更新:2018/04/10
リニア新幹線をアピールする新しいサイト
JR東海がリニア新幹線をアピールする新しいサイトを開設しました(JR東海)。
ページを開くと、最初に出てくるのは、これまでの新幹線の列車が脱皮を重ねて超電導リニアが出来たんだよっていう感じのアニメです。アニメが終わると「歴史をつなぎ、未来をつくる。」ということば。超電導リニアの走行方式は従来の新幹線とはまったく違います。「歴史をつなぎ」というのは、高速で走る公共交通機関としての歴史という意味なのでしょう。公共交通としては、まず第一は安全性と確実性です。この点で超電導リニアには疑問があると思います。『南信リニア通信』はそのあたりのことを、思いつくまま、きままに紹介してきました。
- 『南信リニア通信』(http://www.nbbk.sakura.ne.jp/npp/index.html)
JR東海さんのサイトのメニューの項目は5つ。
- (1)超電導リニアとは
- (2)超電導リニア体験乗車インタビュー
- (3)山梨リニア実験線大解剖
- (4)リニア中央新幹線の工事計画
- (5)FAQ
超電導リニアとは
「超電導リニアとは」のアニメーションの1カット。
説明文は:
車両はガイドウェイの中央を走行します。
車両が一方の壁に近づいた場合でも、超電導磁石と浮上・案内コイルの間に働く磁力により車両は常にガイドウェイの中央を維持し続けます。
磁力により左右にぶつかることなく、
常に中央で安定して走行することができるのです。
この画像は動きませんが、JR東海のページでは、車体が左にずれて、中央に戻って、右にずれて、また中央に戻ります。
動画は説明する側にすれば便利なものです。覚えていますか、この画面の前の画面。
解説文の中に:
・・・浮上・案内コイルに電流が流れて磁力が発生し、車両の自重と磁力が釣り合う位置に車両を浮上させ安定します。・・・
「釣り合う位置」ってことばがポイント。カーブでは車体に遠心力が働きます。車体は外側に向けて力を受けます。カーブでは車体は「遠心力と磁力が釣り合う位置」までずれるとは思いませんか? だとしたら:
左右の浮上・案内コイル(赤い部分)が赤い線でつないであります。
この動画で車体が中央に戻るのは、カーブを過ぎて直線部分に入ってからのはずです。左右の浮上・案内コイルが配線でつなげてあって、何か意味ありげなんですが・・・。
「超電導リニア」をJR東海といっしょに開発してきた財団法人・鉄道総合技術研究所が編集した『ここまで来た! 超伝導リニアモーターカー』(交通新聞社、2006年発行)という本があります。119ページに次のように書いてあります。「案内特性」というのは、列車がガイドウェイに沿ってどんなふうに走るだろうかということ。
案内特性
曲線区間ではカントを設けて高速走行時に左右変位が均衡するようにしている。図24に示すように、時速400キロ時に左右変位が均衡するように設計していたが、ほぼ設計どおりの特性が得られた。・・・
図24は、おそらく半径が8㎞のカーブで実際にいろいろな速度で走って実験した結果だと思います。横軸がスピード、縦軸が「左右変位」、つまりどれだけ「ずれた」か。スピードが上がれば遠心力は大きくなります。時速550㎞/hでは約1㎝外側に向かってずれています。「カント」とは カーブでは路面を内側に傾けること。内側に傾いているので、スピードが遅くて遠心力が小さい場合は重力によって中心線から内側にずれ落ちます。設計速度の400㎞/hより遅い時速130㎞/hでは約1.5cm内側にずれていたというのが実験結果。
「車両は常にガイドウェイの中央を維持し続けます」という解説は、ウソとまでは言えないにしても、ちょっと怪しい説明じゃありませんか。正確に言うなら、「半径8㎞の『もっともきつい』カーブでも左右約1㎝のずれの範囲で時速150㎞~500㎞の速度で走れます」でしょうね。悪口をいう立場としては大袈裟に言えば、リニアはゆらゆら揺れながら走っていると言いたい。
