更新:2020/10/13、10/19 一部書き換えました、10/29 補足
ランブルストリップス
道路の端の白線やセンターラインのところがこんな感じになっているのを見たことがある方もいると思います。
センターラインの例
近寄って見ると、
等間隔で溝が掘ってあります。溝の間隔は30cm、幅が35㎝。
ランブルストリップス(切削型注意喚起舗装)と呼ぶそうです。この上にタイヤが乗ると、大きな音がして、車体が振動して、注意を促す仕組みです。わざわざ「規則正しい凸凹道」をつくっているのです。
山梨県立リニア見学センターにて。実物の写真(山梨実験線)。
超電導リニアの誘導反発方式では、浮上用コイルを多数並べるという構造に、どうしてもなってしまいます。コイルが並んだガイドウェイは「規則正しい凸凹道」のようなものです(※)。
※ "超電導リニア開発裏話 中島洋" p153左下、軽視されてきた問題は,力の絶対値は小さいが,繰り返し発生する振動力であった.この振動力は,一定の間隔で並んだ地上コイルが原因で,言うなれば超電導磁石が規則正しい凸凹道の上を走っているようなものである.その周波数は車両の速度に正確に比例して増加し,山梨実験線では500km/h走行時には309Hzになる.このため,この超電導磁石もしくは車両のどこかに,この309Hz以下の固有振動数があれば,加速中に大なり小なり共振現象を起すことになる.
一方では、不快な振動や騒音を発生させて注意を喚起する仕組みなのに、一方リニアでは、乗り心地を良くしなくてはならない。
超電導リニアの乗り心地、特に揺れの問題がいつまでたっても解決できない(※)のは、この辺に根本的な原因があるのではないかと思います。
※ 川辺 謙一さんの "夢のリニア中央新幹線、乗ってみてわかった「実現への不安」 まだ道のりは長そうだ"。その振動に、筆者は不安を覚えた。高速道路で、足回りの状態が悪い自動車を運転するときのように、小刻みな振動に、フワフワする不快な振動が伴っていたからだ。これでは、15年前の試作車と同様に、通路で立って歩くのは難しいだろう。
付け加えると、ランブルストリップスは、高速道路でもたぶん同じピッチなので、踏んだ時は、高速道路ではブーンという音だとおもいますが、一般道ではガタガタと車体が揺れる感じが強いと思うのです。スピードの差は3倍から2倍程度です。
下の図はトランスラピッドの車体側の浮上用の磁石とガイドウエイの関係を示したものです。
Electric Vehicles より。実物の写真1、実物の写真2 ("Transrapid - Promotional Film of the German Maglev Train (1985)" より)。
※ 正田英介ほか著『磁気浮上鉄道の技術』(オーム社、1992年9月2日、p181)
ちょっとわかりにくですが、図中「Tp」は車体側の浮上用コイルのピッチで25.8cmです。ガイドウェイ側の推進用コイルの巻き付けるための溝のピッチは8.6cmです。
トランスラピッドの車体側の浮上用の電磁石が吸引している相手は、推進用コイルが巻き付けてある鉄のレールです。凸凹についていうとすれば、推進用コイルを巻き付けるためにレールに刻んだ溝のピッチの8.6cmです。
超電導リニアもトランスラピッドの最高速度は約500キロ。凸凹の程度を考えると、スピードでは超電導リニアの方が約10倍遅いのと同じになりますね。ただし、全く方式が違うので、こういう比較はあまり意味があるとは思えませんが、ガイドウェイを設置する精度が同じ程度なら、トランスラピッドの方が揺れに対しては問題が少ないのではないかと思います。素人の考えですが。
ガイドウェイ側のコイルと車体側の磁石の関係について、トランスラピッドと超電導リニアを比べると、トランスラピッドの方が明らかにシンプルだと思います。さらに、とくにガイドウェイについては生産性も高いと思われます。よりシンプルな方式があったのに、より複雑で、信頼性も低い方式を、より長い時間をかけて開発してきていまだに完成で来ていないのが超電導リニアだといえます。
念のために付け加えると、そのトランスラピッドでさえ、ヨーロッパでは「過去の人」。高速鉄道の最高速度よりは環境重視の時代になっています。
関連ページ
補足 (2020/10/29)
車に注意喚起するため振動させる規則正しい凸凹道が、トンネルの中にありました。赤い部分が少し高くなっていて、時速50~60㎞程度でもガタガタと車が揺れます。