リニアに公共性なし

リニアに公共性なし


 出砂原地区館で10月2日夜、「まちづくり懇談会」(町政懇談会)がありました。

 下市田河原のガイドウェイ組立ヤードの用地について、『南信州』の9月6日付けの記事は、「町が造成する」と書いていました。9月29日の議会全体協議会に出席したある議員さんに聞いても、「街が造成する」というのは町が費用を負担すると解釈しているようでした。「まちづくり懇談会」(町政懇談会)で質問しました。経営企画課長は、町が金を出すというのはおかしいのではないかという質問に、町が造成するが費用はJR東海が出すと答えました。ようするに、優良農地ですから、農地転用が容易にはできないので、町が行う「公共事業」ということにして造成するが、金はJR東海が出すということらしいです。

 ということは、JR東海のリニア新幹線計画は「公共性はない」ということになりますね。これが一つ。

※ 残土処分場の問題と一緒。ガイドウェイ組立ヤードも初めから計画に盛り込んでありませんでした。残土処分地は土地収用法が適用できません。そのためにJR東海は困っている。ガイドウェイ組立ヤードも土地収用できるはずもありません。従来の鉄道は、レールは製鉄会社から完成品を購入していたのですから、従来の鉄道では考えられない無駄な施設です。どうしても必要な施設なのに、鉄道事業法(リニアでは適用していない)でも全幹法(リニアではこちらを適用)でもカバーできない施設なのです。つまり、認可の対象ではない。国としては勝手にやれというわけです。なんと無責任なのでしょうか。

名義貸しは犯罪じゃないの?

 また、民間企業の使用のために容易に農地転用ができない制度的な仕組みがあるらしいということ。とすれば、高森町がいわば「名義貸し」をすることで、農業関係のどんな法律かわかりませんが、そういう法律の抜け道を提供するわけです。「行政のテクニック」としてこういう方策を考えるのが有能な公務員なのでしょう。法律の主旨を捻じ曲げる合法的犯罪といえます。これがもう一つ。

 大型開発事業というのは、どこかどこかで法律に触れる部分があるような気がするんですが、法の裏をかいて、企業に奉仕する有能な(ヒラメの)公務員がいるので、大型事業が上手くいって、経済が良くなって、一般町人におこぼれがあるかもしれないでは、いつまでたっても、こんな繰り返しでは、困っちゃうね。法律の理念が活かされるには、住民の監視の目が、やっぱり、いります。国民のためになるが大企業の活動を規制するような法律ができると、それを骨抜きにする別の法律を作ったりする。

参考(2017/10/04):農水省の「農地転用許可権限等に係る指定市町村の指定(第4回)について」によれば、高森町は、2017年3月24日に「1 農地転用許可(農地法第4条第1項に基づく指定市町村)」、「2 農振法に基づく開発許可(農振法第15条の2第1項に基づく指定市町村)」のできる市町村に指定されました。都道府県に代わり「農地転用許可権限等を行使したい市町村は、農林水産大臣に申請を行い、農地転用許可制度等を適正に運用し、優良農地を確保する目標を立てるなどの基準を満たす場合には、指定を受けることができます」という内容です。ガイドウェイ組立ヤード候補地は周辺の農地との連続性があります。以前は将来的に農業のために土地利用をするという方針だったはずですが、2016年3月に土地利用計画を策定して「商工業地域」に指定しました。町のリニア推進担当者(経営企画課)は説明会などで批判的な質問に対して「まだ決まったことではない」と言いますが、これまでに町の動きを見ると町庁舎内では随分前から決まっていたように思えます。しかし、「優良農地を確保する目標を立てるなどの基準を満たす場合」という条件からすれば「高森町の土地利用計画」、さらに「指定」は明らかに疑問です。また、長野県では飯田市と高森町だけが指定市町村になっているのも不思議です。高森町の場合、なんとなく泥棒が金庫番してるような感じがします。諸々の農地保護の制度をどんな裏技で、通過させるかが経営企画課長の力量ということになるのでしょうか?

