更新:2021/01/08、01/10 加筆
リニア新幹線と大平洋戦争
リニア計画の進め方(決定過程)や、実際建設が始まって計画の無謀さが明らかになりつつなる今日この頃。上手くいかない見通しがあるのに今後どうするのか、JR東海も国交省も沿線一都六県も関係自治体も考えていないようです。計画段階や決定過程、そして現在のようすは、太平洋戦争とにかよったところがあると思います。
そこで、こういう時代ですから、参考書じゃなくて、太平洋戦争についてちょっと復習するための動画を Youtube から集めてみました。
- [NHKスペシャル]
ドキュメント太平洋戦争 第1集 大日本帝国のアキレス腱 ~太平洋・シーレーン作戦~
海外から物資を輸送するために必要な船舶(商船)は戦争では敵に沈められる危険があります。日米開戦した場合に商戦が受ける被害の割合(損耗率)について海軍は確かな数字をもっていなかったそうです。そこで、第一次大戦中のイギリスの船舶の損耗率を示したそうです。その数字は実際とはかけ離れたものだったというエピソードが出てきます。JR東海は、南アルプストンネルの静岡工区でトンネルを掘った場合の水資源への影響について予測するのに、静岡県内ではなく山梨県内で得た岩の透水係数を使って計算したそうです。なんか旧海軍とやり方が似てますね。 - 御前会議
- あの戦争は何だったのか 日米開戦と東条英機
国力・工業力の差から負け戦になるとの声があったし、時の指導者たちも負ける可能性は分かっていたはず。それでも開戦をした。国民が多大の被害を受けるという考えがなかったように思えます。リニア計画でもそういう判断がされたのではないか。
企画院総裁は、戦争して南方の物資をとってくれば、物の問題は良くなると発言。国の指導者たちはこれで一気に開戦に動いたといわれます。リニア自体はペイしないけれど、リニアができれは飛行機の客が移動すること、新幹線と一体経営をするので問題ないというJR東海の説明と似ています。民放の『あの戦争は何だったのか』によれば、賀屋興宣大蔵大臣が戦争を仕掛けないでいた場合、アメリカが攻めてくるだろうかと問うたそうです。地震などの災害を受けた場合のバイパスになるというリニア建設の目的。地震で止まった場合の復旧まで一民間企業として自前で対処しなくてはならないものなのだろうかと問えるのではないか。 - 「日米開戦不可ナリ」|ストックホルム 小野寺大佐発至急電
失敗する、必要ないとの批判があったリニア。それでも建設することになった。 - ドキュメント太平洋戦争 第2集 敵を知らず己を知らず ~ガダルカナル~
JR東海や国交省は、時代の変化に気づいていない、経済社会の変化に気づいていない、住民が反発することに気づいていない、南アルプスの山の神という大きな敵の存在に気づいていない。また、頼りの自民党もガタガタだ。 - ドキュメント太平洋戦争 第3集 エレクトロニクスが戦(いくさ)を制す ~マリアナ・サイパン~
1960年代国鉄の技術陣は、磁気浮上について、電磁石の吸引力を電子回路で制御して磁気浮上を実現するのは困難と考えていて、アメリカで超電導磁石を利用した誘導反発方式が発案されると飛びついたという見方ができます。太平洋戦争中はまだ真空管の時代でしたが、アメリカは艦載の対空砲で機械的な時限装置ではなくてエレクトロニクスを応用したレーダー的な仕組みを利用した近接信管(VT信管)を使い始めました。1960年代になっても機械的な仕組み、磁石の反発力を利用した浮上にこだわったのは古いといわれても仕方ないのかなと思います。ドイツはエレクトロニクスを利用して浮上する基本原理を1935年頃に開発していました。それが上海のリニアモーターカー(トランスラピッド)につながっています。 - ドキュメント太平洋戦争 第4集 責任なき戦場 ~ビルマ・インパール~
- 2020 NHKスペシャル | 戦慄の記録-インパール 前編
2020 NHKスペシャル | 戦慄の記録-インパール 後編
