更新:2018/07/18
「HSSTの開発について」
中村信二さんが書かれた「HSSTの開発について」という文章を見つけました。電磁吸引方式のHSSTを開発した日本航空がなぜ、電磁吸引方式を選んだかについて、2節、3節に書いてあります。『日本航空宇宙学会誌』の 第26巻 第297号 (1978年10月)に掲載されたものです。
- HSSTの開発について [PDF]
超伝導磁気浮上方式を採用しなかった理由として次のように書いています。
ヘリウムの冷却,液化にかなり大きなパワーを必要とするし,また高価なヘリウムの散逸を防ぐことに技術的困難が予想される.その他強力な磁場が人体に及ぼす影響とか,高速における動安定など今後解明せねばならぬ多くの点があると思われる.
「高速における動安定」について不明な点があるといっています。リニアの揺れが気になるという問題と大いに関係があるのでは?
電磁吸引方式、つまり常電導の利点については:
この方式の利点の一つは,浮上パワーが他の方式に比較して小さい点にある.すなわち1トンの揚力を得るに1~3kW程度しか要しない.またレールとの間隔がきわめてタイトに保持できるので,リニア・インダクション・モーターと組み合わせれば,モーターのエアギャップの維持が容易である.
浮上量が1㎝と少ないことは欠点だろうかという点について:
この方式の欠点と考えられていたものの一つは,レールとマグネットの間隙が10mm程度と小さなことで,このためレールの精度をよほどよくしないと高速走行には適さないのではないかということである.しかし後述するように,この問題は実用上なんら支障のないことが判明した.
非常に重要と思われる指摘は:
この方式の魅力はなんといっても大部分がすでに解明され実用化されている技術の応用であり,それゆえに安価でかつ実用化がきわめて容易であることである.
日航技術陣では,これら各種方式を検討した結果,西ドイツの吸引式磁気浮上方式が低公害,省エネルギーの点で優れており,かつ最も早く実用に供しうる可能性が高いとの結論に達した.
現在、営業路線として存在しているのは、HSST技術を採用した名古屋のリニモ(2005年3月開業)と、トランスラピッドの技術のSMT(上海・マグレブ・トレイン、上海リニア、2004年1月開業)だけです。どちらも1㎝しか浮上しない電磁吸引方式です。すでに10年以上営業をしています。一方、建設が始まったもののまだ開発途中なのがJR東海の10㎝浮上が売り物の超電導リニアです。技術の優劣は歴史がすでに示していると思います。
文章の中に出ているドイツのメーカーで MBB というのは メッサーシュミット・ベルコウ・ブロム という会社のことです。