更新:2021/06/25、補足 2021/07/11

第20回大鹿村リニア連絡協議会

 6月24日夜7時から、大鹿交流センターで大鹿村リニア連絡協議会の第20回が行われました。JR東海、長野県、中電、高森町が出席。年度最初の会議ということで、連絡協議会の会長の選出が行われ、自治会長会をという声が委員からあり前年度と同じ方が会長として選出されました。事前に話は決まっていた感じですが、これはこういう会ではよくあること。

 会議の冒頭、JR東海の古谷長野県担当部長は中間駅部分の工事契約が24日にできたと説明していました。

小渋線の改良工事と半の沢の残土盛土

 小渋線の道路改良工事については、8月末に完了の予定がいくらか遅れるという話。発泡ウレタンを用いた軽量盛土を支える鋼材を谷側に建てる作業が斜面の地質の状況が悪く手間取ったようです。

 現在の橋のかわりに半の沢をトンネル残土を埋め立て、その盛土の上に道路を造る計画については、盛土の一番下の部分について「セメントを混ぜた固い土」を使うというのですが、JR東海は、準備工事の段階でその「セメントを混ぜた固い土」について「セメントの混ぜ方を変えた数パターンの盛土を造成し、強度等の確認を行い」、「必要な強度等の確認のできた試験盛り土は本体盛土の一部として活用」するといっています。

 これは、この工法はすでに施工例があって、その土地の地質状況や盛土に使う土の状態に適した「セメントの混ぜ方」を調べるために普通に行う作業なのか、ほとんど初めてのことなので試験をやってみるということなのか。後者であれば、半の沢の埋め立ては実験台ということになりますね。強度が確認できない試験盛り土は規模は小さいとしてもどうするのかということも出てきます。

 半の沢は現在水が流れているので、盛り土の表面に幅2m、深さ1.8mの水路を造り、普通の土を用いた盛土部分の水位上昇を防ぐために集水井戸と集めた水を排水する地下排水管を設置するとしています。また、沢の上流側には土石流対策のため新たにスリット式のある砂防堰堤を設置する予定。この盛土構造や砂防堰堤については、JR東海の費用で県が設置した専門家の委員会がOKを出しています。大丈夫かな?

 今ある橋を撤去するために、橋の東側(小渋川側)に迂回路を設置するようです。この期間に土石流が来ると大変な事になりそうな感じがします。

 埋め立てに使う残土は、県道の改良工事の一環の西下トンネルと東山トンネルの残土、合計約20万立米と大鹿村内のリニアのトンネルの残土33万立米を用いる計画で、県道トンネルの残土は、盛土する沢の、小渋川を挟んで対岸に積み上げてあります。出水する時期をさけて、川をジャブジャブとダンプカーで渡って運ぶそうです。確かに、積み上げるときもそうやっていました。それはそれでいいのですが、工事の計画が、思うように進まなくなる原因になる可能性もあると思います。まあ、ここまで来たならゆっくりやれよと言いたいですが、工事の計画の進み方の見通しが立たないことが、地元の住民にとっては心配になるはずです。

半の沢埋め立ての工事車両の運行

工事の予定

 完成後に、この盛土の川側の斜面には、河川敷(川端)の管理道路に接続するスイッチバック式の車道が付きます。残土運搬の車をこの道路に回すことを強く求めるとの声が観光協会代表の委員から出ました。明確な返答はなかったと思います。関連して、土曜日には工事を休んで欲しいという要望も出ましたが、静岡県以外の地域の工事のペースは緩めることはできないので、すべての土曜日を休工にすることはできないとJR東海の大鹿分室長が答えました。

長野県内の工事も遅れている

 静岡県の問題は別として、大鹿村の中の工事も遅れているのではないかという指摘もあり、古谷長野県担当部長は遅れているとして、今後の残土運搬車両の運行数の推移は、当面は、小渋川斜坑と青木川斜坑の2つからの残土が運ばれるが、青木川斜坑の残土は深ケ沢へ持っていっているので、突然に台数が増えることはない。小渋川斜坑の先の先進坑が釜沢斜坑とつながると、釜沢地区の残土が持ち出せるので、その時に増えるが、つながる時期がまだ分からないので、その時期がわかれば説明できると思うと答えていました。

