横川峠の残土置場

 6月20日付け『信濃毎日新聞』(『信毎』)は、6月17日に非公開で開かれた阿智村のリニア対策委員会で横川峠付近が残土置場の候補地にあがっていると伝えました。対策委員会に出席した委員から聞いた話として書いています。


峠の標高は1107m。画面奥が上清内路方向、手前が園原方向。

 6月22日の村議会で清内路の原利正議員の質問に対して、熊谷村長は 「県からは、できれば斜坑の近くや、清内路の皆さんの生活に迷惑がかからない位置、昼神温泉郷を通らない位置がベストではないかといわれている」「(残土を)どこに持って行くかはまだ具体的になっていない。どうなるかは、これからになってくる」と述べた(『中日』23日)そうです。『信毎』23日も熊谷村長は位置については未定である旨を述べたと書いています。

 『信毎』27日によれば、6月25日に同じく非公開で開かれたリニア対策委員会では県から図面が示されたと書いています。信毎は6月17日の委員会で口頭で横川峠付近という名前もあがっていたとも書いています。論点は、県が横川峠付近の候補地の調査をするのを了承するかでしたが、結論は出せず、ともかく委員で現地を視察するということになったそうです(『南信州』27日)。

 ここまでの経過について『信毎』は最初から横川峠という具体的な地名を出しているのに対して、『中日』とくに『南信州』が地名を出さないのは対照的です。

 萩の平の斜坑口(標高903m)から残土を運び出すルートになる可能性が高い村道1-20号線については、2014年7月に周辺の地権者の会が残土運搬車が通らないよう村に要望書を出していました。これについて22日に熊谷村長は「(要望は)生きている」と説明(『信毎』27日)。

 しかし、残土置場が横川峠付近になれば、村道1-20を使うのは避けられないことになります。清内路がわの国道256から横川峠へ続く道路は県道109号線です。園原がわは国道256から分かれた県道89で県としては「設定しやすい場所」なのかなと思います。

 横川峠に運ぶとすれば、現状の道幅から考えると、上清内路側から園原側へ(又は逆)循環させて運行するだろうと思います。

 県道109号線は軽四輪のすれ違いができない部分が大半なのですが、県道入口の標識は、「大型通行不可」または「大型車困難」?? 。傾斜は非常にきついです。

 冬季は通行止めです。

 上の写真の三叉路の、右が県道109号の園原インター方面、中が県道109号の横川峠方面。左が村道2-18号線で、50mほど行くと横川集落です。ダンプカーは集落の中を通過しませんが、集落へ通じる生活道路を通行することになる。また、園原インターから昼神温泉の間もダンプカーが走ることになります。


横川集落

 昨年の7月、長野県がJR東海に示した残土置場の候補地として「手をあげた自治体」に阿智村は入っています(参考)。手をあげた他の近隣自治体と同じように具体的な場所のめどがあって県に報告したとしたら、今になって「横川峠付近」という具体的な名前が出てくることがあるとは思えません。もしかして、具体的な場所の案もないのに、リニア推進は悲願だから、国策だから協力せねばという気持ちだけで、または、村内の観光を守るためということであっても、手をあげたとしたらトンデモない話です。

 JR東海の長野県担当部長の沢田氏は2014年12月17日の『信濃毎日新聞』のインタビューで 「妻籠、昼神の間で置場が見つかればいい」といっているので、場所の案もないのに手をあげたというのは間違いないと思います。

 『信毎』27日によれば、阿智村独自の社会環境アセスメントを開始するなど住民が参加してリニアの工事の受け入れについて考えようとしているのに、候補地の段階とはいっても残土置場の選定が非公開の場で進められることについて 「住民自治を大切にしてきた村の積み重ねが崩れてしまう」と危機感を示す人もいるそうです。情報が住民に対して全て公開されてきたとはいえないようです。

(2015/06/30)