更新:2019/08/11
翼賛政治は時代遅れ
大鹿村大河原で、リニアトンネル残土の運搬のため、国道152号線を迂回するルートについて、地権者の示す工事車両の通行時間などの条件について、JR東海が同意しないので仮橋ができない問題について、大鹿村議会が個人の地権者に対して、(1)地権者の意見を聞くため村議会との懇談をしたい、(2)代理人だけでなく地権者本人が、JR東海、大鹿村の3者同席の上で用地交渉の協議をすること、この2つをお願いする文書を、7月31日に手渡したそうです。
「リニア建設工事における迂回路用地交渉に関するお願い」
(下線、黒塗は「南信リニア通信」)
この土地は、リニアの本線や鉄道設備の用地ではないので、基本的にJR東海と地権者との交渉で決めるべきことです。地権者が首をタテにふらないなら、JR東海は地権者の条件を受け入れるか、工事計画を変更するしかないと思います。
(1)の調査までは許されるかも知れませんが、(2)については違法性があるように思えます。文書に「大鹿村議会議員全員の名において」とありますが、この文書について、議会内で異論がなかったのでしょうか? 文書ができるまでにどのような論議がなされたのか明らかにすべきだと思います。
文書に「、交渉の手順や条件の認識等で地権者と村、事業者との間に乖離があり、円滑な交渉ができていないことは、村議会としても当事者双方(三方)から聞き及んでいるところです。」とあります。つまり (1)は済んでいる。この文書の目的は、(2)の「地権者ご本人(代理人だけでなく)と、事業者であるJR東海、大鹿村の三者が同席の上で迂回路にかかる用地交渉の協議を行っていただくこと」にあると言えるのではないでしょうか。それから、(1)も村議全員で、地権者を吊るしあげにするんだと、受け取る人もいるかもしれません。代理人が前面に出ていることは、外部からは、地権者本人の意志と理解すべきです。いろいろと詮索するのはヤボです。
想定外
議会は、村や村長について、いろいろいうものだと思いますが、村民の一個人に、こうすべきというお願いを「議会議員全員の名において」するというのは異常です。議会の仕事ではないと思います。これは村の仕事です。
さて、迂回路の整備が完了しなくても、村民の迷惑を考えずに工事車両を運行させると、JR東海は2027年開業を目指して強引な態度を見せているのですが、それは明らかにJR東海の都合です。大鹿村の都合じゃありません。
村民が迷惑を受ける状況に村の議会として何かできることはないかと考えたとして、違法行為をしているわけでもない一村民に (2) のようなお願いをするのは、議会がリニア推進翼賛の立場に立っていると見なされても仕方ないと思います。「リニアより住民の暮らし」が最優先が大原則です。問題は、地権者と道路周辺の住民と村とJR東海の4者に関わる問題ですから、立場の弱い個人の地権者や住民ではなくて、強い立場のJR東海や村に矛先を向けるのが議会の務めではないかと思います。
村長と村議会議員は住民の直接選挙で選ばれます。村長は法の規定に基づいて場合によっては住民に命令を下すことができますが、住民が選んだ議会が直接に一個人の立場の住民に指図することは、本来あり得ない、想定外の不祥事ともいえると思います。このような文書は、本末転倒。大鹿村議会の存在意義を守るため、この文書は即刻に撤回すべきと思います。
リニアの現在の確認を
静岡県の大井川の問題が解決しない現状です。阿寺断層帯での崩落陥没事故、名城立坑の出水事故、残土置場がない問題など、工事の面でも、リニア計画の無謀さが明らかになりつつあります。リニア計画が本当に実現可能なものなのか見極める時期にあるのではないか。そんないま、このような文書を出すというのは、ちょっと感覚として外れてるんじゃないかとも言えます。
太平洋戦争について、当時の政府や軍部は国力の差から勝ち目はないとわかっていて開戦しました。今から考えれば、日米開戦の決定は無謀だったといえます。空襲の被害を減らすために、都市部では、防火帯を造るため多数の家屋を強制的に壊したそうです。たとえば、この時に建物の持ち主が壊さないでくれといったとします。しかし、世の中の動きというのは力が大きいので、当時そのような主張は誰も支持しなかったでしょう。
しかし、現在は戦前とは違うはずで、情報もその気になればある。基本的に自由な討論もできるはずです。民主主義社会であるからこそ、選択肢も多様です。JR東海が工事を一時中断するという選択肢もあるはずです。リニアが計画通りに進まないことで、JR東海が潰れたとしても、それはJR東海が無謀な計画を立てたからで、自業自得なのです。そんな企業は潰れた方が良いと思います。