更新:2018/06/09

トンネル掘ってベルコン設置? 残念な『南信州』


田園神社の蚕玉様(こだまさま)

 9日付の『南信州』を読んでちょっと驚きました。風越山トンネルの工法変更についての、7日の北条振興センターでの説明会で、JR東海が、北条のシールドマシンの発進立坑から土曽川の工事施工ヤードまで300メートルのトンネルを掘って、そこにベルトコンベヤを設置して、残土を搬出すると説明したと書いていました。

 説明会は、6日にも座光寺公民館で行われました。JR東海は、2日とも同じ説明をしたはずです。

 6日のJR東海の説明は次の通り。説明に使った資料を下に示します。

6日座光寺公民館でのJR東海の説明:シールドマシンはマシンのところからずーっとヤードまでベルトコンベヤーにのせて土を出していきますので、このままずーっとこちらの土曽川の非常口までベルトコンベヤーで土を運んで行って、こちらから土を搬出するというようなところを検討をおこなっております。これ、まあちょっと、直線で書いてありますが、点線で書いてあるとおり、ここの区間の搬出方法ですね、ふくめて、非常口から先の合わせまして検討してまいりますが、そちらの搬出方法の検討につきましては、長野県さんや飯田市さんの事業と調整させていただきながら、また協力させていただきながら、検討を進めていきたいというふうに考えております。


 『信濃毎日』の7日の記事です。JR東海の説明と大きな違いはありません。

『信濃毎日』7日:JRは残土の搬出方法について、トンネル出入り口から北側に約300メートルの長さのベルトコンベヤーを設置し、土曽川非常口付近に設ける施工ヤード(作業場)まで運ぶことを検討していると説明。

 『南信州』は8日にのせています。あらためてよく見ると、「非常口に向けて約300メートルのトンネルを掘り」と書いています。JR東海はそんなことは言っていません。

『南信州』8日:JRは地元上郷北条地区の懸念を踏まえ、同非常口に向けて約300メートルのトンネルを掘り、ベルトコンベヤーで土を運ぶ案を提示。非常口計画地には施工ヤードを設け、・・・(『南信州』ネット版)

 次は、7日の北条振興センターでのJR東海の説明。説明に使った資料は同じものですが日付が変えてあるのでのせます。

7日、北条振興センターでのJR東海の説明:土については、施工ヤード土曽川、こちらの土曽川の非常口、こちらに上郷の施工ヤードから土曽川施工ヤードに運搬をすると、基本的には、ここの中はベルコンできますので、ベルコンで運んでいけると考えておりますが、土曽川の非常口のほうに運搬して、そこからダンプに積み込んで、発生土置き場のほうに運んでくと言うことでございまして、もともと土曽川の非常口から斜坑を入れて掘りまして、こちらから土を運搬するという計画でございまして、土の運搬等についは、今のところかえない方向で検討を進めていきたいと考えております。なお、この区間、点線の部分の運搬方法と土曽川の非常口から先の運搬方法合わせまして、これからですね、長野県さんや飯田市さんとご協力させていただきながら、検討を進めてまいりたいと考えております。


 まず『中日』9日。JR東海の説明の範囲です。

『中日』9日:JRは「北条からは土は出さない」としてきた住民の要望を考慮し、土曽川沿いに向けて県駅の北に約三百メートルのベルトコンベヤーを設置し運ぶ検討案を提示したが、・・・

 『南信州』は、「非常口に向けて約300メートルのトンネルを掘り」と書いています。

『南信州』9日:・・・地元の要望を踏まえ、JR東海は駅付近の立坑から非常口に向けて約300メートルのトンネルを掘り、ベルトコンベヤーで土を運ぶ検討案を提示。

 『信濃毎日』は「ベルトコンベヤーの構造や形状について質問」があって、JR東海は「具体的な検討はまだできていない」と答えたと書いています。JR東海の説明の範囲を出ていません。

『信濃毎日』8日:JRは残土の搬出方法について、トンネル出入り口から北側に約300メートルの長さのベルトコンベヤーを設置し、運び出す計画を検討していると説明した。 出席者からは、ベルトコンベヤーの構造や形状について質問が上がった。JRは「具体的な検討はまだできていない」と説明。今後、工法が決まった時点で示すとした。

