更新:2018/07/10、2018/07/11 訂正・加筆。

おフランスのリニア

 おフランスからシェーと驚くような話題。ま、それほどでもないか。


スペーストラン。列車というよりはマウス

 フランスのある会社が、空気浮上式の鉄道を開発しようとしているようです。

 フランス語なので、google翻訳 で読んでみました。

 フランスのパリとオルレアンに拠点を置く、Jacques Vaucanson 社は、1960年代にフランスで開発されていた、アエロトランという空気浮上式の列車を復活させようとしているようです。アエロトランは、圧縮空気で列車を浮かしジェットエンジンで推進させました。1974年に430.2kmで走行しています。これまで50年間の技術の発展を反映させて、誘導型(インダクション式)のリニアモーターで推進力を得ようとする今回の列車はスペーストランというそうです。

 記事の内容は、この計画について、上手くはいかないんじゃないのといった皮肉が込められているように思います。


(Wikipedia)。昔の空気浮上式のアエロトランの浮上の仕組み。たぶん騒音がものすごいはず。浮上量は3㎜。

 記事にある、1974年に430.2km/hの速度記録を達成したアエロトラン 250-80型(「オルレアン号」)はジェット推進でしたが、実は、すでに、1969年には、誘導型(インダクション式)のリニアモーターを搭載した 140-80型 がありました。目標速度は、約200㎞/h。つまり、誘導型のモーターでは遅いので、ジェットエンジンを使って記録をつくったと思われます。


(Wikipedia)昔のアエロトラン

 名古屋のリニモ(HSST)は誘導型のリニアモーターを使っています。最高速度は時速100㎞/hと比較的低速です。たいして、時速500㎞/hで走る、トランスラピッドとJR東海のリニアは誘導型ではなくて同期型のリニアモーターを使っています。高速走行には誘導型は適していないようなのです。

(注)誘導型というのは電流を流すコイルに対して相対的に動く部分がアルミなど導体の板でできていますが、同期型では磁石です。誘導型のほうが同期型より安上がりです。

(参考) 日本航空が開発していた HSST 01 は1978年に 307.8km/hを記録しましたが、推進には誘導型のリニアモーターにジェットエンジンを併用していました。

 記事が伝える、Jacques Vaucanson 社の説明とは実際は、逆なのです。

 ハイパーループとか、アイアンレブとか浮上式鉄道でちょっと目先の変わったものが、最近出てきています。それらと比べ、JR東海のリニアが遅れていると思う人がいるかも知れません。

 ドイツは、浮上式鉄道について戦前から研究をしています。電磁吸引方式(※1)、超電導(※2)、空気浮上方式(※3)のすべてについて実験をしてきました。そして最終的に電磁吸引方式のトランスラピッドに開発を統合しました。陸上の大量高速輸送の浮上式の交通機関としては電磁吸引方式が最も適しているとの結論を出したといえます。あの、ドイツが。2004年には上海で営業路線の運行が始まりました。

 しかし、最終的には、ドイツ国内ではトランスラピッドの敷設は中止となりました。スピードアップした新たな路線を建設するほどの需要はないことが分かったから、つまり、従来の鉄道で十分間に合うからです。また、最高速度以外では従来の鉄道の方が圧倒敵に優れているからです。最高速を競ってきたヨーロッパの従来の鉄道、最高速度は250㎞/hもあればよいという流れになってきたようです。となれば、そもそも浮上式鉄道の存在価値はありません。

 ただし、こういう泡沫的な計画も瞬間的には投資資金を呼び込むことができるかもしれない。資本主義の原理からすれば、必ずしも間違ってはいません。私たちにとって、社会にとって役に立つかどうか、環境破壊などの悪影響があるかどうかは別にして。そう考えると、JR東海のリニアも、スペーストランやアイアンレブのお仲間といえるんじゃないかと思う今日この頃です。それを、本気でやり始めちゃったんですからね。

ああいえば、こういう・・・

 最近、オウム事件の麻原教祖など7名の死刑が執行されました。7月8日の『朝日』が「オウムを生んだ社会は今」で、大澤真幸さんと、宮台真司さんの発言をのせています。大澤さんは書いています。"理想と虚構はともに非現実的だが、違いは、前者はやがて現実化すると見なされなくてはならない点にある。・・・理想は一般に、何らかの未来状態に対して建設的なものである。この建設的な側面をトータルに否定し、破局を導く無目的な破壊の、それだけがかつての理想に匹敵する―いやそれを上回る悪魔的魅力を発するだろう。その破壊が、偽善的な理想をことごとく拒絶する真に崇高な理想に見えるからだ"。リニア計画は、無目的であるけれど夢のような話。大澤さんの言い方を借りるとすれば、虚構。悪夢の超特急と呼んだ人もいます。宮台さんは、「教団の中で繰り返されていたのは、今風にいえば、教団内での地位をめぐる、麻原彰晃の覚えをめでたくするするための『忖度』競争でした。教義や大義は、どうでもよかった。」。JR東海のリニア建設部ってオウムと通じるところがあると思いますね。共通点は浮かび上がること。

空中浮揚と磁気浮上

 麻原彰晃氏の空中浮揚の写真のトリックは、浮いているんじゃなくて跳ねている一瞬を撮影したものでした。⇒ Youtube:オウム真理教(現アレフ) 麻原彰晃 空中浮揚のトリックを解明する

 リニアの仕組みを説明するときに、たいてい見せるのが超電導物質のマイスナー効果とピン止め効果による浮上です。「Youtube:超伝導のピン止め効果実験」は山梨県立リニア見学センターで見せている実験。たぶんこのあと説明者が、リニアの浮上原理とは違いますという説明をしたはずです。でも、ビデオを撮った方は、重要な事なのにカットしてしまったのかもしれません。しなかったのかも知れませんが、私が見た時は最後の方で説明していました。ともかく、結構印象に残る実験だと思います。超電導って超不思議ってね。

 リニアの磁気浮上は、誘導反発方式といって、簡単に言えば、推進力の一部を浮上に使っています。この浮上には結構エネルギーが必要なのです。10㎝も浮かせるので、磁力の有効利用が出来ません。だから、JR東海がいうには、新幹線の約3倍の電力が必要です。スピードは2倍にもならないのに。見学センターの実験を見たとすれば、そんなことは気にならないですよね。私たちって結構ボンヤリしているんです。超電導物質の浮上実験は、リニア新幹線にからめて、各地で子供たちが見ています。

 リニアとオウムの関係。どちらもなんでこんなことやるのという、目的が全くわけが分からない点もおなじですね。