更新:2018/09/17

カーブの不思議

 下の2枚の写真をくらべてみてください。どちらのカーブのほうがより急ですか? よーく見てくださいね。



 上は、超電導リニアの山梨実験線のたぶん、半径8000mのカーブです。これは、山梨県リニア見学センターのこのページにある写真です。山梨実験線には、半径8000mより急なカーブはありません。下は、トランスラピッドのプロモーションビデオの一コマ(3分44秒)で、おそらく運転席の窓から撮影しています。ドイツのエムス川沿いにある、トランスラピッド(上海リニア)の実験線です。たぶん南側の半径1㎞のループを通過している映像です。

 次の2枚は、地図と航空写真ですが、縮尺をそろえています。撮影したと思われるカーブのキツサを比べて見ましょう。


カーブの位置はおそらく、見学センターから名古屋方面へ約4.5kmのトンネルの内部(JR東海の工事申請書類付属地図より )。たぶん、見学センター側(画面では左)の直線部分のどこかから撮影したと思います。


エムスランド実験線の南側ループ(グーグル)。撮影位置はおそらく矢印付近。

 でも、最初の2枚の写真では、ほとんど同じ曲がり具合に見えますね。

 なぜなのか、種明かし。

 トランスラピッドはもうカーブに入った状態で撮影しています。それに比べて、超電導リニアのほうは、カーブの手前の直線部分のかなり遠方から望遠レンズで撮影しています。山梨実験線のほうは、実は、望遠レンズ特有のクセで曲がりがきつく見えるのです。正確に言えば、被写体とカメラとの間の距離の違いが原因です。


矢印付近で撮影か?

 二つを並べて見る機会はほとんどないと思います。まあ、それほど大したことじゃないんですが。

 たとえば、超電導リニアの方だけしか見ないとすれば、超電導リニアはけっこうきついカーブも曲がれるんだ、という印象を受けた人もいるでしょう。でも違うんですよ、半径8000mといえば、ほとんど直線みたいなものです。

参考: "ちなみに、さらなる高速運転が計画されているJR東海の中央新幹線(超電導リニア)では、半径8000mまでカーブを緩くしています。ここまでくると見た目はほとんど直線です。" (「新幹線と在来線はどこが違う? 流線型にしたら速く走れるのか」(乗りものニュース 2018.01.08 児山計=鉄道ライター))

 どちらが、カーブを走るのが得意かは、走った実績のあるカーブの半径の数字を比べれば簡単にわかります。超電導リニアは8000mが最少の半径。トランスラピッドは1000mが最少の半径です。

 「時速500㎞/hという高速特性を活かすために、路線は直線を選ぶ」というJR東海さんや期成同盟会さんの主張に納得する人は、曲がれなくてもいいじゃんと思うでしょうね。でもね、ひょっとして、実は技術的に無理があって曲がれないんじゃないのって思いませんか?

補足 2018/09/26

※ 「東京より」と説明していましたが、「名古屋方面へ」です。この地図はJR東海が工事実施計画に添えて国交省に提出した地図です。国土地理院の地図に路線を記入しています。解像力不足で地名がほとんど読めませんね。これは元のPDF(下記)でみても同じです。

これでは路線がどこを通るか分かりません。また地図の使い方が普通とは逆です。南が上になっています。JR東海が記入した文字類は地図の文字と逆になっています。東京地裁の裁判官が国交省が認可した計画は「モワとしたもの」と言っています。確かに、なにかはっきりとしない大計画と思えますね。まあ、方向を間違えた言い訳なのですが・・・