更新:2018/02/15

変なリニアの変な想像図

 FaceBookのこのページですごく変な合成写真を見つけました。画像の出所は書いてありません。


 背景の丸い天井というか建物は、上海のトランスラピッドの龍陽路駅の内部。止まっている列車はJR東海のリニアですが、多分名古屋のリニア鉄道館に展示してある試験車両(MLX01-1)。

 大きなマチガイは、この写真のカメラの視点ではこんな風にはリニアの列車は見えないはず。

 実験線の乗り場を外部から見ると。


 見学センターのHPにある乗降り装置(渡り廊下、ボーディングブリッジ)の駅側からみた構造図。


 例えば、体験乗車について書いているこのHPの3つ目と4つ目の写真。駅の側から車体は見えていません。というか、窓越しでしか見えないはずです。乗客と車体との間は完全に分けてあります。

 実験線では、列車は屋外ですが、営業線では列車も屋内ですから、駅側と列車側の間には天井まで続く壁を設置しなくてはならないはずです。

 なぜかと言えば、超電導磁石に乗客を近寄らせないためです。また、乗客の持ち物などが吸い寄せられないようにするため。鉄製品を投げ込むようないたずらを避けるためです。だから、冒頭で紹介した合成写真のような場面はあり得ません。

山梨県立見学センターのHPでは次のように説明しています

超電導リニアは、ホームなどの建物が車両の走行に影響を与えないよう、通常、車両から約1.5m 離れています。したがって、乗降時には、ホームと車両ドア部分との間に渡り通路が必要となり、逆に列車の出発・到着時には、この通路はホーム側に引っ込まなくてはなりません。
山梨リニア実験線では、超電導磁石の磁界から乗客を守るため、プラットホームに、飛行場のボーディングブリッジのような乗降設備を設けてあります。この乗降設備により、磁界は遮蔽され、安全に車両に乗り降りできます。


 これは本物の上海のトランスラピッドの写真。普通の鉄道と同じようにプラットホームから直接に乗り降りができるのは、常電導磁気浮上方式と跨座式のガイドウェイを採用したからこその特徴です。JR東海の超電導磁気浮上方式では絶対に実現できないものです。それは、超電導リニアの大きな欠点のひとつです。

 この合成写真、どういう気持ちで作成したのか疑問です。画像の出どころを探してみたら、リニアに期待している方のブログでした。たぶん。


2006年12月に出版された、鉄道総合技術研究所編『ここまで来た!超電導リニアモーターカー』(交通新聞社)の山梨リニア試乗記に「プラットホームには…とはいっても普通の鉄道のように、じかに列車が見えるわけではなく、通路とは厳重な壁で隔たれている。これは超電導磁石による磁気の影響を遮るためである。・・・(p13)」と書かれている。リニア開発者や推進側の出版物さえきちんと読まずに、「時速500㎞」、「東京大阪67分」だけで夢をふくらませている感じですね。