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[ 拡大 ] 「この間の工事ができると」ということは「できないと」大変だという意味でもあるわけです。

 静岡県知事選挙の結果に関連して、議会代表委員から、開業の時期がはっきりしないし、ルート変更という話も出ている。長野県内で工事を進めても無駄になる部分も出てくると思うという指摘がありました。

 古谷部長は、開業時期を示す段階ではないと思うが、長野県内の工事のペースは落とさないつもりとし、ルート変更については、すでに各地で工事が始まっており、また地権者等との話し合いのできた部分もあるので、ルート変更はないと答えています。

 この理屈は、もう10年近く中国に軍を送って戦ってきた、資源を確保するためにアメリカと開戦するのはやむを得ないと、始めた太平洋戦争と似た理屈です。目的が不適切または不明確で、そして上手く行きそうに無い計画を続ける時の理由です。さっさとやめた方が損害が少ないはずなのに。

 静岡工区の工事期間は着工後は何年かかるのか、また長野工区の完成時期はとの質問に、古谷部長は、去年6月に金子社長は、静岡県があの時点で着工を認めたとすれば、また山の地質が良ければ約7年くらいで、順調に行って(*)それくらいでできると説明していると答え、長野工区は頑張っており、小渋斜坑先の先進坑と釜沢斜坑がつながった時点で見通しが着くと説明しました。結局、先進坑のこの区間がカギなのだと思います。

 さらに、南アルプスで静岡工区を約7年で工事をするというのは厳しいのではないか、現在掘削中の先進坑の地質の状況もまだ悪いのではないかとの指摘に、古谷部長は、3か月前よりは若干状況はよくなっており、年内に釜沢斜坑と接続できればという目標だと答えています。

 金子社長の約7年(正確には7年8か月)という数字は1か月に100m掘削できればという前提です。南アルプストンネルの本坑の先進坑部分について、山梨工区では平均で1か月に約41m、小渋川斜坑先の先進坑で平均で約36m程度が現実で、最近1年間では1か月あたり約27m程度。昨年6月末からの約3か月と12月上旬から今年3月下旬にかけての2つ期間は掘削が進まなかったのです。この3か月は1か月あたり約53m掘ったようです。1日当たりの残土の量は約106立米。ダンプ約27台分。高森の計画が予定どうりに行くのかどうか…。古谷さんの「3か月前よりは若干状況はよくなっており」というコトバがビミョー。

 3~4年前に比べるとJR東海さんは、なんとなく元気がない印象です。

各トンネルの掘削の進み具合

 トンネルの坑口別の工事の進み具合は以下のとおり。

 釜沢地区の除山斜坑そばの残土仮置き場を拡張をするという説明について、現在資材置き場になっているが拡張の必要があるのかという指摘がありました。JR東海は、元は要対策土を置くつもりで、残土を三正坊に移し、空いているので現在は資材を置いている。行政手続きの終了後拡張をすると答えています。また、釜沢地区で夜間の掘削が始まるので、上蔵の福徳寺そばで車両台数が増えると説明(大鹿村中心部から釜沢地区へ行くには上蔵集落を通ります)。

小渋線の工事車両運行台数と大鹿村村内の運行台数 (台数は往復)

 伊那市西箕輪の工業団地造成に28万立米を運ぶ計画があって、ルート上の松川町で問題になっています。説明資料の工事車両台数の推移に、伊那市へ運ぶ分について記載がないとの指摘に、JR東海は、前回の協議会で計画ができたら説明するといったが、まだ計画ができていないが、10月以降になると思うので次回9月の連絡協議会で説明すると答えています。

