高森町議会傍聴記、9月19日

 今年の5月3日に安倍首相は、「改憲派団体が東京都内で開いた憲法討論会に、自民党総裁としてビデオメッセージを寄せ、『2020年を新しい憲法が施行される年にしたい』と改憲の目標時期を明言しました。具体的な改憲項目として9条を挙げ、新たな条文を追加して『自衛隊の存在をしっかり憲法上に位置付けるべきだ』と主張しました」(『赤旗』5月4日)。また「『9条1項、2項を残しつつ、自衛隊を書き込むという考え方は国民的な議論になる』と表明。戦争放棄をうたった1項や戦力不保持を定めた2項には手をつけず新たな条文で規定すべきだと述べました。」(同)。

 この安倍発言に関連して、「高森九条の会」は憲法改定に反対する請願を高森町議会の9月定例会に提出しました。

「安倍首相の提起する憲法9条の改定に反対し、憲法を活かした政治の実現を求める意見書」を日本政府と関係機関に提出すること。(高森九条の会・会報 9月10日号)

 19日の本会議で討議採決が行われました。総務民生委員会で審議され採択すべきという結論が出たのですが、本会議では不採択となりました。

『読売新聞』を読め

 討論では、ある「自民党系無所属党に所属する議員」が安倍首相の発言は正式な文書ではない「架空の文書」だから、その内容を議会で扱うのは適切でないから、不採択とすべき、と発言しました。安倍首相は5月8日の衆議院予算員会でビデオメッセージについての見解を質問されて、まともに答えずに「『「自民党総裁としての考え方は詳しく読売新聞に書いているので、熟読していただければいい」』」(『毎日』5月8日)と答えた話はかなり有名です。首相自身が『読売新聞』を読めといっているのですから少なくとも「架空の文書」とは言えません。町議会ではこういう屁理屈が横行しているということを高森町民は知るべきです。

参考:「安倍総裁、改憲インタビュー」全文 "「自民党総裁の考え方としては相当詳しく読売新聞に書いてありますから是非それを熟読していただいて…」と一国の総理が新聞拡張員の様な国会答弁をしたのに関わらず、読売新聞のしみったれ仕様で「プレミアム会員」に成っていないと「熟読」も出来ない状態です。憲法改正という大問題を前にして何たる事でありましょうか。俺が読ませます。"

 この議員さんは、採択すべきとする発言をした議員の、9条については、憲法審査会で以前から討論している事柄で軽々に扱うべきでないという言葉を捉えて、「委員会」当時、憲法審査会は開かれていなかったという、まことに頓珍漢な発言をされたうえに、衆院選挙を控えて提出先がないとも発言。選挙で政権担当者がかわれば国とか政府機関はなくなるんですか? もうすこし勉強した方が良い。提出先はある。

 採択すべきでないとする議員さんたちの発言は、現実に自衛隊はあるのだから明記して当然、1項、2項があるから大丈夫、防衛は戦争ではない、など。

 別の議員の、9条についてはさまざまの解釈があるが、自衛権というのは認められているという一般認識があるといえるし、1950年代の警察予備隊以来自衛隊は存在してきているのだから、憲法との整合性を論ずべきだから、請願は不採択とすべきという意味不明の討論には、傍聴者は少数だったんですが、みなあっけにとられました。もっと単純明快な判断が出来ないものか? 彼の憲法についての法理論は、極めて特殊で、こういう発言をするには、論拠となる学説を紹介すべきだったと思います。彼は新人議員なのですが、彼に投票した住民のほとんどは、彼の論理よりは、「不採択とすべき」、つまり反対を表明したという議会での行動について、おどろき、落胆することは必至と思いました。次回選挙はどうなるかと心配する人もいないではない。今回、反対したことについて、支持者をどう説得できるのか、支持者の理解を得ることは非常に困難だと思いますが、どう対処、説明するのか注目したいですね。ある方から聞いた話では、今回発言はなかったですが、もう一人の新人議員も同じようなことを言っているようです。取り付く島のない屁理屈だと思います。

