大鹿村入谷の地すべり対策

 大鹿村の入谷(にゅうや)という所(地図)の地すべり対策施設を見てきました。道路沿いだけ見たので全体は分かりませんが、多数の水抜きのための井戸がありました。地図の赤いアルファベットは写真の撮影場所。写真Bの看板の地図を元に地すべり防止区域を赤い線で書き込みました。

 この程度の対策をすれば残土を谷に置いてもある程度安全だという人もいるようです。しかし、よく考えて見てください、こういう地滑り対策がしてあるのは、もともとあった土地です。土を積み上げて人間が作ったものではありません。そこで人が住んだり耕作したりしている場所です。それかそういう場所の周囲です。

 阪神大震災で兵庫県西宮市の仁川百合野団地が隣接する浄水場建設で土を積んで造成した土地が崩れて多くの犠牲者を出しました(仁川百合野地区のホームページ)。災害復旧で再度同じように造成しました。その時に対策として、入谷を始め、当地方各地でも行われている地すべり対策と同じようなことを施したそうです。

 百合野では元のような造成に反対があったようです。万一の事故があれば補償するという誓約書で、斜面(実は谷地形だった)に「10万m3」の土を積み上げて造成し直したそうです。あえて危険なことをすることはおかしいです。リニアの残土を谷に捨てるというのはそういうことです。

 リニアの残土捨て場はこれほどの対策をするわけじゃないので、ダメだという考え方もできるかも知れませんが、本来削れてできた谷に土を埋め立てるのは自然の摂理に反する行為です。残土の埋め立て候補地の谷はすべて水が流れている谷です。


A:集水井F-2号



B:地すべり防止区域の看板


C:集水井


D:集水井C-19号


集水井C-19号のプレート。直径3.5mのタテ穴を掘ってそこから斜面の上の方に向かって、扇型に7本、長さ50mの水平ボーリングを2段にして、穴の開いた管が入れてあります。各管から井戸に土中の水が流れ出てきます。



E:集水井C-5号


F:集水井B-15号


G:地すべり自動観測システムの一部


H:集水井B-2


I:集水井B-5


J:斜面にアンカーが打ってあります。


補足 2018/07/29

 入谷地区の地すべり対策事業について、必要性や事業内容のおおよそをまとめたものを見つけました。

 集水井は全部で84基の計画。このページで紹介したのはごく一部だけです。地すべりによる直接の被害の他に、地すべりの結果できた自然ダムの決壊による下流への被害があるといっています。谷にリニアの残土を埋めるのも同じような災害を引き起こす可能性があるはずです。リニアの残土埋め立て地にも同じような対策がいるはず。たかが速い大都市間移動のために社会全体が支払うコストとしては大きすぎと思います。