神山、グリーンバレー (その2)

結局は、東京から2時間が前提の特殊な成功例?

 6月6日の徳島神山町のNPO法人グリーンバレーの大南さんの講演会で、高森町の熊谷町長がお礼のあいさつの中で話している、飯田から高知まで時間がかかったという話について気がついたことがあります。

 熊谷町長は飯田と高知の時間的な距離は飯田と東京との時間距離に比べ遠いといっているのです。徳島の神山と高知は、飯田や東京から見ればだいたい同じ位置です。実は徳島の神山と東京の時間的な距離は、羽田徳島間が60分、徳島神山間が60分です。大南さんが3月28日に行った講演会のレジメにそう書いてあります。飯田と東京間の半分です。だから、大南さんは、リニアが有望といったのかもしれません。

 熊谷町長については、元阿智村長の岡庭一雄さんが、時々いいことをいうとほめていますが、今回は、非常にトンチのある良いしめのあいさつだったと思います。

 リニアで時短できるのは12年後の話です。しかもそういう条件というのは、日本全体から見れば特殊な条件です。12年間は東京との距離は今のまま。「12年間かけて準備する」なんていっていますが、そういう話はどうでもよいのであって、「12年間をどうするの」という話じゃありませんか。もう始まっている12年間をどうするかということ、それは実は12年という年限を区切った話ではなく将来、これからどうするのという話でもあるのですが、どうするのかということにリニアの工事が邪魔なものならやめてもらうというのが理屈ではないでしょうか。Iターンについては実際に阻害要因になっているし、観光にとってもマイナスが相当に確実なものとして心配されているわけです。

 移住者の人数でいえば、飯田下伊那の中でも交通の不便なところでも、神山町の水準をはるかに超えている事実を、大南さんならどう説明したでしょうか。そういうところを突っ込まないのが飯田下伊那の人たちの人のよいところ、暢気なところだと思います。飯田下伊那のほうが神山町の水準を超えている事実は見直したほうが良いと思います。交通が不便な日本中にはどこにでもあるような田舎になんだか知らんけれどやって来る都会の人たちがいるという事実のほうがより普遍的に起こっている事実なんじゃないですか。

 もう一つ気になる点。講演会で示された神山町の新しい産業の産出物は情報通信やマスメディアに関連したもので、有名なテレビ番組のタイトルだとか、データ量の大きな高画質ビデオの保存サーバーとか、過渡的にはあっても良いと思いますが、本当にそれでいいのか。見た目には華やかで若者を引きつけるとは思いますが、なにかちょっと違うという感じがしました。

(2015/06/12)