さて、「図24」の右上スミに注目。「限度値:40㎜」って何でしょうか? 多分、40㎜、4㎝ずれたら危ないよという意味なんじゃないでしょうか。
超電導リニア体験乗車インタビュー
「超電導リニア体験乗車インタビュー」のページには「振動も静か(?)」とか「揺れない」、「お茶の間にいるのと変わらない感覚」など感想がでてますが、JR東海さんが思いのままにコントロールできないメディアでは「揺れる」という感想は結構あるし、JR東海の実験線の担当者も揺れは開業までに改善すると言っています。揺れないと思い込んで試乗すれば揺れないように感じるということかもね。
メニューの次の項目「山梨リニア実験線大解剖」の「#5 今後の技術開発」のなかに、「振動や騒音を一層低減させる他、圧力(気圧)の・・・快適性の向上のため、引き続き検証をおこなっていきます。」と。程度の問題は別にして揺れも騒音もあるわけです。
山梨リニア実験線大解剖
曲線が苦手の超電導リニア
「山梨リニア実験線ルート」というアニメーションと「山梨リニア実験線について」という内容です。「山梨リニア実験線ルート」というアニメーションはなかなか上手くできています。でもね、これは皆さんが見ているアニメが素晴らしいんであって、実際の超電導リニアが素晴らしいかどうかは別問題です。
「山梨リニア実験線について」の「山梨リニア実験線の概要」では実験線を3つの数字で簡単に紹介しています。総延長42.8km、最急勾配40パーミル、最少曲線半径8000m。十数年まえから営業運転をしている磁気浮上式鉄道、トランスラピッド(上海リニア)と比べてみましょう。それから、最高速度についても。
総延長 | 最少曲線半径 | 最高速度 | 営業最高速度 | 最急勾配 | |
---|---|---|---|---|---|
山梨実験線 | 42.8km | 8000m | 603km/h | 505km/h | 40パーミル |
エムスランド実験線 | 31.5km | 1000m | 450km/h | ※100パーミル | |
上海リニア | 29.9km | 1250m | 501km/h | 430km/h |
※ エムスランドも上海もほぼ平坦な地形です。開発したトランスラピッド・インターナショナルによれば、100パーミル。1000m走って100mの高低差。
トランスラピッドは、半径4500mのカーブを時速500㎞で走れるそうです。最先端技術の超電導を使っていないのに、1㎝しか浮上できないのにね。上海リニアは2004年1月から、もう14年も営業運転をしています。大きな事故や人身事故は起こしていません。トランスラピッドと超電導リニアをちゃんと比較してみた方が良いと思います。そのトランスラピッドも、もうちょっと飽きられてきた感じもあるようなんですが、だって、上海万博に合わせて上海市中心部まで延長する予定だったのにやらなかったでしょ。でも比べてみると良いと思いますね。
大袈裟に言えば、リニアはゆらゆら揺れながら走っているんですから、カーブは出来るだけ遠慮したいのが本音かも。でも、JR東海さんは、時速500㎞の高速特性を活かすために直線のルートを走るのだと言っています。ものは言いよう。
やっぱり、「図24」の「限度値:40㎜」が気になりますね。
JR東海の名誉会長の葛西敬之さんは、安倍晋三さんの仲良し。他人のいうことを時に印象操作と批判する安倍さん。ご自身も、省庁あげての印象操作が大好き。JR東海さんの、新しいこのサイトも、50年かけても、ものにならない超電導リニアが、いかにも素晴らしいと思ってもらうための印象操作なのではと思います。国民が期待を感じて、取り返しがつかないくらいに遅れはじめた工事計画が早期開業できるように応援してくれるようにと。とりとめもなくお金のいる建設費用についても国民が応援してくれるようにと。
このJR東海のサイト、公開が4月1日だったらもっと楽しめたのに・・・。