更新:2018/02/20

伊那谷・残土問題連絡協議会

 『信毎』に「伊那谷・残土問題連絡協議会」が発足したニュースが載っていました。記事にある3月10日の学習会についてはこちらを見てください。

 リニアのトンネル工事で出てくる掘削残土は非常に大量で長野県内だけでも約1000万立米にもなります。実はこの残土の最終処分地がいまだにどこも確定していません。

 これまで候補に挙がった場所、たとえば、豊丘村の源道地の沢は住民の反対にあってJR東海は使用を撤回しました。将来の災害を心配してのことです。同様に、松川町の生田地区の中山などについても下流域の福与区が残土の受け入れの中止を町に2016年、2017年の2回申し入れ、話は全く進んでいません。豊丘村の本山では長野県が地権者である生産森林組合の受け入れの決議を無効とし、話が白紙に戻っています。組合の運営方法に違法性があったのが原因なのですが、虻川本流の砂防ダムですら計画貯砂量が10万立米ですから、その支流の沢に不安定な形で残土が130万立米も置かれるということは、長野県の治山や治水を担当する部署としては困ったことと受け取ったかも知れません。

 しかし、下流や周辺の住民が知らない内に、JR東海や行政が地権者との話だけで上手く強行突破する可能性はあります。周辺や下流域の人たちに残土を谷に埋めることの危険性を知らせる必要があるというのが連絡協議会を発足させた理由のようです。


 リニアとは全く関係ない話です。2004年~2005年頃に、高森町では役場そばの唐沢洞を埋め立てて駐車場や下段と上段を結ぶ道路を整備するなどの計画があり、結局は中止になりました。この事業計画について災害の危険があると住民の反対の声が上がったからです。谷を埋める危険性については三六災害などの経験から住民は常に心配しているからです。(参考 ⇒ 『南信州』2005年3月26日:「高森 唐沢洞埋立て事業減額修正」)

 連絡協議会発足に今さらという感じを抱く人は高森町にはかなり多数いるはずで、さすがの高森町役場も少なくとも表向きは残土の候補地の情報提供はしていないようです。ただし、リニアガイドウェイ組立ヤードやアリーナなどができるとすれば、応分の犠牲を払えと周囲の町村から圧力を受けるかも知れません。

 残土問題は環境省も工事認可まえから大きな問題と指摘していました。リニア建設では残土の処理計画を最初の工事計画に盛り込む必要があったのです。そうすればこの工事計画がいかに無謀であるか確認できたはずです。建設が経済的に成り立つ範囲で残土を安全で誰もが納得できる形で処分することはまずできないだろうと思います。リニアを推進する人たちも残土の処理だけでも巨大な費用と時間と労力がいるということを認識すべきです。

 リニア計画は出来るものなのか、出来ないものなのか、リニアの賛否に関係なく考えて見る必要があります。そうしなと「リニアを見据えた」事業が皆水の泡となってしまいます。

 「リニア自体の賛否は全く関係なく、残土問題だけを検討する。」と言っておられるのですが、私はこんなことを強調する意味はほとんどないと思います。リニアについて賛否を発言するのは自由です。

 京大工学部の釜井教授によれば、谷や斜面を埋め立てても安全な工法はあるそうです。水抜き井戸を設けたり、地中に杭を打ったりするようですが、非常にコストがかかるそうです。兵庫県にはそういう対策をした埋め立て造成地もあるようです。実は同じようなことは、地滑り対策として、南信地方でも行われています。例えば、下條村の合原(ごうはら)地区とか大鹿村の青木や入谷などで水抜き井戸による対策などが行われてます。遠方の「先進事例」よりは近くで行われてる同様の事業を、まず、調べてみる、確かめてみるのが良いんじゃないでしょうか。近くは何時でも行けるなどと言う人に限って、近くのことを良く知らないものです。