更新:2020/08/14
南アルプスにトンネルを掘らせたくないです。といわれても、そもそも超電導リニアはほとんど直線しか走れないので、ルート変更も無理。計画を止めるしかないように思います。
超電導リニアがほぼ直線しか走れない理由
まず確認すると、カーブでは、内側と外側で走る距離が違います。これは事実。
ガイドウェイパネルは、12m58㎝のまっすぐな板(パネル)にコイルを取り付けたもの。これも事実。個々のカーブの曲率に合わせて微妙に曲がったものを田舎の半分野外のような作業場(ガイドウェイ組立ヤード)でコンクリートで製造するのは無理ではないかと思います。
直線部分のガイドウェイの側壁パネルの並べ方
直線部分では並べ方は単純。
コイルが規則正しく並んでいる横を超電導磁石が通過することで支持力を得ます。いわば、規則正しいデコボコ道を走るのと同じです。これは、ある専門家の表現(※)。鉄のレールの上を鉄の車輪が転がっていくのとはずいぶん違いますね。
※ 中島洋さんの "超電導リニア開発裏話"
曲線部分(カーブ)のガイドウェイの側壁パネルの並べ方
パネルがまっすぐなのですから、こうするしかないですね。
ガイドウェイ側壁パネルの隙間が内側と外側で違うので、規則正しいデコボコに、もう一つの規則正しいデコボコが合成されて新たなデコボコができます。そして、さらに、それは左右で異なります。なんか、マズいですね。
これらの乱れが、許容範囲なら、ごまかせる範囲なら、なんとかなるのではないかという考え方。別に悪いことじゃなくて、技術にはそういう部分があるものです(※)。だから、カーブの半径がある程度小さくなると許容範囲を超えてしまうので、普通の鉄道で常識的なカーブは無理で、ほとんど直線しか走れないだろうということなのです。
※ 地球は丸くて球面なのに、建物の床は平面です。
ただし、車輪走行では車体をこすらない限りの急なカーブも走れます。だって、車輪のある乗り物はそうですね。カーブがさらにきつくなると、ガイドウェイの中に車体が半分近くはまっている超電導リニアでは車体が側壁に接触する可能性もありますね。
では、なぜ、トランスラピッドはより細かいカーブが曲がれるのか。超電導リニアは車体の重量を横方向で(側壁で)支えていますが、トランスラピッドは垂直方向で支えている。この違いによるものだろうと思います。また、軌道の幅のほうが車体の幅より狭いということも関係しているだろうと思います。
(2020/08/24 補足) 隣同士の磁石の間隔(ポールピッチ)が、超電導リニアが 1.35m に対して、トランスラピッドは 約30cm と短いことも関係しているかも。また、1両に4台の台車があって、車体全長で車体の重量を支えていることも関係しているかも。
もうひとつ、超電導リニアは磁気バネと車体の重量や遠心力とのいわば自然な釣り合いで車体を支持していますが、普通の電磁石を使っているトランスラピッドはガイドウェイとのギャップ(隙間)をエレクトロニクスを活用して常に制御しているという違いもあると思います。超電導磁石は電流を変化させて制御することができません。その点は永久磁石と同じです。
列車のように重いものを持ち上げて走らせようとするのは所詮無理という、素人的な考えに近いとは思います。しかし、超電導リニアの実験線がほぼ直線だけ、これは事実ですね、それに比べ、実験線に半径1㎞と半径1.7㎞のループもあったトランスラピッド、これも事実ですが、トランスラピッドのほうが、カーブ走行の実績を積んでいることは間違いないですね。
超電導磁石の信頼性が低いから
カーブというのは走る長さが長いほど列車の進行方向が大きく変わります。諏訪付近で伊那谷に入ろうとするなら、半径8000mのカーブなら、約15~16㎞程度走らないといけません。この途中でクエンチが起きたら大変です。特にカーブ外側の超電導磁石が不調になればすぐに側壁に接触してしまうでしょう。反対側の超電導磁石をオフにしてバランスをとるという対処(※)は間に合わないでしょう。
※ 大橋俊介博士の学位論文 "超電導磁気浮上車両の走行運動に関する研究" の "要旨"
超電導磁石の性能は上がったといわれますが、いまだにヘリウムを使わざるを得ないことからしても、まだまだ実用段階にないと思います。列車に使うなら、鉄の車輪や、少なくとも常電導の電磁石と同等の信頼性が必要だと思います。鉄道も常電導の磁気浮上式鉄道(トランスラピッドやリニモ)も普通にカーブを走っているのですよ。なぜそれができんのですか?
開発目的は、「速達のため最短距離を最高速で走る」だから、問題にならないじゃんでは済まないと思いますよ。カーブの走行性能は、たぶん乗り物としての安全性にも関係するでしょうから。
素人がこの程度の推測をしたっていいんじゃないですか?
Bルートは超電導リニアの技術的な許容範囲を超えてしまうだろうと思います。そうそう、甲府盆地の半径8㎞、8.5kmのS字カーブは櫛形山を避けるためだろうともいわれますが、かなり挑戦的な部分だろうと思います。
補足 2020/08/24 地上一次方式のトランスラピッドでも、コイルが鉄の軌道側に埋め込まれているので、軌道の規則正しい凸凹の問題はあるはずですが、磁極の間隔が短いし、制御の可能性もあるとおもいます。車上一次方式の名古屋のリニモでは、吸引する相手になるのはなめらかな鉄のレールです。