 賛成の側の討論は、平易で当たり前の理屈ばかりに思えましたよ。しかし、保守系の議員さんたちは、いわゆる、聞く耳をもたない。保守系議員さんたちの突出した変わった理屈が原因で、議論がかみ合っていないという印象を受けました。

 あるベテラン議員が、この方は反対したんですが、「憲法を活かした政治の実現を求める」という部分について委員会で議論がなされたかと質問されました。発言の意図は分かりません。委員会では議論はなかったのですが、9条の改定の構想とは対極にある主張で、「憲法を活かした政治の実現」という言葉は重要だと思いました。

 7月の町議選で、せっかく与太議員が退場したのに、なんか残念な感じがしましたね。自分たちで彼を懲罰できなかった、前の議会の体質も問題でした。

 今度の議長さんは、声が大きくて、りきんで議事進行をしています。もう少し肩の力を抜いたらどうか。議案を1つすっ飛ばして、そのことになかなか気付かずに事務局の手を煩わす御愛嬌もあったりして。国会の悪い部分の真似だと思いますが、「異議なし」という議員さんたちの罵声。「ぎこちない儀式」を見ているような感じでした。

 最後の議案は、ひょっとして増税の、「全国森林環境税」を制定して欲しいという意見書提出について。長野県民はすでに「長野県森林づくり県民税」を負担しているのに、これが「異議なし」で通過はちょっと疑問に思いました。

リニアは別?!

 28日には、JR東海を招いて町議の皆さんがリニアについて学習会をするそうです。JR東海の社員が、これらの不勉強な保守系議員さんたちを、だますのなんかちょろいことだと思いますね。少ないとは言っても、政務調査費をもらってるはず。JR東海の意見に染まらないように、まず自分たちで調べなきゃダメでしょう。

 そうそう、議案第12号の「廃棄物の最終処分場建設について住民に寄り添った指導・判断をするよう求める意見書の提出について」は異議なしで採択されたのですが、議案説明では、処分場の下流域の住民の安全も考えよいっていました。聞いていて、リニアのトンネルの残土の処分場と全く同じ問題と思いました。トンネル残土の処分場は、土石災害だけでなく有害物質の流出の可能性もあります。農業へのダメージもあるでしょう。山梨の中部横断自動車道工事(セレン)や早川町のリニアトンネル(フッ素)や三猿南信道(ヒ素)の工事残土でも有害物質の問題が起きています。「リニアは別」では困りますね。

中部横断自動車道増穂以南の知事による現場視察
・NHK山梨放送局、6月30日「リニア中央新幹線のトンネル工事で発生した、早川町にある有害物質を含む土砂の仮置き場周辺の地下水から、環境基準を超えるフッ素が検出されました。JR東海は、自然界の地盤に含まれているもので、工事が原因の可能性は低いとしています。 JR東海は、10年後に東京と名古屋の間で開業が予定されているリニア中央新幹線について、早川町内で南アルプスや巨摩山地を貫くトンネルの工事を進めています。」
・『信毎』7月29日「三遠南信道用地 基準値超すヒ素 対策費 最大64億円」

(2017/09/20)

(補足 2017/09/27) 議員さんたちの学習会は、JR東海の社員が来るようですが、基本的には町の職員から説明を受けるようです。議員さんたちは、新人も含めリニアについてほとんど知識がないので勉強しなければということなのでしょう(何についても不勉強という声もあるのですが)。リニアの問題について論議することを避けてきた弊害だと思います。論じる必要がないので議員さんたちにリニアについて知識がない。議員さんたちと話をしてみても、明らか。これは困ったことです。高森町はJR東海さんから「関係自治体」と言われてきたのに、町にも議会にもリニア対策委員会がありません。町内に路線が来なかったのが町政にとって良かった、ほっとしたという気持ちが町当局や職員や議員さんたちの間にあるんでしょう。また、リニアの「良いところどり」だけが出来ると考えているのかもしれません。でも、今度リニアのガイドウェイ組立ヤードの話が出てきて、関係車両の出入りがけっこう多いことが分かったのですから、リニアの工事対策の仕組みを作らないとまずいと思います。