ブルックヘブン国立研究所

 超電導磁気浮上方式のリニアはパウエルとダンビーというアメリカの科学者が特許を取ったことは良く知られていることですが、『超電導リニアの謎を解く』という本を読んでいたら、「ブルックヘブン国立研究所のパウエルとダンビー」と書いています(p48)。この本は、彼らの研究所には加速器用の使う強力な超電導磁石があったこと、また「地上側のコイルに誘導電流を流して反発浮上させるのに、車両側に磁石を積む」方式を思いついたのだけれど、自動車文化の強いアメリカでは政治家の関心も薄く実現に至らなかったとしています。

 ブルックヘブン国立研究所というのはどんな研究所なのかネットで検索してみました。「ブルックヘブン国立研究所」と日本語で検索をかけると、最初のページがウィキペディアで「この記事は検証可能な参考文献や出典が全く示されていないか、不十分です。」と最初に書いてあります。確かに大したことは書いてないですね。少なくとも私が知りたいと思うことは書いてないです。日本語で検索したのに2番目はどういうわけか英語のページ、"Brookhaven National Laboratory — a passion for discovery"。「ブルックヘブン国立研究所」の公式のホームページです。

 About(ブルックヘブン国立研究所について)というページにアメリカ合衆国エネルギー省科学部が設立したと書いてありました。これが知りたかったこと。

 サイト内を "MAGLEV" で検索すると、BNL Newsroom | Powell and Danby's Grand Idea: 50 Years of Maglev History (パウエルとダンビーが基礎的な仕組みを考えだした磁気浮上方式の50年の歴史) というページが見つかりました。2016年、今年の3月8日パウエル氏の子息で研究者でもある ジェシー・パウエル氏が講演を行う予定という内容。1966年にジェームズ・パウエルとゴードン・ダンビーは超電導磁石が作る磁界を利用して列車を浮上、推進する方式についての最初の論文を出し、この技術は現在世界中のいくつかの都市で使われているけれど、ジェシー氏は、もっと広い分野での応用ができれば、あるいは交通渋滞の問題対策への助けとなれば良いのにと思っていると書いています。彼らの写真の説明文に、彼らは1968年に特許をとり、1991年にはHigh Speed Rail Association (高速鉄道協会)から表彰されたとあります。

 Our History of Discovery(研究所の発見の歴史)のページでは、"Technology and Energy" (技術とエネルギー)という所に、"Maglev"(磁気浮上方式) が "Corrosion prevention"(金属の腐食防止)、"Multi-grade motor oils"(マルチグレードエンジンオイル)、"World’s First Video Game" (世界最初のテレビゲーム)と共にあがっています。テレビゲームと磁気浮上方式以外の2つは、公害防止、省エネルギーに役立つと説明しています。

 磁気浮上方式についての説明は:「1968年、ブルックヘブン研究所の2人の研究者がMaglevの特許をとる。磁気的に浮上させた超高速の交通機関の原理。混雑する高速道路にかわる毎時300マイルの大量輸送として着想されたが、ドイツと日本で積極的に開発された。」と随分とあっさりしたもの。

 アメリカが開発を続けなかったのは、車社会だからだけでなく、エネルギーを多量消費するという点もあったのではないかと思います。少なくとも「ブルックヘブン研究所」では積極的に研究開発が行われてこなかったようです。講演をしたジェシー・パウエル氏については、親子研究者チームとして長年にわたって磁気浮上技術に緊密に協力して仕事をしたと説明されています(※)。現在、ジェシー氏が磁気浮上について研究しているのかどうかはわかりません。

※ James Powell and his son, Jesse Powell, have been a father-son research team, working closely on maglev technologies for many years.

(2016/07/14)