暗礁に乗り上げた豊丘の残土置場
5月19日午後、豊丘村の村議会のリニア特別委員会(議員全員)がありました。工事用車両の通行のための道路改良工事についてJR東海と取り交わす確認書についての審議のほかに、唐沢健議員が、本山生産森林組合の組織の現状について県の林務課に問い合わせた情報を公表し検討しました。
豊丘村議会リニア特別委員会
5月3日に『読売新聞』が本山生産森林組合に関連してこの記事を掲載しました。残土の受け入れを決めた総代会は「無効」とし長野県が総会を開くよう指導したという内容です。この報道について唐沢村議は:
本山生産森林組合に対する県の指導について
1.全ての組合員を対象とした総会を開くように指導している。
2.同組合は設立以来、慣例で総会を開催せず、理事会と総代会で意志決定をしてきたが組合の定款に総代会の規定はなかつた。また、名簿を更新しておらず、現時点での正確な組合員数が不明で、県は「組織運営上問題がある」と指摘している。
本山生産森林組合の長谷川義久組合長は
1.昨年12月の理事会では、JRが本山地区の谷地を残土置き場に使用することに同意する方針を決めた。
2.これまでの組織運営に問題があつたことは認め、今月中旬にも総会を開いて、理事会の決定内容を改めて報告した上で、了承を取り付けたい考えだ。
3.今後は法律に基づいた運営をしていく。
ということだけれど、つぎのような点を疑問として、唐沢議員は長野県の南信州地域振興局(旧飯田地方事務所)の林務課に問い合わせました。
1.県の認可した定款において、法人の正当な選任機関で選任されていない理事が、正当な選任機関で選任された内容の議事録を添付して法人の役員変更が登記されている。長野地方法務局は理事の変更は定款・総会議事録が必要としています。法人の主務官庁である県は、現在法人登記されている各理事を法人の代表者として見ることが出来るのでしょうか。
2.理事が正当な選任機関で選任されていないならば、法人の代表者ではなく、総会を招集できないのでは無いでしょうか。
また、設立以来総会も開かず、組合員名簿が更新されていないとのことですが、現理事は組合員として認められるのでしょうか。
3.県は誰が、どのような総会を招集するよう指導されているのでしょうか。
4.昭和48年設立時の生存組合員のみの集まりで、総会を開催することは、定款上あり得るのでしょうか。
5月9日に次のような回答があったとのことです。
1.県としては、現理事は認められない。
2.従つて、現理事に総会を招集する権限はない。
組合員の相続は90日以内に申し入れをして、総会で承認されていなければ、組合員資格は消滅している。
3.4月18日の本山生産組合長谷川氏及び豊丘村と県側の話し合いでは、本山更生会の総代会で理事が選出されていたことは承知していなかつたので、理事会だけで本件の承認はまずいので総会を開く指導をした。従つて、本山生産森林組合の総会で選出されていない理事は無効であるので総会の招集も出来ないし、総会を開いても県は認めない。
4.生存組合員で総会を開くことは出来るが、利害関係者から県に申請し、一時理事が指名されなければ招集は出来ない。
以上。昨日長谷川氏を呼んでこのことは伝えた・・・
唐沢議員は、これらの内容から「これまでの理事会の決定は全て無効であることが県・林務課(県庁も含む)より回答されましたので、本山への残土埋めたてのJRへの承認も無効になります。従って、JRから県・環境課への回答があつても、村長の本山への残土埋め立ての承認は、地権者の同意もなく出来ません。」と報告を結びました。
JR東海に助け舟は?
森林組合が管理する森林について利害関係のある人が県に申請して臨時の存在である「一時理事」が指名されて、その一時理事が総会を招集し、組織運営上の基本的なことからやり直すところから始めなくてはならないということです。
検討の中では、下平村会議長からも、有印公文書偽造そのほかいくつかの点で違法性が問われる大変な問題だとの指摘も出ました。
『信濃毎日新聞』(Web版)は、20日の「掘削開始遅れる可能性 伊那山地トンネル坂島工区」 という見出しの記事で、伊那山地トンネルについては、JR東海が予定していたこの秋に掘削を開始するのは不可能となったと書いています。JR東海は、もともと坂島工区の掘削完了は2021年の予定なので2027年の開通には影響はないといっているそうです。しかし、豊丘村では残土置き場の候補地であった源道地の2つの沢について下流域の住民の反対でJR東海が使用をあきらめた経緯もあって、隣の松川町でも残土置場の選定は難航している状況もあって、はたして、長野県内で発生するトンネル残土約970万立米を処分すべき残土置場はほとんど決まっていない以上は、これからは工期は日々遅れていくものと思われます。当然ながらトンネルの掘削はほとんど進んでいない状況です。
また、今回の残土受け入れの決定の過程で「あったかもしれないいろいろなこと」が村民に明らかにされたときには、リニア計画そのものに対する住民の批判の声も高まる可能性があります。
(2017/05/20)