JR東海が残土置場候補地で勇み足(2)

 4月21日にJR東海は本山生産森林組合の山林内の、トンネル残土の最終処理場として予定されている谷で、移植のために希少植物の採取を行いました。JR東海からはいまだに保安林指定解除の申請は出されていません。漁協その他関係組織との協議中とのことです。つまり、まだ正式に残土が置けると決まったわけではないのです。この地を残土置き場として使わない場合は、ただ単に希少植物植物を採取して、別の所に移植して、さらにまたもとに戻すという、かなり危うい作業をしただけのことになるはずです。途中で希少植物が枯れたりすれば環境破壊をしただけのことです。

 JR東海、県の環境部自然保護課、林務課、環境部環境政策課に再度事実関係を確認して見ました。

 JR東海の見解としては:

 環境部自然保護課に聞いてみましたが、環境評価書に計画として移植があれば、違法ではないということでした。そこで、評価書などで種類を公表しないことは法律で決まっているのかと聞きました。種類の公表をしないのは「配慮」であって条文にはないとの答えでした。

 ならば、工事が確実にできる段階になる前は移植をしないという「配慮」も必要

 今回のJR東海の作業は明らかに「不当」なものですが「違法」ではないという非常におかしなことがまかり通っているように見えるのですが・・・。

 南信州地域振興局(飯田合庁)の林務課の治山第1係によると、保安林内で行おうとするいろいろな作業については、この作業は許可がいるとかいらないとかの決まりがあって、作業をしようとするときは事前に作業の内容を具体的に林務部に説明して、許可がいるものかいらないものなのか相談をして確認を受けることになっているそうです。4月21日のことについては、相談はなくJR東海の判断でやったことなので、相談をするように指導したということで、JR東海は説明に来たとのことでした。

 再度、環境部の環境政策課に聞いてみました。事後ではあるけれど、環境部としては、移植については保安林指定の解除申請が行われる前まではできないよという話はしたということです。

 さて、環境影響評価法(平成九年六月十三日法律第八十一号)の第1条は法律の目的として:

第一条  この法律は、土地の形状の変更、工作物の新設等の事業を行う事業者がその事業の実施に当たりあらかじめ環境影響評価を行うことが環境の保全上極めて重要であることにかんがみ、環境影響評価について国等の責務を明らかにするとともに、規模が大きく環境影響の程度が著しいものとなるおそれがある事業について環境影響評価が適切かつ円滑に行われるための手続その他所要の事項を定め、その手続等によって行われた環境影響評価の結果をその事業に係る環境の保全のための措置その他のその事業の内容に関する決定に反映させるための措置をとること等により、その事業に係る環境の保全について適正な配慮がなされることを確保し、もって現在及び将来の国民の健康で文化的な生活の確保に資することを目的とする。

 事業に関係する「環境の保全について適正な配慮がなされる」べきだといっているのです。とすれば、工事が本決まりでないうちに、移植というような危険性を伴う作業は対策といえども行うべきではないはずです。つまり私たちが不当と思っていることは、この第1条にてらせば「違法」です。

 さらに、第3条では:

国、地方公共団体、事業者及び国民は、事業の実施前における環境影響評価の重要性を深く認識して、この法律の規定による環境影響評価その他の手続が適切かつ円滑に行われ、事業の実施による環境への負荷をできる限り回避し、又は低減することその他の環境の保全についての配慮が適正になされるようにそれぞれの立場で努めなければならない

 とされています。県の環境部は一応、今回の事件については事後ではあるけれど対応したのですが、県知事の助言のなかなどで、はじめからJR東海に申し渡しておくべきだったと思います。

 事業者であるJR東海は、環境影響評価法の目的にそって作業の段取りを決めるべきだったと思います。

 今回は、わたしたちがたまたま目撃したので、JR東海にたいして県から指導がされたのですが、この地はなかなか人の目が届きにくいところ、まして、工事が始まり残土運搬車が走るようになれば近づくことが難しくなります。JR東海の環境保全に対する考え方からして、残土の盛度が適切に行われるか非常に心配です。

 JR東海の拙速については、4月のあの時期に移植をしておかないと、移植の適期が、1年先になってしまうということがあったかもしれません。万が一に残土の処分地として使える場合のことを考えた安全策だったかも知れません。とは言っても、移植したものが「なに」なのか分からないので何とも言えません。

(2017/05/17)


(2017/05/21 補足) 長野県環境部の「長野県環境影響評価技術指針マニュアル【平成28年1月13日時点】」のページの第2章の各論の11.植物の一部を参考に示します。

11-6環境保全措置
・ 事業を実施するとした場合、通常は上地の改変を伴うものであり、これによる改変区域の植物の直接的影響や、生育環境の変化による間接的影響は避けがたいものである。このため、植物の予測結果に基づき、環境に対する影響緩和の考え方から、積極的に環境保全措置を検討する必要がある。植物に係る環境保全措置は。次の事項を考盧して適切に行う。
・ 注目すべき個体、集団、種及び群落のうち極めて価値が高いものが分布する場合は、原則としてその生育場所を改変区域から除外するとともに、その生育環境の保全に必要な条件(水象、日照等)を確保するなどにより、将来にわたって残存させる。
・ なお、生育環境の保全に必要な条件について技術的に影響の低減が可能である場合は、環境保全措置による生育環境の保全を行うことも可能である。このような例としては地下水位低下に対する水の注入、植栽等による日影の確保等が考えられる。
・ 上記以外の注目すべき個体、集団、種及び群落については、それぞれの生育場所を最大限残存させることを基本とし、これが困難な場合には同様な環境条件を有する区城への移植を検討する。
・ ただし、移植は他の手法を採用できない場合にやむを得ず実施する代償による環境保全措置であり、安易に移植に頼らないよう配慮する。また、移植を行う場合は、移植前の生育環境、移植予定地の生育環境等について十分な調査を行い、適切な移植地の選定、移植までの適切な準備、移植後の適切な維持管理及び事後調査を実施する。
・ なお、特に1年草については、移植のみでは環境保全措置として不十分であり、活着して世代交代が行われることを確認する、又は採取した種子を播種する等の対策が必要となる。
・ その他。植物相、植生、土壌、保全機能等の影響は、できる限り彫響を小さくすることを基本とする。

 以上の項目が県のマニュアルにある以上は、長野県がすべき指導については、移植作業は、残土埋め立ての工事計画の開始時期が確実に決まってから行うべきと解釈するのが常識と思います。長野県が保安林指定解除の申請を提出するまではやってはダメだよというのは、場所が確定してからという意味であって、それじゃダメですよ。埋め立て開始に必要な保安林の指定解除が確定されるまでは待ってねというべきです。

 ちなみに、長野県の環境影響評価についての技術員会のメンバーはここにあります。