NHKの誤報

 3月3日だったと思います。NHKラジオのニュースが南木曽町のリニア対策協議会が開かれたと伝えました。その中でちょっとびっくりするようなことをいっていました。

・・・JR東海は、環境保全などに関する地元との協定の締結に前向きな姿勢を示しました。・・・
住民側から、環境保全などに関する取り決めを盛り込んだ協定書を結んでほしいという意見が出たのに対して、JR東海の担当者は、「協定書や覚書などの形で取り交わすことはやぶさかではない」と述べ、前向きな姿勢を示しました。・・・(3月3日 18時14分 NHK長野放送局のHPより)

 一方4日の『中日』は環境保全協定については何も書かれていません。南木曽町内の廃土置場の安全性に関すること、廃土運搬車両の通行は観光への影響を考え休日や観光シーズンには走らせないこと、水資源への影響についてJR東海が見解を示したこと。協議会側から、調査の不十分さへの批判、自然破壊によって外国人観光客が離れることへの懸念、などがでたということ。協議会はあらためて意見と質問を提出する方針などについて書かれています。

 南木曽の住民がこれまで求めていたのは、改めて住民との間で総合的な環境保全協定を結んで欲しいということでした。それに対して、JR東海は、廃土運搬車の運行ルート、運行時間帯など、環境影響評価書に書いてないことについては文書を取り交わすことは考えてもよいが、環境影響評価書は住民と社会に向けた宣言であって、そこに盛り込まれた環境保全に関することがらについて改めて住民との間で環境保全協定を結ぶ考えはないというものでした。他の市町村で行われた説明会でもJR東海は同じ見解を示しています。

 NHKのニュースの一部をもう1回引用します。

Q[住民側から、環境保全などに関する取り決めを盛り込んだ協定書を結んでほしいという意見が出たのに対して、] A[JR東海の担当者は、「協定書や覚書などの形で取り交わすことはやぶさかではない」と述べ、前向きな姿勢を示しました。]

 住民からでた Q の部分が正確にはどんな内容だったかは予測できません。JR東海の Q はJR東海の社員の発言として引用した形です。これまでの説明会でJR東海がこういっているのは、廃土運搬車両の運行ルートや運行時間帯についてのことでした。つまり、「環境保全などに関する取り決めを盛り込んだ協定書を結んでほしいという意見」について、実際にあったことは、これまでのやり取りと同じだったということではないでしょうか。

 実際、南木曽町の担当者に尋ねると、JR東海の態度は以前とまったく変わりがなかったようです。NHKさんはこれまでの流れがよく分かっていないようだといっていました。

 この問題は非常に重要です。JR東海の態度が軟化した、見方を変えるとまともな態度になってきたととる人もいるかもしれません。実際はそうでないのに。沿線でも工事に関わるすぐそばに住む人と、少し距離が離れた人では温度差があります。こういったニュースがこの温度差にどう作用するか心配です。ともかくNHKは報道内容の訂正をすべきだと思います。

 Q のような地の文章のあとに、A のような実際の発言を引用して文章を組み立てる手法は、陰謀説とか歴史修正主義では事実を歪曲するための一般的な手法です。

 NHKの籾井会長はNHKを自分の思い通りにしたいJR東海の名誉会長の葛西氏が送りこんだ人物といわれています。JR東海グループの系列の放送局として、何らかの意図で事実を捻じ曲げた放送をしたと勘ぐられても、いまのNHKでは反論できないかもしれません。

 たんなる、ミスだとすれば、これもまた大変困った話だと思います。

(2015/03/06)