更新:2020/05/19
リニアができても、東京へ通勤・通学はできない
葛西敬之JR東海リニア対策本部長の関西経済連合会での講演、1988年10月
リニアを建設することは東京集中化を劇化させるのではないかという意見もありますが、そのようなことはないと考えています。たとえ100km圏からの通勤が可能になったとしても運賃は相当高くつきます。単に就労者が通勤するだけではなく家族の輸送も考えると、高い運賃を払ってなおかつ便利でない生活をせざるを得ないことになります。新幹線を使ってケーススタディを行いましたが、多少土地が安くてもそのほかの不便さ、コスト高をカバーするには至りません。
これをいったのは、JR東海の名誉会長だった葛西敬之さん。
むしろリニアができた場合、オフィスを大阪や名古屋に移し、その近辺にある宅地を活用しながら通勤するという形が、トータルとしてははるかにメリットが大きいのではないかと考えられます。
「リニアができたら東京に通勤通学できる」というのは、少なくとも、飯田近辺で言えば「名古屋に」なるはず。
1988年10月31日に関西経済団体連合会の会合で行われた葛西さんの講演の中のオコトバです。
- 北山敏和の鉄道いまむかし > リニアと高速鉄道 > 「葛西敬之」
その他にも、今から見て興味深いことを話しておられるので、ぜひ一読を。
- リニアは登坂能力が高いので山岳部のトンネルが不要???
- 運行制御は地上からの集中制御だから運行の省力化につながる
- 常電導方式の存在価値を認めている
- 無理をすれば、2000年から2001年に東京・大阪間で開業が可能
- 東海道新幹線は建設に踏み切った時点で未解決の問題が5割だったがリニアは1988年時点で8~9割が解決済み
東海道新幹線とリニアは一元的に経営されなければならない…全額を民間資金で行うことは難しい
トランスラピッドの実験線について、葛西さんは次のようにいっています。
トランスラピッドが有している実験線の直線部は12~13km程度なので、20㎞の実験線ができればドイツの実験線よりも相当高度な実験ができます。
ドイツ、エムスランドのトランスラピッドの実験線
トランスラピッドの実験線は全長31.5km。直線部分以外のところは、曲線=ループでした。だから、トランスラピッドは超電導リニアと違って開発段階で急なカーブを常に走行していた実績がある。葛西さんの話法はカーブ走行について上手く隠している。聞く人たちも心が浮ついてるから気にしない。
1987年12月にエムスランドの実験線を視察した時のエピソードが葛西さんの『飛躍への挑戦』に出ています。その時、案内をした国鉄時代からの技術者は、北山さんの解説によれば藤江恂治さんのようですね。