更新:2021/07/07、07/10 補足、07/11 追加
大鹿村のリニアのトンネル工事について
大鹿村では、南アルプストンネルと伊那山地トンネルの工事が行われています。関連する数字を整理してみました。あっちこっち数字を探すのが大変なのでまとめたもので、わたしの覚えのためということが主目的ですので訳の分からない部分があると思います。
斜坑口(非常口)は、南アルプストンネルが小渋川、除山、釜沢の3つ、伊那山地トンネルが青木川の1つ。小渋川と青木川については大型ダンプが通行できる道路がそばにあるので残土の村外へ持ち出すことは比較的容易です。除山斜坑口と釜沢斜坑口は釜沢地区にあって、村中心部との道路状況が悪いため、トンネル残土を地区外や村外に持ち出せません。そこでJR東海は、小渋川斜坑口と釜沢斜坑口の間の先進坑をつないで釜沢地区からの残土の運び出しに使う計画をしています。
もくじ
○南アルプストンネル(長野工区)
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○坑口ごとの掘削のペース
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○ 南アルプストンネルの掘削ペースの表とトンネルの略図のPDF (2021年7月版)
南アルプストンネル(長野工区)
長野工区の本坑の延長は8.4km(参考ファイル(A) 1)。
[ 拡大 ] 参考ファイル(A)の1 より。mm単位は図を物差しで計った数字。1mmあたりの実際の長さを計算して出したのが青色の数字。青色の数字は本坑部分の長さで合計は8398mで、JR東海の資料の本坑の延長8.4㎞とほぼ同じになる。「表・各坑道の断面積、長さ、体積と体積の合計」で「鳶ヶ巣…」の266mは、青数字1866から赤数字1600mを引いたもので、小渋川斜坑と本坑の交点から小渋川橋梁までの長さ。
伊那山地トンネル(青木川工区)
[ 拡大 ] 参考ファイル(A)の2 より。斜坑の長さは文中から。
坑口ごとの残土の発生量
数字については、「トラック運搬量を想定し、掘削土をほぐした後の膨張量を加算した」とJR東海は説明していますが、一定の倍率を掛け算したのと同じ意味だと思います。A(除山)、B(釜沢)、D(小渋川)、G(青木川)。釜沢地区の A、Bは合計。(参考ファイル(B)より)
トンネル残土の処分先
大鹿村内で恒久的に残土を処分する場所は:
- 旧荒川荘跡(釜沢地区) 容積約30000立米 (面積約4400平米、最大盛土高約15m) 隣接する県道の拡幅改良にも残土を使用(土量は不明)
- ろくべん館前公共用地造成 容積約5000立米
- 村総合グラウンド嵩上げ工事 容積約10万立米
- 深ケ沢(発生土置き場・青木川) 容積約7万立米 (面積13000平米、盛土部分約9000平米、最大盛土高約14m)
仮置き場:(釜沢地区合計約156,000立米)
- 仮置き場A(釜沢地区、除山斜坑そば) 約39,000立米 (面積約6500平米、最大盛土高18m)
- 仮置き場B(釜沢地区、三正坊) 約117,000立米 (面積約17200平米、最大盛土高約17m)
- 仮置き場E(小渋川斜坑そば、変電所予定地) 約150,000立米 (面積約20000平米、最大盛土高約15m)
- (仮置き場C、D(釜沢地区) 具体化していない)
- (仮置き場H 青木川斜坑ヤード内)
- (仮置き場F、G Fは総合グランド、Gはろくべん館前)
JR東海の環境調査報告の2020年度版
「令和2年度における環境調査の結果等について 令和3年6月」(PDF、57.6MB、全423ページ)のp415からp421の、「参考資料2:事業の実施状況」に、「トンネルの施工状況」とか「トンネル湧水の状況」、「建設発生土の搬出先と土量(p420)」など興味深い資料があります。ニュースでは「トンネル工事での湧水量も初めて報告」(『中日』6月30日)、「非常口におけるトンネル湧水量も初めて公表」(『信毎』6月29日)と報じられていましたが、報告書では「トンネル湧水等には、トンネル湧水のほか、工事排水、雨水を含む」という注がついています。湧水量の変化を示すグラフのタイトルは、「○○非常口工事施工ヤードのトンネル湧水量等の状況」です。
各坑道の断面積、長さ、体積と体積の合計
表・各坑道の断面積、長さ、体積と体積の合計
トンネル | 掘削断面積(平米) | 全長(m) | 体積(立米) |
小渋川斜坑 | 80 | 1150 | 92000 |
小渋川先進坑 | 35 | 1600 | 56000 |
小渋川本坑 | 100 | 1600 | 160000 |
鳶ヶ巣先進坑 | 35 | 266 | 9310 |
鳶ヶ巣本坑 | 100 | 266 | 26600 |
除山斜坑 | 80 | 1870 | 149600 |
除山先進坑 | 35 | 5090 | 178150 |
除山本坑 | 100 | 5090 | 509000 |
