高森町のガイドウェイヤードと景観条例

 9月5日の高森町9月定例会で熊谷元尋高森町長は、下市田河原に計画のあるリニアのガイドウェイ組立ヤードについて、「借地するJR東海に対して、後利用の相談にも応じるよう求めていく考えを示した」(『中日』6日)そうです。用地については現在は個別の複数の農家の所有となっているのですが、「用地は町が造成し、町とJRの間で借地契約を交わす」『南信州』6日そうです。造成費用をどこが負担するのか不明ですが、松川の場合は、日本航空電子の西側の約7ヘクタールの造成をJR東海が行って、そのうち3ヘクタールだけをガイドウェイ組立ヤードとして使い、残りは工場誘致するという報道に比べるとなにかひっかかるところがあります。

 これまでの町の説明では、JR東海の使用が済んだ後は、昨年3月にあわてて造った土地利用計画に従って工業団地化するという話だったと思います。役人用語というのは分かりにくいところがあるのですが、民選の町長までが町民を煙に巻くような発言をするのはまずいなと思います。飛ぶ鳥後を濁さず。町長は最後までちゃんとやって下さいね。工業団地化するという町の予定に確たる見通しがないということがわかった気がしますね。

 消息筋によれば、他のことも関連してと思うのですが、町長がかわっても(来年1月改選)方針は変わらないとも言ったそうです。それって、経営企画課長に任せておけば大丈夫という意味じゃないのと言った人がいるとかいないとか?

 『南信州』6日でもわかる通り、町は景観条例案を出しています。『信毎』6日はガイドウエィについては触れてませんが、「リニア中央新幹線の開通などを見据えて無秩序な開発を防ぎ、自然豊かな風景や歴史・文化的資源が調和した町並みづくりを目指す狙い。定例会最終日の19日の本会議で裁決する」と書いています。

 下市田河原のガイドウェイ組立ヤード候補地は、江戸時代につくられた惣兵衛堤防以来守られてきた美田で、非常に優れた歴史的、文化的な景観です。また、当然のことながら優良農地であり、種もみの生産をしている水田も用地候補地内には多いです。町がこの場所をガイドウェイ組立ヤード候補地として情報提供したことこそが「無秩序な開発」をやり易くする先駆けになるものと心配します。

 リニアの工事の現在の進捗状況は、ともかく非常に遅れています。山梨県早川町でやっと最難関の南アルプストンネルの先進トンネルの掘削が始まったばかりで、長野県内、大鹿の4つある作業トンネル口では掘削が行われているのは1ヶ所だけで、2か所については工事ヤードの整備も何も行われていません。さらに、豊丘村から大鹿村の青木までの間の伊那山地トンネルについては、当初予定の残土の置場がすべてダメになっており、豊丘村は村内の残土はすべて村内で処分という方針ですから伊那山地トンネルも早くて数年後までは掘削できません。もともとリニアの工事計画に無理があったのです。これは認可前から指摘されていたことです。また、最近、三菱重工業がリニアの車両の製造から撤退するというニュースもありました。JR東海の希望する価格が安すぎるのが原因のようです。

町議さんたちがリニアの勉強会

 高森町議の皆さんは、リニアについてJR東海を招いて勉強会(28日午前、傍聴できるかどうか不明)をするようですが、リニアが本当に完遂可能な事業なのか、ご自分自身でよーく考えていただきたいと思います。ひらたくいえば、「リニアって出来ると思いますか」っていうことなんです。それをきちんと判断しなければ、賛成も反対もいえないはずです。議員であれば。戦時中のインパール作戦は現地の参謀や師団長たちが全員、補給(兵站)の困難という現実、事実をもって反対したのに牟田口司令官がごり押しして決行した結果3万人以上の多数の戦死者をだして敗退しました。リニア計画もそういう面が強いと思いますね。JR東海に近い人の中にはリニアは葛西敬之名誉会長の「野望」だと言い切る人もいます。採算のとれる見込みが無いのに、こんな金のかかる事業を民間企業がやるのは正気の沙汰じゃありません。町民でリニアに関心のある皆さんは29日(時間不明、傍聴可能)に全体協議会があるそうなので議員さんたちの勉強の成果を見に行きましょう。

(2017/09/14)