JR東海は焦っている
4月27日、夕方のNHKラジオニュースで大鹿でトンネル掘削が始まったといっていました。NHKのサイトに次の記事がのっていました。
リニア 県内初のトンネル掘削
04月27日 17時32分
リニア中央新幹線の工事で難所の一つとされる南アルプスを貫くトンネルの掘削が大鹿村で始まりました。
県内でのリニアのトンネルの掘削はこれが初めてです。
トンネルの掘削が始まったのはリニア中央新幹線の長野・静岡・山梨の3県にまたがる南アルプストンネルの県内の工区です。
このトンネルは全長25キロ、地表からの深さが長野と静岡の県境付近ではおよそ1400mと国内最大級で、リニアの工事の難所の一つとされています。
県内の8.4キロの工区では去年11月、大鹿村で起工式が行われ、JR東海は村内の3か所で資材や機材の置き場所の整備を進めてきました。
このうちの1か所で整備が終わり、JR東海は27日から県内初となるリニアのトンネルの掘削を始めました。
まず作業用のトンネルを掘り、順調に進めば来年の初め頃には将来リニアが通る本体部分のトンネルの試験掘削に取りかかりたいとしています。
一方、掘削によって村内では合わせて300万立方メートルの土砂が発生するとされていますが、最終的な処分地はまだ決まっておらず場所の選定が課題になっています。
(NHK、信州 NEWS WEB)
このニュースのおかしな点。
- (1)大鹿村のトンネルの斜坑口は全部で4か所なのに3ヵ所といっている。
- (2)整備が完了したのは上蔵(小渋)斜坑口だけですが、ここは保安林の指定解除の関係で掘削できる状態ではない。
- (3)斜坑口ヤードの内で整備が進められているのは2か所なのに、3ヵ所といっている。
訂正(2023/06/05) (1)は、南アルプストンネルについてなので3カ所で間違いないです。残り1カ所は伊那山地トンネルの青木川斜坑ヤード。ただし、伊那山地トンネルの青木川工区もほとんどの部分は中央構造線より東側で、南アルプストンネルの一部といってもよい地域を掘ります。(3)は、当時は、小渋川斜坑と除山斜坑のヤードの整備が行われていましたが、釜沢斜坑ヤードについては未着工だったという意味です。NHKのこのニュースは具体的な場所の名前を出さないところに無理があります。つまりこのニュースの「価値」は、「リニア中央新幹線の工事で難所の一つとされる南アルプスを貫くトンネルの掘削が大鹿村で始まりました」という、事実として具体性のない部分だけです。
このニュースを聞いただけでは、実際のところどこで何が行われているのか判断ができません。大鹿の仲間が知らせてくれたところによると、「掘削」が始まったのは、除山斜坑口。写真は4月20日に撮影。トンネル掘削機はまだ届いていない様子、生コンのプラントも見えません。ここは釜沢集落に近く騒音の問題があるのでヤードの周囲を囲う壁や掘削に必要な設備、機材の搬入路など、準備作業が完成してからでなくては本当は掘削は始めれないはず。おそらく、4月中にトンネルの掘削が始まったというアリバイが欲しかったのではないかとの推測もあります(リニア新幹線を考える登山者の会:2017年04月27日・南アルプストンネル今日掘削)(このページの写真でも掘削機は見えません。クレーン、バックフォーなどごく普通の建設機械が見えるだけです。)
まだ掘削できないというのは工事の先行きへの不信が大きくなるだけなので、今回もとりあえずできそうなところで辻褄を合わせたのが実態です。
つまり、全然予定通り進んでいません。
このNHKのニュースは、ニュースというよりは、「JR東海からのお知らせ」といって良いかと思いました。
(2017/04/28)
上で紹介している、4月20日に撮影した除山斜坑口の写真。よく見ると掘削する場所の外側に設置するフード状の工作物の骨組みが見えています。⇒ 部分拡大。
(2017/05/10 補足)