リニア工事で受注調整
リニア工事で談合だか受注調整だかがあったという話題が盛り上がっています。12月30日の『日経』26面の記事「リニア談合、年明け捜査本格化 受注調整 仕組み解明へ」では:
- 東京地検が4社(大成建設、鹿島、大林組、清水建設)を捜査したのは独禁法の不当な取引制限の容疑
- 焦点は2015年以降発注の24件のうち4社が均等に受注した15件
- 関係者によれば
- 4社の担当者が定期的に集まるようになったのは工事認可前後(2014年10月)
- JR東海は工事費の抑制を各社に要請
- 価格競争になれば収益の確保が難しくなる
- 大成建設を窓口に各社の希望を集約する形で受注調整
- 今回調整を担当したのは業務担当でなく技術部門でメモを残すなど不手際があった
- 大林組は独禁法違反を認めたが他3社は違反があったと認識していない
- 過去の判例を踏まえると、「4社が発注工事の半数程度で受注する工事を割り振っていれば自由で公正な競争を阻んでいるとされ、違反の認定の判断基準になるとみられる」(村上政博・成蹊大客員教授)
- 違反が認められると、各社に罰金や課徴金が科される
- 経営陣が株主代表訴訟を起こされる可能性
- 契約済みの工事への影響はないが未契約の工事も多い
- こんごのスケジュールへの影響は見通せない
ということで、思い出したのが2015年の「週刊ダイヤモンド」の記事「特集:ゼネコン 気が付けば最高益の罠」。こんなグラフがありました。
「週刊ダイヤモンド」 2015年6月13日、p31より。赤い折れ線を追加。
「大型工事の建設投資予定額の推移」という予測ですが、リニアの比重がものすごく大きいのが分かります。記事は:
- 大手や工事に自信のある準大手までリニア工事に飛びつくと思いきやさにあらず。
- JR東海は費用の全額自社負担の方針
- 建設コストの上昇が予想される
- ゼネコン各社は、ようやく業績回復の途上
- 歴史的な大工事であっても、採算を無視した価格で応札する余裕はゼネコンにはない
- リニアに関わる土木工事は困難を極める
など書いてあり、受注調整が行われても何の不思議もない条件はそろっていたわけで、法律の方が現実にあっていないという声も一部にはあるわけで、むしろ、そんな困難な工事で完成させたインフラを今後維持していくのは大変だなと私なんかは思う所です。
この事件に関連して、工事を止めろという声もあります。しかし、まだ違法性は立証されていない段階ですから、大林組が認めたからといってそれだけでは立証は無理という意見もあるのです。受注が何の違反もなく行われていたとしたら、止めなくて良いのですか。
そういう観点で見ると、この事件に関連して工事を止めろと言っている主張はちょっと歯切れが悪い部分があるように思います。だいたい、年末の忙しい時期なんですよ、ややこしい話について考える暇はありません。だからって、脊髄反射はダメです。お叱りは覚悟の上で書きましたよ。
もう一個。こんなページもありました。この「リニア関連工事の即時停止と原因徹底追及を求める声明」について、呼びかけ団体は1月3日までに賛同できる組織・団体は連絡をしてねと言っています。つまり、呼びかけ団体と多数の賛同団体の連名で声明を出したいと言ってると思います。だったら、ネット上に声明の案文を掲載するというのはどうなのでしょうか。だって1月3日までって区切っているでしょ。文章の内容をみてもまだ練る必要が十分にあると思いますね。
(2017/12/31)