更新:2020/10/05
こんなニュースあり?
少し前のこと、2017年4月末に、リニアの南アルプストンネルの長野工区で掘削が始まった時のこと。NHKが奇妙なニュースを流しました。
リニア 県内初のトンネル掘削
04月27日 17時32分
リニア中央新幹線の工事で難所の一つとされる南アルプスを貫くトンネルの掘削が大鹿村で始まりました。
県内でのリニアのトンネルの掘削はこれが初めてです。
トンネルの掘削が始まったのはリニア中央新幹線の長野・静岡・山梨の3県にまたがる南アルプストンネルの県内の工区です。
このトンネルは全長25キロ、地表からの深さが長野と静岡の県境付近ではおよそ1400mと国内最大級で、リニアの工事の難所の一つとされています。
県内の8.4キロの工区では去年11月、大鹿村で起工式が行われ、JR東海は村内の3か所で資材や機材の置き場所の整備を進めてきました。
このうちの1か所で整備が終わり、JR東海は27日から県内初となるリニアのトンネルの掘削を始めました。
まず作業用のトンネルを掘り、順調に進めば来年の初め頃には将来リニアが通る本体部分のトンネルの試験掘削に取りかかりたいとしています。
一方、掘削によって村内では合わせて300万立方メートルの土砂が発生するとされていますが、最終的な処分地はまだ決まっておらず場所の選定が課題になっています。
(NHK、信州 NEWS WEB)
同じ事件を4月28日の『朝日・長野県版』は次のように伝えています。一部抜粋すると。
リニア中央新幹線の南アルプストンネル長野工区について、JR東海は27日、大鹿村の除山坑口で安全祈願式を行い、掘削を始めた。県内のリニア区間で最初のトンネル掘削工事。
長野工区(8.4キロ)は昨年11月に起工式が行われた。リニア本坑につながる作業用トンネル3カ所が大鹿村内で計画されている。…
JRが2月初めの掘削開始を見込んでいた村内の小渋川坑口(上蔵地区)は保安林の指定解除をめぐる行政手続き中で着手が延期されている。除山は保安林に指定されていない。
『日経新聞』4月29日は:
27日に掘削を始めたのは除山非常口で、長さは1.9キロメートル。…長野工区では3本の非常口トンネルを造る計画で、今回のトンネルはその最初の掘削工事となる。
『南信州』は、30日の1面のコラム「日言」が:
祝賀の昂揚感が萎えた気分である。10年後の開通を目指し、工事も本格的な段階にはいろうとするリニア中央新幹線。最大の難関工事である南アルプストンネルの長野工区の作業用トンネル除山坑口で27日掘削工事を始めた。だが、JR東海や工事に当たる業者が掘削開始を関係者に知らせたのは前日だった…
…この抜き打ち的な着手が、折角話し合いが軌道に乗ろうとしている折、躓きの要因にならなければと懸念される。反対派を刺激させ、賛成派をも戸惑わせては、今までの交渉が後退しかねない。…
3つの新聞記事に共通する点は、掘削が始まったのは除山(のぞきやま)坑口だったとはっきり書いていること。
NHKが「このうちの1か所で整備が終わり」といっているのは、実は上蔵地区の「小渋川斜坑」。コンクリ―トプラントや土砂ピットほかトンネル掘削に必要な設備の準備が整っていました。下の写真です。
小渋川斜坑ヤード。右にコンクリートプラント、左のこげ茶の建物が土砂ピット。
では、除山斜坑についても同じような準備ができていたかというと、掘削開始より約10日後の5月7日のようすが下の写真。川沿いに仮囲いはできていますが、コンクリートプラントも土砂ピットもまだできていませんでした。4月27日に儀式的にバックフォーで斜面をほんの少し削っただけで、その後、準備工事のために掘削は中断して、本格的な掘削を始めたのは、2017年11月1日(※)でした(※ 大鹿村 > "リニア中央新幹線情報 No.30")。
コンクリートプラントも土砂ピットも見えません。
仮囲いの内側はほぼ空っぽ。
NHKのニュースのこの部分:
県内の8.4キロの工区では去年11月、大鹿村で起工式が行われ、JR東海は村内の3か所で資材や機材の置き場所の整備を進めてきました。
このうちの1か所で整備が終わり、JR東海は27日から県内初となるリニアのトンネルの掘削を始めました。
からは、工事が計画通り順調に進んでいると誤解した人も多かったのではないかと思います。いつ、どこで、誰が、なぜ、何を、どのように、いくら(どの程度)のうち、意図的に「どこで」を完全に省いています。「どこ」でおきた出来事かかわからないような報道はすべきじゃないです。リニアにまつわるフェイクの一つだと思います。戦争中に大本営発表を流し続けたNHKだからこその所業だと思います。
NHKのニュースは最後のほうで:
(JR東海は)まず作業用のトンネルを掘り、順調に進めば来年の初め頃には将来リニアが通る本体部分のトンネルの試験掘削に取りかかりたいとしています
と、いっています。「来年の初め頃」とは、2018年の1月です。現在、除山斜坑はまだ先進坑の位置に達していないし、7月14日から、工事が中断している。小渋川斜坑が本坑位置に達したのが2019年4月5日、先進坑にとりかかったのが8月23日でした。掘削開始が2017年7月3日だった小渋川斜坑で見込みの約2.5倍の時間がかかっています。当時2027年開業を目指していたのですから、トンネルの工事期間は8年と考えていたはず。8年 の 2.5倍 は 20年。2037年にならないとトンネルは完成しない。トンネル工事業者さんが考えていたと思われる掘削期間10年なら、トンネルの完成は2042年。これからまだ22年後の気の遠くなるような話です。
おいおい、おかしいのではないかとの指摘に対するNHKの回答は以下のようなものでした。
いつもNHKの番組やニュースをご視聴いただき、ありがとうございます。お問い合わせの件につきましてご連絡いたします。
リニアのトンネル堀削が始まったのは上蔵にある小渋非常口(昨年11月に起工式のあった坑口)かどうか確認しましたところ小渋非常口ではなく、別の場所とのことでした。
以上よろしくお願いいたします。
今後とも、NHKをご支援いただきますようお願いいたします。
2017/05/01 17:26 NHK長野放送局