※ 農地転用の前に農振除外という手続きがあるようです。たとえば、近江八幡市のチェックシートで見ると、2番目の"農用地区域(農振白地)以外の土地であらゆる検討・交渉(交換や購入等)を行ったが、利用できる土地もなく、他の地域では計画が達成できない。"でアウトになりそうな気がします。高森町に限っても、三洋工具に入ってもらおうとして断らた土地(これはヤード候補に挙げている)や、どういうわけか知りませんが横浜エイロクィップに逃げられた跡地などある。2016年3月に策定した土地利用計画で工業用地になってはいますが、この土地利用計画には法的な拘束力はないということだったはず。

リニア対策委員会

 高森町はリニア関係自治体です。しかし、リニア対策委員会がありません。ガイドウェイ組立ヤード(こいつら、「ガイドウェイ組立工場(※)」とかいっていてちょっと微妙な感じがするんですが・・・)もできるし、残土だってどこへ運ぶかわからない、関係の車も増えるから、リニア工事が関係ないわけじゃないので、リニア対策委員会を作るべきでないかと要望すると、役場職員は反論しようとするわけです。リニア対策としてはすでに地権者と連絡会議を作っている・・・と。バカじゃないかと思います。会場から「一般的、全体的な問題だ」と助け船がでました。その通りです。ありがとう。

※ 組立ヤードは工事ヤードみたいなものです。そのために農地転用ができるのかどうかということ。あるいは必ず農地に戻さなければならないのかもしれません。将来の工場団地につながるものとして「ガイドウェイ組立工場」といえば町が工業団地を作って企業を誘致するためという「公共性」の名目がたつのかもしれません。

 「要望としてお聞きします」というのが、経営企画課長のご返事。JR東海の市田駅北の踏切改良問題では人の発言を遮った町長様(※)は、この件については発言無し。

※ 市田駅北の踏切改良問題:踏切が狭いので歩行者が自動車に押されて線路のある部分を歩かなければならないという問題。通勤通学の列車が到着した時は最悪です。後で出てきますが、この踏切は明神橋と国道つなぐ道路の途中にあります。現在ではバイパスが出来たので「集落内」の道路といえます。プロジェクターでGoogleの航空写真が示されていましたが、この踏切は前後の道路と幅員は同じです。つまり車のほとんどなかった時代のままなのです。JR東海は通行区分線をより内側に移せば良いといっているようです。JR東海の言うことですから理屈に合わないと一概には言えません。歩行者優先なら、車は遠慮してねとなるので、JR東海の見解に一理あるといえます。役場の建設課長だと思いますが、JR東海がレールをどうのこうのしなくてはならないとか、数千万かかるという言い訳に納得しない方がいました。私は、せっかく踏切の映像が出ているんだから、概略でいいからレールの問題について具体的にJR東海の説明を紹介したらといっている途中で、町長は「数千万といっても、2千万なのか8千万なのかわからないからそれを具体的に・・・」といいだしたのです。バカじゃないかと思いました。もうさっさと辞めてください。とはいっても、現在大活躍の役場職員が後継者では最悪ですが。

おごる車は久しからず

 オマケ。実はこれもリニアに関係あるのですが。ガイドウェイ組立ヤードへの工事関係車両の出入りのルートはまだわかっていないけれど、明神橋方面から通じる道の改良をするというのです。当然、移転する住民や、土地をとられる住民もいるわけです。この道路改良は住民の要求に基づくものではなく、JR東海への町当局のサービスです。

※ 実は、ガイドウェイ組立ヤードへ大型車が国道へ出入りする道路は既にあります。しかし、ショートカットできる道が欲しいということなのです。大した距離の違いはないのに。

 役場職員や「田舎の行政通」は農免道路の「先線(さきせん)」といっていますが、この道はもとは集落内の道路でした。だから周囲に住宅もあって線型も悪いし幅も狭い。当然、道を横切る歩行者も多いのです。最近、農免道路が飯田市との境で橋がかかって、飯田市の北部農免道路と繋がったので車の交通量が増え始めました。地区の交通安全協会が心配して横断歩道の印をペイントしました。そしたら警察に怒られました。その場所は見通しのよくないS字カーブの中央部です。基本的には集落内の狭い見通しのよくない道路を通過車両が速いスピードで走る方がマチガイじゃないでしょうか。警察もおかしいと思います(もちろん国の交通安全に対する考え方におかしなところがあるからなのでしょう)。ともかく人よりは車の方が威張っている。

 これからの社会、車は増えるでしょうか。たぶん減ると思います。もう自動車がビュンビュン走れる道路は必要ないと思います。と、これは一般論。

(2017/10/07 補足)『中日』10月6日記事「車生産 空洞化の危機 市場縮小、EV追い打ち」。国内について、"16年の販売台数は90年に比べ4割少ない497万台。少子化や若者のクルマ離れ、カーシェアリングの発達で、国内需要はますます先細りしそうだ。"

