ドイツのリニアの実験線

 日本と並んで磁気浮上方式の鉄道を研究開発したドイツでは、エムスランドというところに実験線がありました。北に半径1.69q、南に半径1qの円形の路線(ループ)があって、その間を8〜9qほど(※)の直線の路線でつないでいました。

※ ネットで調べると12マイル(19.3q)の直線と書いているページがありますが、Googleマップの航空写真で測ると約8〜9qです。


航空写真

 すべて単線で、ループと直線のつなぎ目と研究所そばには分岐装置がありました(下図の赤い部分 ※)。


HIMA,Archive,Press releases の 25-05-2011 - Pioneering a safe railway switching solution - New safety system for the track changing equipment at the Emsland transrapid test facility

 直線部分を複線にすると


 直線部の長さを品川と名古屋の間に置き換えると:


または


 JR西日本の社外取締役だった鉄道信号システムの専門家の曽根悟さんは『新幹線50年の技術史』という本の中でリニアはこういう方法でやるのが一番能率がよいと言っています。列車の進行方向が常に同じですから先頭と最後尾をそれぞれ空気抵抗の一番少ない形にできること。基本的に分岐装置がいらないこと ― 浮上式鉄道やモノレールでは分岐装置のコストが高く、能率が非常に悪い。中間駅は追い越しができないので本来ないほうが良いはず。中間駅をおくなら列車ごとに、品川、山梨、名古屋とか品川、飯田、名古屋というように停車する、選択停車にするとよいともいっています。

 これを小さくして下図のように変形すると:


 これは遊園地の子供が乗る汽車ですね(※)。下図は飯田市動物園。オレンジの線のところを「弁慶号」が引っ張る子供列車が走っています(単線、反時計回り)。

※ 飯田市動物園の場合は大人も乗れます。


園内マップ

 リニアを遊園地の子供の遊具のようなもの(橋山禮治郎氏)とか、「儲かりすぎるJR東海の道楽」(福井義高氏)などという人もいます。リニアなんかはもともと大の大人が考えることじゃありません。

 忘れていました。ドイツリニアは上海で一応実用化されましたが、最終目的地までの延長は中断したままだし、ドイツ国内での設置はやめました。開発もやめました。費用が掛かりすぎること、他の鉄道との連携が困難などの理由です。田園地帯に作られたエムスランド実験線は撤去の予定なので、記念にグーグルマップの航空写真をコピーしました。実用路線の一部として山梨実験線を使おうというリニア計画の発想は合理的なようでいて、何も考えていない見本のように思います。

(2015/09/01)