釜沢斜坑 | 80 | 350 | 28000 |
釜沢先進坑 | 35 | 1442 | 50470 |
釜沢本坑 | 100 | 1442 | 144200 |
青木川斜坑 | 80 | 600 | 48000 |
青木川先進坑 | 35 | 3600 | 126000 |
青木川本坑 | 100 | 3600 | 360000 |
体積合計 | 1937330 |
○ 斜坑、先進坑、本坑の掘削断面積は下の図の数字を使用しました。
静岡県の大井川の水問題で国交省が設置した有識者会議の「第11回リニア中央新幹線静岡工区 有識者会議 配布資料」の「【資料2(別冊)】別冊データ(JR東海資料)」の「1 各トンネルの掘削断面」より
完成後の本坑の断面積は74平米。斜坑については報道では、おそらく完成後の断面積として約55平米とか高さ何m幅何mなど(*)書かれていますが、残土の処理問題とトンネル工事のペースを考える場合は、掘削断面積がわかれば十分だと思います。
* たとえば、『南信州』2017年6月24日 "「小渋川非常口」3日から 大鹿村のリニア南アトンネル掘削"、2017年8月23日 "JR東海が小渋川非常口で発破掘削開始を発表"。
トンネル残土の体積の変化
トンネル残土は掘る前に比べ掘り出したものはかさが増えます。「土量計算の考え方」にどの程度増えるかの数値が示されています。大鹿村内について、環境影響評価書資料編によれば、斜坑A、B、D、G の発生土量の合計は約3000,000立米。トンネルの坑道の体積の合計で割ると約1.55 (1.54852296717647 を少数点以下第2位で四捨五入) になります。JR東海はかさが増える比率を 約1.55 として計算したと思われます。
坑口ごとの掘削のペース
大鹿村リニア連絡協議会へのJR東海の報告(参考ファイル(D))をもとに坑口ごとの掘削のペースを調べてみました。掘削の開始日、完了日以外は、連絡協議会の開催日を各期間の始めと終りにしました。期間内に掘削した距離を、期間の日数で割って30をかけています。稼働日、休工日も含め、1か月あたりにどれくらいかという数字です。
小渋川・先進坑
小渋川斜坑の先の先進坑(全長1600m)は、2019年8月23日に掘削開始、2021年6月24日間での671日で800mを掘削。平均で、1日1.19m、1か月あたり36mになります。ざっと1年と10カ月で半分掘ったので釜沢斜坑とつながるまでにあと1年と10カ月かかる可能性もあります。
今年の6月24日まで1年については、の期間は平均で1日0.88m、1か月あたり約26m程度になっています。
年月日 | 掘削距離 | 前回との差 | 期間日数 | 1日当たり | 1か月あたり |
---|---|---|---|---|---|
2021-0624 | 800m | 160m | 92日 | 1.74m | 52m |
2021-0324 | 640m | 0m | 103日 | 0m | 0m |
2020-1211 | 640m | 160m | 73日 | 2.19m | 66m |
2020-0929 | 480m | 0m | 97日 | 0m | 0m |
2020-0624 | 480m | 160m | 91日 | 1.76m | 53m |
2020-0325 | 320m | 160m | 98日 | 1.63m | 49m |
2019-1218 | 160m | 160m | 117日 | 1.37m | 41m |
2019-0823 | 0m |
小渋川斜坑
小渋川斜坑(全長1150m)は2017年7月3日に掘削開始。掘削完了までの期間は 641日 なので、平均で、1月あたり53.8mのペース。
年月日 | 掘削距離 | 前回との差 | 期間日数 | 1日当たり | 1か月あたり |
---|---|---|---|---|---|
2019-0405 | 1150m | 400m | 196日 | 2.04m | 61m |
2018-0921 | 750m | 150m | 85日 | 1.76m | 53m |
2018-0628 | 600m | 100m | 91日 | 1.10m | 33m |
2018-0329 | 500m | 150m | 98日 | 1.53m | 46m |
2017-1221 | 350m | 350m | 171日 | 2.05m | 61m |
2017-0703 | 0m |
除山斜坑
除山斜坑(全長1870m)は、2017年4月27日に掘削が開始されましたが、これは形だけで、実際に掘削を開始したのは2017年11月1日です。
除山斜坑(1870m)とその先の先進坑の静岡工区との境まで(5090m)のが長野工区で一番掘削する距離が長い部分で6960mあります。単純計算でこの距離を10年で掘削するには1か月あたり58m掘らなくてはなりません。
