"JR東海がおわびと反省"

 1日夜の松川町のリニア建設工事対策委員会の席上、JR東海の平永稔工事事務所長は、松川町生田地区のトンネル残土置場問題が進展しないことについて「目に見える進展がなく、町に心苦しい思いをさせてしまった」、「率直におわびする」と発言したそうです。また工事の進み具合に関して、「待ったなしの状況」とも。(『南信州』9月3日:JR東海がおわびと反省 松川町の残土処分地「待ったなしの状況」)

 残土を受け入れる地元の生東区は、受け入れの前提として運搬路になる県道22号線の2車線化を希望しているようです。一方、残土の受け入れに反対している下流域にあたる福与区の鈴木峰好区長は「反対表明を撤回する状況ではまだない」と、会議の席上なのか取材にかは不明ですが、そう述べたそうです。

 残土の問題については、まず、残土を置いた場合に第一に安全が確保できるかどうかということ(置いた方が安全はありえない)。第2に、最善の方法で埋め立て工事を行って、工事後の管理もきちんとなされた上であっても、万一災害が発生したとき、被害の復旧や補償について、誰が責任を持つのかはっきりさせる(土地の所有者に第一の責任がある)ことが必要だといえます。

 「町に心苦しい思いをさせて」ってどういう意味?

大鹿村でトンネルの掘削が進む現状を踏まえ、深津徹町長は「残土の処分地が1カ所も決まっていないのは異常だ」と訴え、処分地の管理方法を含め「地域によって条件が違う。一律に考えず、地域にあった形で提案してほしい」と求めた。

 トンネル残土の置き場の問題については、工事の認可以前の2014年6月に、石原伸晃環境大臣が「掘削によって発生する土砂は莫大で、最終処分や仮置き場も決まっていない。ここがポイントだ」(『日経』2014年6月3日)と発言しています。石原伸晃環境大臣は、環境影響評価の段階で、残土の置場がきまっていないのはおかしいじゃないかといったのじゃないでしょうか? 初めから残土処理が上手くいかないことは分かっていたのです。「異常」じゃなくて「正常」です。『南信州』の書き方の問題もあるかもしれませんが、深津町長は、何考えてんのと言いたくなりますね。

 最近、当サイトでは、リニアが直線しか走れない技術的な問題について書いていますが、事業全体の計画についても始めから無理があって、その点は計画段階から各方面で指摘されてきていました。深津さんはそういう声にきちんと耳を傾けてきたでしょうか。深津さんに限らず、下伊那(飯田市を含む)の首長さんたちはどうなんでしょうか?

 出来ないものは、出来ないと判断し、そのことを住民にきちんと言えない首長や自治体の議員は首です。JR東海や長野県の情報だけに頼らず、自治体の首長、議員も職員も自治体として独自に、リニア計画について、もっと勉強すべきです。そして、住民も。たとえばこんなことやってちゃだめです。 JR東海の「町に心苦しい思いをさせてしまった」という言葉は、町長に恥をかかせたということなんでしょう。JR東海は住民の安全ことなんか考えていません。町長もそうです。

 リニアの工事は予定からかなり遅れていて、JR東海は非常に焦っていることは間違いありません。4月27日の除山斜坑口での突然の掘削開始を見ても、JR東海の焦りは明らかです(除山斜坑口は工事ヤードの整備が始まったばかりで掘削準備ができていなかったし、今も準備中で掘削は行っていない)。

(2017/09/03)