 観光に影響があると予想される場合には事前に相談をしてほしいという要望が、観光協会代表から出ました。

 長野県から青木川斜坑の東(下流側)にある下榑渡橋(しもくれおどばし)の架け替え工事について説明がありました。

国道152号線改良・下榑渡橋

ブナの木は切らない

 豊丘村上佐原から大鹿村の小渋川斜坑ヤード西側に隣接して計画のあるJR東海の変電所(電力変換所=インバーター設備)に送電する高圧送電線の鉄塔は、全体で30基で大鹿村内は9基。竜西の高森町などでは9基ほどの鉄塔が見えていますが、大鹿村内では鉄塔本体の工事は始まっていません。準備工事は行われているようです。

送電線工事の状況

 中電からは、大西山の東側にあるブナの古木については、工事をやや変更することで、伐採しないで済むようにしたとの説明がありました。委員から、伐採しない決定に感謝するが、せっかく残していただいたブナの木のためと、観音ナギなど崩れやすい部分もあるので、裸地になっている部分の早期の植生の復旧をしてほしいとの発言がありました。

配電ルートの変更
図面にはのっていないですが、付近には大鹿発電所の高圧線もあったはずです。

 中電は、JR東海の変電所の敷地内にある2本の配電線の電柱を撤去するため、現在の山の斜面を登るルートを道路沿いに変更するなどの計画の説明がありました。景観への配慮をとの声もありました。

高森町の産業用地造成への残土搬出

高森町の工事内容についてはこちら

 長野県から、喬木村伊久間の事業所の移転代替地への残土運搬は3月までに1日あたり往復50台運んで完了、飯田市の住宅の移転代替地へは1日当たり往復72台で6月末までに完了の予定との報告の後、高森町の産業課から下市田河原の「産業用地整備事業」について説明がありました。用地造成に「実績のある」大鹿のトンネル残土を活用させていただくといっています。何の実績なのか、地震が来ないとホントのところは分からないのですが、トンネル残土(岩くず)の方が地震のときに液状化を起こしにくいと飯田市や高森町はいっています。高森の場合、すでに造成した3区画は、液状化しやすい松川ダムの堆砂を使っています。一つの区画にはすでにプレス工場ができているのですが、今後、なんだ不幸へじゃないかという問題がおきそうです。それはともかく、この事業は高森町の事業なのだから、工事計画が時間的にきびしいJR東海さんとは違って、土曜日の休工はできるはずではないか、ダンプの運行台数を減らすことを考えて欲しいという声が委員から出ました。

 高森町は、運搬車両台数の平準化のために土曜日も工事を行うが、特定の時期については調整するつもりと答えましたが、平準化するなら工事期間をずっと長くして、運行再数を極端に言えば1日往復で10台にすれば、運搬ルート周辺の住民の負担は相当に減るわけですから、高森町の説明は意味が不明といえます。大鹿村側では観光客の来訪を考えてなのですが、高森町の現場も、県立自然公園とのアクセスポイントなのですから、土曜日の休工は望ましいと思います。高森町の現場周辺では、7月の造成工事開始までに、絶対に解決すべき問題があって、騒音問題については、すでに被害が出ている状況です。

関連ページ:下市田ガイドウェイヤード説明会、6月7日(出砂原地区館)

 トンネル工事を直接行っている鹿島JV(共同企業体)と飛島JVの関係者の宿舎入居者数とか、JV宿舎への村内農産物の納入実績などの報告がありました。

 最後に、委員から、協議会について、住民側の意見の反映ができておらず、住民側は受け身のままだから、設置要綱にしたがって住民の声が工事計画に反映されるような協議会運営を求めるという発言がありました。村内の観光関係の業者はコロナ感染拡大で大変苦労している上にリニアの工事がある。工事関係者の方々へ、せっかく大鹿で工事をやっているのだから、ご家族等の大鹿村への小旅行などでの、村内施設の利用をという提案もありました。

 次回は、9月27日ではじまる週のいずれかの日。21時15分終了。傍聴者は8名、報道4社。

 事業者側の出席者はこんなかんじなのですが、実際にトンネルの掘削をしている、鹿島JV と 飛島JV の人は何も話をしません。すべてJR東海の職員が説明をしていました。まあ、そういうものかなとも思いますが、直接現場で苦労されていてお疲れだろうに、話をされないのなら無理に出席していただかなくても良いのにと思います。


補足:2021/07/11

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