2017年11月1日から2021年6月24日までの、1331日で1309mを掘削しているので全期間平均では、1日0.98m、1か月当り約30mのペースです。2020年の7月豪雨の影響で2020年7月14日頃から2021年1月19日ころまで作業ができなかった日数189日を除いた1142日では、1日1.15m、1か月に34mです。1月19日に再開後、全く掘削が進んでいないというのは何なんでしょうか。被災の影響のあった時期を入れてこのほぼ1年進んでいないようです。
年月日 | 掘削距離 | 前回との差 | 期間日数 | 1日当たり | 1か月あたり |
---|---|---|---|---|---|
2021-0624 | 1309m | 0m | 92日 | 0m | 0m |
2021-0324 | 1309m | 0m | 64日 | 0m | 0m |
2021-0119 | 1309m* | 0m | 39日 | 0m | 0m |
2020-1211 | 1309m* | 0m | 73日 | 0m | 0m |
2020-0929 | 1309m* | 0m | 97日 | 0m | 0m |
2020-0624 | 1309m | 187m | 91日 | 2.05 | 62m |
2020-0325 | 1122m** | 0m | 98日 | 0m | 0m |
2019-1218 | 1122m** | 187m | 79日 | 2.37m | 71m |
2019-0930 | 935m** | 0m | 97日 | 0m | 0m |
2019-0625 | 935m** | 115m | 90日 | 1.84n | 55m |
x2019-0327 | 820m(1) | 170m | 97日 | 1.75m | 53m |
x2018-1220 | 650m(2) | 200m | 105日 | 1.90m | 57m |
x2018-0906 | 450m(3) | 180m | 70日 | 2.57m | 77m |
2018-0628 | 270m | 160m | 91日 | 1.76m | 53m |
2018-0329 | 110m | 110m | 148日(4) | 0.74m | 22m |
(x2017-1221) | |||||
2017-1101 | 実質的掘 削開始日 | ||||
2017-0427 | 掘削開始 |
x は大鹿村リニア情報に掘削した距離の記載なし。
(1)2019年3月29日付『信毎』、『南信州』による
(2)2018年12月22日付『南信州』による
(3)2018年10月5日付、ブログ『「美しい村」の議員日記』による
(4)2011年11月1日からの日数
*、** は、「全長1850mの約何割」という報告、「全長の約何割」について、全長1870m×割合で計算した。
釜沢斜坑
釜沢斜坑(全長350m)は2020年3月3日に掘削を開始。6月24日までの全期間の1月平均で約15mのペース、2020年の7月豪雨のあと休工していた189日を差し引くと約25mのペース。
年月日 | 掘削距離 | 前回との差 | 期間日数 | 1日当たり | 1か月あたり |
---|---|---|---|---|---|
2021-0624 | 245m | 105m | 92日 | 1.14m | 34m |
2021-0324* | 140m | 70m | 273日 (84日) | 0.26m (0.83m) | 8m (25m) |
x2020-1211 | |||||
x2020-0929 | |||||
2020-0624 | 70m | 70m | 113日 | 0.62m | 19m |
2020-0303 | 0m | | | | |
x は大鹿村リニア情報に掘削した距離の記載なし。
* 2020年6月24日から期間は273日ですが被災で休工した189日を差し引いたのが()内の数字。
青木川斜坑
青木川斜坑(全長600m)は2020年7月17日から掘削開始。6月24日までの342日間の平均で1月あたり42mのペース。
年月日 | 掘削距離 | 前回との差 | 期間日数 | 1日当たり | 1か月あたり |
---|---|---|---|---|---|
2021-0624 | 480m | 180m | 92日 | 1.96m | 59m |
2021-0324 | 300m | 120m | 103日 | 1.17m | 35m |
2020-1211 | 180m | 180m | 147日 | 1.22m | 37m |
2020-0717 | 0m | x | x | x | x |
山梨工区の場合
南アルプストンネルで現在掘削しているのは、長野工区と山梨工区です。参考に、山梨工区については、5月の時点で、広河原斜坑が1か月当り約75m、早川斜坑の先の先進坑が約41mです。関連ページ:"南アルプストンネル山梨工区の掘削のペースは?"
