更新:2019/09/12

「遠回りするしかない」

 静岡県の川勝知事は吉田町で開かれた"知事広聴「平太さんと語ろう」"でリニアルートの変更に言及しました。

 大井川の水が減る恐れがあることを理由に、県が着工を認めていないリニア新幹線について、川勝知事が「ルートを変更すべきだ」と発言しました。
 川勝知事:「リニアは賛成だけど、南アルプスはユネスコエコパークだから守らなければいけないので、両立させるには遠回りしかない」
 川勝知事は昨夜、吉田町で開かれた町民との意見交換会で、リニア工事で大井川の流量減少を心配する参加者の声に対しこのように述べました。
 6日に、JR東海が県の中間意見書への回答書を提出しましたが、知事は現状では水を全量を戻す技術がないことがわかったとしてルート変更の必要性に初めて言及しました。
 川勝知事:「(JRの回答は)全量回復する意図はわかるが、それを可能にする技術がないのが現状」(Yahooニュース=静岡朝日テレビ、12日)

 静岡の林克さんのフェイスブックの投稿。

「遠回りするしかない」
11日に吉田町で開かれた知事公聴で、大井川の流量減少問題を巡り「遠回りするしかない」とルート変更の必要性に言及した。
公聴のような正式な場でルート変更に言及したのは初めて。「リニアと南ア、両立するには遠回りするしかない」「現状の技術水準では水を戻せる状況ではないことははっきりしている」
JR東海の「全量戻さない」を受けた方針転換か。

以下、投稿に添付の新聞記事(多分、『中日』)

知事ルート、変更に言及
 リニア中央新幹線工事に伴う大井川の流量減少問題を巡り、川勝平太知事は11日に吉田町で開かれた知事公聴で「遠回りする以外ない」とルート変更の必要性に言及した。
 茶の振興策に関する住民との意見交換の中で「リニアには賛成。南アルプスは守らないといけない。両立するには遠回りする以外ないと思っている」とのべた。
 終了後の取材には、トンネル湧水の全量回復について「(現代の技術水準では)水を(全て)戻せる状況でないことははっきりしている」とした。

 国交省の交通政策審議会の中央新幹線小委員会の第4回(2010年6月4日)で当時の長野県の村井知事はルート提示から約10年ほどの時間をかけまして、県内の意見集約が行われまして、長野県にとりましては、最も多くの人が利用でき、地域経済の発展や観光振興にも寄与するのはBルートだというコンセンサスができ上がった(議事録の10~15ページ資料)と述べています。


 Bルートというのは山梨から諏訪を経て伊那谷を南下して飯田を通り中津川へ抜けるルート。これなら、静岡県は納得できるはず。また、全幹法の規定にも沿うものです。

第一条 この法律は、高速輸送体系の形成が国土の総合的かつ普遍的開発に果たす役割の重要性にかんがみ、新幹線鉄道による全国的な鉄道網の整備を図り、もつて国民経済の発展及び国民生活領域の拡大並びに地域の振興に資することを目的とする。
第三条 新幹線鉄道の路線は、全国的な幹線鉄道網を形成するに足るものであるとともに、全国の中核都市を有機的かつ効率的に連結するものであつて、第一条の目的を達成しうるものとする。(全国新幹線鉄道整備法)

 ただし、JR東海にとっては、困る。誰もトンネルを掘ろうとは思わない南アルプスにトンネルを掘るしかなかった本当の理由があると思います。それは、超電導リニアがカーブに弱いという技術的な制約。センスの良くないところがあるリニアの技術が無理に無理に重ねた上に、最後は、事前の十分な調査、国民的な合意をすっ飛ばさざるを得なくなって強引に着工したけれど、静岡県でつまづいたという恰好だと思います。


 Bルート上の赤い矢印は茅野市から諏訪市、岡谷市付近の十数キロ続く半径8000m程度のカーブ。青い矢印は飯田市内でほぼ90度方向を変えるカーブ。飯田市内のほうは、半径を8000mもとれません。超電導リニアはこれまでにこんなカーブを走る実験はしてきていません。飯田市内のほうは、品川駅を出たところのカーブ(半径900m)のように車輪走行でないと走れないカーブにしなくてはならないはず。

 つまり「遠回りもできない」ので、リニアは止めるしかない。