニアの路線から外れた高森町は冷静にリニア事業を評価できる立場でもあり正論だと思います。「別途」ではなく「中心課題」として取り組むべきだと思います。大鹿村、豊丘村、喬木村の村長さんたちが直接にモノをいえないという期成同盟会は異常だと思います。飯田市のまねしてばかりの豊丘村長は別の意味でモノをいわない、飯田市長の意見に大賛成だからだと思いますが。この定期総会では飯田市の「ブランディング」に関わっている竹内宏彰氏が講演をしたそうです。竹内さんは豊丘村の「○×△」にも関わっているのではなかったかと思います。
(2015/02/12)