 『信濃毎日』と『中日』は、コンベヤ用の新たなトンネルを掘るとJR東海が説明したとは書いていません。書いたのは『南信州』だけです。両日参加した、私もそんなことは聞いていません。どっちが正しいのか、明らかだと思います。

 じつは、住民のなかにも北条と土曽川ヤードの間に新たにコンベヤを設置するためのトンネルができると受け取った人もいます。『南信州』の8日付は、旧飯田市内と上郷あたりまでは7日の夕方の配達です。6日の座光寺の説明会の記事は1面トップでしたから、この人は、説明会の出席前に『南信州』の8日付を読んだ可能性があります。

 岐阜県瑞浪市の日吉トンネルの南垣外工区では残土運搬にベルトコンベヤーを使っていますが、高架式です。


(「東濃リニア通信」、2018年05月21日、「日本熊森協会岐阜支部が岐阜のリニア関連施設視察」より )

 こんなものができるとしたら、北条の住民は、余計に反発を強めるでしょう。『南信州』が、もし、それを考慮して、意図的に、こんな書き方をしたとすれば、『南信州』はニュースメディアとしては失格だと思います。マチガイであったとしても、事実として、住民の中には誤解している人がいるんです。

地理院地図にベルトコンベヤーの予想ルートを書き入れたのが下の図。田園(たぞの)神社にぶつかるよ。

 (2018/06/16 補足)地図の右上から中央に竜西一貫水路が記入されています。リニアの本線トンネルはこの水路とぶつかります。サイホンで交差させる計画だったはず。ベルトコンベヤの予想ルートもこの水路と交差します。交差する部分では水路はトンネルになっています。トンネルで交差させる余裕はないはず。リニアトンネルの内部の最大幅は約13m。シールドマシンの直径は約13m以上になるはず(円形断面で掘るので、馬蹄形断面に掘るNATMより残土の量は多くなるはず。高さでは1.3~1.7倍。)。それはともかく、約13mの高さが、新戸川、一貫水路、飯田線のすべてとぶつからずに確保できるかという所へ、もう一本トンネルが容易に掘れると『南信州新聞社』は考えているのです。




補足:2018/06/12

『南信州』は明白な誤報を訂正しない

 『南信州』の8日付け記事に関して以下のような質問を『南信州』にメールで問い合わせ、回答が来ました。

Subject: 8日、9日の1面記事について

南信州新聞社・担当者様

飯田リニアを考える会の事務局の春日と申します。

貴紙、8日、9日の1面に掲載の座光寺公民館と北条振興センターで行われたリニア関連の説明会の記事について質問です。

記事では、JR東海が、北条のシールドマシンの発進立坑から土曽川施工ヤードまでの間に約300メートルのトンネルを掘ってベルトコンベヤーを設置して残土を運び出すと説明したと書いてあります。両説明会とも参加して聞きましたが、JR東海はトンネルを掘るとは言っていません。点線で示しているのは、構造などがまだ検討中だからだと説明しています。点線はトンネルの意味ではないです。

信毎、中日もトンネルのことは書いていません。信毎の記事でベルコンの構造について質問した参加者がいたと書いてありますが、それは私自身です。瑞浪の南垣外の例を出してどんな構造になるのか示すべきだがと質問したもので、回答は瑞浪では高架の上にベルコンを設置しているが具体的なものは検討中というもので、トンネルを掘って設置するということであれば、そう言うはずですがなにも触れていません。貴紙の記事には事実誤認があると思います。

北条から参加された方で、たぶん8日の貴紙を読んで出席されたのでしょう、トンネルを掘ってベルコンを設置すると誤解されていた方がおります。JR東海に確かめて、紙面で目立つ場所に訂正記事を掲載された方が良いと思います。

6月11日

----------------------------------------------

春日 様

南信州新聞編集局です。

お問い合わせありがとうございます。

ベルトコンベヤーをトンネル構造にして土曽川の非常口までつなげるとするJR側の検討一案は 弊社の取材に基づく記載になります。

よろしくお願い致します。

南信州新聞社 編集局

 JR東海長野工事事務所に説明会でこのような説明をしたか確かめました。応対した水上さんという方、この方が説明会では質問に答えていました。答えは、「した」、「しない」のどちらかに決まっているのですが、なかなかはっきりしたことを言いません。それで説明の中で言ったのかと問うと言っていないと答えています。また、配布資料にそのことがかかれているかと問うと、書かれていないと答えました。つまり、JR東海は「ベルトコンベヤーをトンネル構造にして土曽川の非常口までつなげる」など一切説明していないのです。