参考ファイル
(A)JR東海のHP、"工事の安全・環境の保全・地域との連携(長野県)" にある:
- 1.中央新幹線南アルプストンネル新設(長野工区)工事における環境保全について(30.6MB)
- 2.中央新幹線伊那山地トンネル新設(青木川工区)工事における環境保全について(3.2MB)
- 3.大鹿村内発生土置き場(青木川)における環境保全について(5.0MB)
- 4.大鹿村内発生土仮置き場における環境保全について(2019年8月2日に更新)(3.7MB)
- 5.大鹿村内発生土仮置き場における環境保全について(2020年2月6日に更新)(3.8MB)
- 6.大鹿村内発生土置き場(旧荒川荘)における環境保全について(6.9MB)
(B)JR東海のHP、"中央新幹線(東京都・名古屋市間)環境影響評価書(平成26年8月)" の "長野県" の "評価書資料編" の "18 廃棄物等"(713.6KB) の 2ページ目の「表 18-1-3(1) 年別建設発生土量(大鹿村)」
(C)JR東海のHP、"中央新幹線(品川・名古屋間)に係る事業説明会の資料について(平成26年10月〜12月)(長野県)" 「(平成26年11月10日)大鹿村交流センター」の:
(D)大鹿村リニア連絡協議会の報告は、大鹿村のHP、"リニア中央新幹線情報"。以下に、トンネルの進み具合の報告のみ抜き出しました。第20回は傍聴メモ。それ以外の項目の1行目は、○リニア中央新幹線情報の号数 ⇒ 発行年月日 ⇒ (連絡協議会の回数) ⇒ 開催年月日 です。
○第20回大鹿村リニア連絡協議会(20)2021-0624
○ No.49 2021-0415 (19)2021-0324
○ No.48 2021-0115 (18)2020-1211
○ No.47 2020-1015 (17)2020-0929
○ No.46 2020-0725 (16)2020-0624
○ No.45 2020-0415 (15)2020-0325
○ No.44 2020-0115 (14)2019-1218
○ No.43 2019-1015 (13)2019-0930
○ No.42 2019-0815 (中電関連のみ)2020-0806 ○ No.41 2019-0716 (12)2019-0625
○ No.40 2019-0415 (11)2019-0327
○ No.39 2019-0215
○ No.38 2019-0115 (10)2018-1220
リニア中央新幹線情報No.37 2018-1115
○ No.36 2018-1015 (9)2018-0921
○ No.35 2018-0918 (8)2018-0906
○ No.34 2018-0815
○ No.33 2018-0717 (7)2018-0628
○ No.32 2018-0615
○ No.31 2018-0416 (6)2018-0329
○ No.30 2018-0115 (5)2017-1221
○ No.29 2017-1016 (4)2017-0926
○ No.28 2017-0815
○ No.27 2017-0714 (3)2017-0627
○ No.26 2017-0417 (2)2017-0322
○ No.25 2017-0116 (1)2016-1219 |