更新:2020/08/23、08/28 補足

高橋の水文学的方法について/坂本さんのFB投稿

坂本さんのフェイスブック投稿

 リニアと水問題について、よく話題にあがる高橋の水文学的方法について、フェイスブックの「リニアを考えよう!コミュニティー」に、坂本さんが投稿をしています。大変興味深い内容です。

 以下、転載しました。リンク先の場所など [注] で補足しました。


坂本 満
2020年8月23日日曜日 3:41

地下水位低下の議論のために。

資料A:2020年7月31日、「静岡県中央新幹線環境保全連絡会議 「地質構造・水資源専門部会」「生物多様性専門部会」合同会議の資料2の3ページ。水位低下についてのJR東海と静岡県による検討結果図です。

https://www.pref.shizuoka.jp/kankyou/documents/shiryou2.pdf

[注] 画像1:PDF該当ページ
ソース: 静岡県 > "リニア中央新幹線建設工事に伴う環境への影響に関する対応" の 「国土交通省・静岡県・JR東海による協議等の動き」の2020年7月31日、"国土交通省による有識者会議の状況等について、県の専門部会委員との情報共有・意見交換のため、「地質構造・水資源専門部会」及び「生物多様性専門部会」の合同会議を開催" の 資料2:2020 年7月 16 日提出資料から見たJR東海の水収支解析の疑問点

資料B:「環境影響評価書 静岡県版」本篇8-2-3 地下水の水質及び水位の項では、8-2-3-7から予測及び評価がされています。その中のページ8-2-3-9の図。トンネル工事による地下水への影響を検討するため、高橋の水文学的方法による予測検討範囲を示した図です。

https://company.jr-central.co.jp/chuoshinkansen/assessment/
document1408/shizuoka/_pdf/eis2_shizuokah08-02-03.pdf

[注] 画像2:PDF該当ページ
ソース:JR東海 > "中央新幹線(東京都・名古屋市間)環境影響評価書(平成26年8月)" > "静岡県" > "評価書本編" > "8-2-3 水環境 - 地下水の水質及び水位"

資料C:高橋の水文学的方法を記した高橋彦治氏本人の論文「トンネル湧水の特性と問題点]、(応用地質 6(1), 25-52, 1965)からの抜粋。写真4のページ40には地質学的考察(第4の方法)が記され、断層や破砕帯によって地下水流動に不連続性を与えることなどの留意点が示されています。また写真5のページ52には論文の総括で、高橋の水文学的方法の課題などが示されています。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjseg1960/6/1/6_1_25
/_pdf/-char/en

[注] 画像3画像4画像5 (いずれもPDF該当ページ)
ソース:高橋彦治、「トンネル湧水の特性と問題点」、『応用地質』6巻1号、25-52p

【注目されること】

その1:資料Aと資料Bとの比較では、JR東海の地下水位低下予測範囲が、環境影響評価書静岡県版に示した地下水流出範囲(評価書資料編、環5-2-3参照)の予測範囲を越えていること。

その2:高橋の水文学的手法で検討する場合には、断層や破砕帯などの考慮が必要であることを資料Cの高橋論文が述べていますが、高橋の水文学的手法の一部を活用しているJR東海の検討結果は断層などの影響が明瞭ではありません。

 一方、静岡県の検討結果は高橋氏の論文が指摘しているような断層の影響が明瞭に示されています。

その3:高橋の水文学的手法は、解析現場での判断を簡便に行える経験的な手法として現在でも有用な方法と思われます。

 しかし、高橋の手法の考え方を一部利用しているJR東海の地下水に関する検討方法は、せっかくの経験による重要な知見(高橋論文の総括)についてはあまり考慮されていないようで、そうしたことが静岡県との結果の違いに如実に現れているように思われます。


以下は、坂本さんによる 8月27日 の投稿です。(このリンク、ちゃんと表示されるかどうか?)


「大井川上流部での水収支解析の妥当性について」

-JR東海モデルは山梨実験線における減渇水の予測ができるか-

 2020/8/25の第5回リニア中央新幹線静岡工区 有識者会議の配付資料3-2、P22には沢等の流量予想結果(図26)が示されています。

[注] 資料3-2 当社が実施した水収支解析について(素案)

 この図を見て思ったのは、JR東海がリニア沿線で行っている水収支予測モデルの妥当性があるかどうかということでした。

 そこで思いつくのは、JR東海モデルの検証を、すでに河川の減渇水が生じている山梨実験線のデータを用いてその精度を確かめるのは一つの方法ではないでしょうか。

 環境影響評価書の資料編には、水資源の項で「実験線区間の水資源等への影響検討について」(静岡県版では資料編6-3-1、表6-3-1-1)のような河川の減渇水の状況が示されています。

[注] 環境影響評価書(静岡県):【環境影響評価の結果の概要並びに予測及び評価の結果】:6 水資源

 こうした状況を、実験線の工事前データを用いて水収支のJR東海モデルで検討した場合に、水涸れなどしている現状が予測されるかどうかです。

 実験線の現状に近づけるためには何が不足しているか、解析モデルの不十分な点を検討することも可能でしょう。