 水上氏が言うには、7日夜の北条での説明会で、トンネルを掘ってベルコンを通すというようだが云々と質問をされた方がいて、その答えとして、具体的なことは検討中だと説明したといっていました。それは7日の夜のことであって、『南信州』の記事は6日の座光寺での説明会のことです。座光寺では、それに類した質問は出ていないし、JR東海もそんなことは一言も言っていません。

 ひとつ言えることは、JR東海はすべてについて明確なことを言わなくなってきている、特に最近それが目立つようです。つまり、最初の計画がアバウト過ぎた結果、計画が加速度的に遅れ始めてあわてているのではないか。15本のボーリング計画があるなら残り2本も済ませてから結論を出せばよいのに具体的なことはすべて検討中と言わざるを得ないような、中途半端な説明会を開く。あてにならない曖昧模糊とした情報だけを提示することで住民をゴマカシているのではないかと思います。水上君の答え方はそれだと思うよ。

 話はそれますが、このページを読んでくれている方で、リニアにいくらかでも期待を持っている方に言っおきますが、頭ごなしに言わせてもらいますが、リニアの技術は世界的には周回遅れの技術です。リニアの先を行ったのはドイツのトランスラピッド(上海リニア)でした。ドイツは超電導技術の採用は不適切と判断した結果トランスラピッドを開発しました。そのトランスラピッドも「先進国ドイツ」ではもはや過去の遺物に過ぎなくなっている。中国だって、上海リニアに以前ほどの熱心さはなくしている。ハイパーループはできっこない。リニアや浮上式鉄道が必要だと思っている人は、少し頭を冷やして大人になりなさいよ。

 さて、『南信州』の座光寺の説明会に関する記事は次のように書いています。

 JR東海は6日、飯田市座光寺地区で住民説明会を開き、トンネルの掘削工法を再検討しているリニア中央新幹線・風越山トンネルの東側区間(飯田市内)について、「地下水への影響が少ないシールド工法が適用可能」と伝えた。地元が懸念している発生土の搬出はベルトコンベヤーを使って従来計画の非常口まで運ぶ検討案を提示。発生土の搬出や運搬経路などについて地元と協議し、年度内にも「工法を確定させたい」とした。
・・・
JRは地元上郷北条地区の懸念を踏まえ、同非常口に向けて約300メートルのトンネルを掘り、ベルトコンベヤーで土を運ぶ案を提示。非常口計画地には施工ヤードを設け、搬出路はリニア関連道路として県が新設する座光寺上郷道路の利用も「県と協議しながら検討する」とした。

 JR東海は「提示」したと書いているのですから、説明会のなかでのことであって、『南信州』の記者に内緒で個別に話したことではないはずです。JR東海は説明の中では言っていないし、資料にも書いていないといっています。それは私も事実だと思います。『南信州』の記事のこの部分は明らかに誤報です。

 メールの回答を読んで、『南信州』に電話しました。座光寺の説明会の時にJR東海に直接取材して聞いたとのことでした。絶対に間違いはないのかと質すと、絶対に間違いはしません、ウソは書かないと言い張っていました。記事の文章を読めば、説明会の中でJR東海が説明したと書いているのですから、JR東海が『南信州』の記者に個人的に万一そういったとしても、それは明らかにウソを書いているのです。そしてそれを全く訂正しようともしない。恐らく北条地区の説明会を前に何らかの情報操作を目論んで書いたことなのでしょう。とんでもない新聞社です。というか、ジャーナリズムとしては、ほとんど幼稚園レベルなのかもしれません。飯田市とJR東海の御用クソ拭き新聞であることは間違いないですが。

 この記事は、よく読むとおかしなところはほかにもあります。

15地点でボーリング調査を実施し、地質や地下水位を確認。専門家も交えて検証した。

 JR東海は、15地点でのボーリング調査を計画して、13カ所が終わった時点での報告だと説明していました。やはり、シビアな内容については『南信州』の記事だけを参考にするのは極めて危険だと思いました。