トンネル残土は産業廃棄物
松川町で「リニアと環境問題学習会」
3月3日、松川町の中央公民館で「リニアと環境問題学習会」があって、参加しました。中川村在住の水環境専門家(土木技術、日本科学者会議)の桂川雅信さんの「リニア中央新幹線の発生土処理と環境について」というテーマの講演でした。
要点は次のようなものでした。
- 残土は産業廃棄物(廃土)で本来リニア事業の環境アセスメントの対象であるのに検討されなかった。処理地の環境影響評価もリニア事業のアセスの一部として行う必要があった。JR東海は残土を有効活用できる建設資材として(「発生土」と呼んで)、活用先の事業の主体に将来可能性のある災害、環境問題の責任を転嫁しようとしている。地元が処理候補地について自ら手をあげるようなことはすべきでない。
- 飯田市下伊那に残土処理に適した場所はない。
- 処理地は全て傾斜地だから下流地域に土石流災害の被害を及ぼす可能性がある。
- 工事に使うコンクリートの寿命は短く、壁の厚さとか角度といった構造物の基準も、それに乗ずる安全率もたかだか100年ほどの短い経験から得たものにすぎない。坂戸橋は80年たっているが状態は良いのは維持管理のためと思われるが、これは珍しい例。JR東海はトンネルは100年大丈夫というが、100年持てば良しとするのか。
- 三六災害(1961年の梅雨前線豪雨による大規模な土砂災害・水害)以後、大きな災害がなかったが伊那谷(天竜川上流域)が危険地帯であることに変わりはない。
- 理由は不明だが自然史的には1000〜2000年で1度程度温暖化してきたのに、この約50年間で1度から3度も温暖化している。また海水温の上昇も認められる。
- 年間降水量は減少傾向にあるが変動幅が増大しており、非常に激しい雨が降ることがある。
- 伊那谷の年間降水量はほぼ全国平均だが、山間地は多雨地帯。
- 天竜川上流域は、地質構造がもろく地形が険しいし、山岳部で降水量が多いことなど、土砂災害の発生しやすい環境下にあり、過去幾度も災害にみまわれてきたことは国土交通省の天竜川上流工事事務所も認めている。(参考⇒ 国土交通省 中部地方整備局 天竜川上流河川事務所:過去の災害、天竜川上流域の地形・地質)
- 生田の廃土捨て場の候補地を観察すると花崗岩が風化した非常に崩れやすい状態になっており、残土を埋めた部分より上部の斜面が崩れた場合、残土がなければその場に収まるものが埋め立ててあれば下に流れて下流域に被害を及ぼすことになる。
生田というのは、松川町のうち天竜川より東側の地域で、寺沢川沿いの2つの谷が残土を捨てる候補地としてあがっています(候補地 *)が、その土地の地権者が置いてくれといっているのではなく、ここならどうかと地権者とは無関係に区があげたものを町が県に知らせたもののようです。JR東海が検討してみて、置くのに都合がよければ、それから地権者と交渉という段階、まだ調査中なのだろうと思います。
* 黄緑色の線は埋め立ての範囲を『伊那谷自然友の会報』第176号、松島信幸:「リニア新幹線 トンネル廃土で谷を埋めるな」を参考におよその位置を示しています。
(2015/03/03)