 この道路については、確かに、国道153号線の「バイパス的に見える」んですが、これから改良するという部分の先、明神橋西詰から先は、集落を回避するバイパス道路に接続して国道153号線にでます。しかし、このバイパスは明神橋を渡る車両が集落内を通過しないために作られたものであって、天龍川沿いの交通量までさばくつもりはなかったはずで、国道との交差点が狭いという間抜けがあります。かつ、飯田線を跨線橋で越してすぐに段丘のとっかかりですから、拡幅はむずかしい。いくら田舎でも、このあたりで、車は減るを前提に道路の計画は見直すべきです。道路や鉄道は階層的であっていいはずで、目先の都合が良ければどんどん道を作る、拡幅する時代じゃないと思います。リニア新幹線も東京と名古屋を結ぶんですから結局は目先の都合だけです。

 「人よりは車の方が威張っている」と思わない人はネ、車中毒になっていると思いますヨ。リニア推進も車中毒の延長線上にあるような気がする今日この頃です。そして、道が出来て、交通の便が良くなれば、生活が向上すると思うことは、東京が良くなれば地方も良くなる、大企業が良くなれば中小零細もよくなる、金持ちがより金を儲ければ貧乏人にもおこぼれがあるという、トリクルダウンと一緒だと思います。根拠のない信心です。そして、トリクルダウンという用語は、もともとは、そういうことは起こらないという説明の中で使われた言葉だそうです。

 私の経験としては、伊那谷の各地の集落では、道路が良くなると小売店が商売できなくなってきました。そして今になって、運転できないお年寄りが買物に困ってしまうということになっている。交通の利便性の向上が、かならずしも住民生活の向上につながるわけじゃありません。そして、歩かない人は、結局地域も歴史も理解できないと思います。

花火は打てるの?


画面クリックで拡大。出入口の位置も問題になりそう・・・。花火は直径が300~400mになるものがあります。

 出砂原自治会としては、灯ろう流しの花火大会の問題は大事です。出砂原から出ている町長が辞めても町の花火への協力体制は変わらないですねという、副自治会長の質問がありました。あまり明確とは言えませんでしたが、一応お答えはあったので、変わらないのでしょう。

 ところで、豊丘村の道の駅ができて、花火が豊丘側(天竜川の左岸)の河川敷で打てなくなる可能性があります。そうすると、下市田側(右岸)の河川敷で打つことになります。その隣にJR東海のガイドウェイ組立ヤードができるわけです。JR東海が示したヤードの配置図(上の図)を見ると、ストックヤードが打ち上げ場所の隣になります。そしてガイドウェイの完成品はブルーシートをかけて野積みするという話です。これでは花火は打てないと思います。そういう心配について、町側はまだこれからのことではっきりしないことなので何も言えない・・・という言い訳をするのですが、可能性があるなら心配するのは当たり前です。こういう心配をせせら笑うような態度で受け流すのは、町の花火への協力体制は変わらないという言葉がウソという証拠ですね。町の担当者は、飯田市内など市街地でも花火を打っているので打てる方法はあるはずと、思いつき、口先だけの言い訳じみたことをつぶやいていましたが、4寸程度までしか打てないようでは、天龍川の川岸の大煙火大会とはいえません。いってみれば、「灯篭流し大煙火大会」は下市田河原の「文化的景観」があってこその行事なのだと思います。

オイオイ。「灯ろう流しの花火大会」にリンク張ろうと思って、高森町のホームページを探しましたが、以前あった「灯ろう流しの花火大会」のページが見つかりません。副自治会長はホームページも載せてくださってといって感謝の言葉をいってましたが、そんなものないじゃん。再度見ると、左側の「高森町ブランディング いいらこのまち あったかもり」の中に「祭り・行事観光」がありましたが、「8月 市田灯籠流し大煙火大会 18日(雨天順延)」と書いてあるだけ。トップページから「花火」でサイト内検索をすると「高森町の観光情報/長野県高森町」というページがありました。たぶんこれが以前見たページです。少し画像を更新しています。しかし、その場所は "市田柿発祥の里高森町(トップページ)> 組織で探す> 産業課> 商工林務係> 観光・定住促進> 観光> 高森町の観光情報"。検索しなきゃ見つからないではちょっとネ。

 しかも、ガイドウェイの完成品はブルーシートをかけて野積みするという話を町長様はご存じない。これじゃダメです。

(2017/10/03)