インパール作戦はリニアに関連してよく引き合いに出されますね。補給を無視した闘いは、コロナ禍や豪雨災害や地震のようなあり得ることを想定外においた、都合の良い材料ばかり集めて考えているJR東海の姿勢に似ています。静岡工区は毎年豪雨の度に工事がとまる可能性があります。工事現場への補給路がたたれます。程度の差こそあっても長野工区も同じです。工期が伸びることで、コロナ禍で新幹線の利用者激減などという事態も出てきました。あり得る不利な状況を考えに入れず、2027年開業を目指すという非常にタイトなスケジュールではじめてしまったことも、雨季に入る前までに、2週間で決着をつけるとして始まったインパール作戦に似ています。 - 台湾沖航空戦
大本営発表はウソを報じている段階から希望的観測を事実と誤認する段階にまでになりました。昨年12月14日の長野県内関係市町村長とJR東海の意見交換会での宇野副社長は、最新のトンネル掘削技術なら1か月に100mを掘削できると言われるので、西俣斜坑からの6500mを5年5か月、ヤード整備の残り部分で3か月、ガイドウェイの設置と試運転に2年として7年8か月あれば静岡工区の工事はできる、だから6月に静岡で着工出来たら2027年の開業に間に合ったはずなのに許可されなかったので2027年開業が難しくなったと発言。南アルプストンネルは静岡工区と隣り合わせの長野工区で掘削がもう3年も続いています。当初1か月58m程度掘れる見込みで始まったのですが、実際にはこの3年間で平均では1か月に40m程度しか掘れていない。JR東海は、そういう現実を無視した発言をするようになってきています。 - ドキュメント太平洋戦争 第5集 踏みにじられた南の島 ~レイテ・フィリピン~
- ドキュメント太平洋戦争 第6集(最終回) 一億玉砕への道 ~日ソ終戦工作~
さっさと負けを認めればよかったのに、ぐずぐずしている間に、沖縄戦、2度の原爆投下、さらにソ連参戦まで行ってやっと敗戦を認める事態になり、多数の犠牲を出しました。サイパンを取られた時点でもう敗戦を認めてよかったはず。いや、ミッドウェイ海戦で負けた時でもと…、そもそも20倍の工業生産力をもつアメリカを含めた連合国とことを構えたのですから、犠牲や被害の少ないうちに白旗を挙げればよかったはずです。
- ミッドウェー海戦 敗北が語る日本の弱点
ミッドウェイ作戦は米軍に作戦計画が読まれていました。「AF」という記号がどの場所であるか確かめるために、米軍はミッドウェイでは飲料水が不足しているという偽情報を発しました。すると日本軍の「AF」では水が不足しているという内容の電文が傍受できたので、「AF」がミッドウェイ島とわかったといエピソードがあります。この動画には詳しく出てこないと思いますが。日本軍もJR東海も「水」の問題でアウトになったといえそうです。
日本軍は情報軽視の作戦重視だった! 情報は作戦について軍上層部の裁可を得るための説明材料とするに過ぎなかった! - 石田勇治 東京大学大学院教授 「ヒトラーとは何者だったのか」(日本記者クラブ主催の講演会)
ナチスを支え、戦争を支え、またリニアを支える、共通するものはなにか?
なお、最後と『あの戦争…』以外は全部NHKが製作、放送したものです。NHKは太平洋戦争に大いに協力をしました。これらの映像作品はNHKのホームページで誰でもいつでも見れるようにしておくことはNHKの責務だと思います。
リニアの決まってきた様子など考えると、こういう公共事業というのは戦争みたいなものだと、感想を漏らした方がいました。リニアで移転対象になっている方です。計画の決定過程で、何の相談もなかった、召集令状と同じだと。
なお、安倍・菅政権のこの約1年の新型コロナ感染への対応も似たところがあると思います。 ⇒ 『デモクラシータイムス』"コロナオーバーシュートに立ち向かう! 児玉龍彦×金子勝【新型コロナと闘う その先の世界へ】20210107"