更新:2021/10/05
三菱総合研究所「超電導技術の将来展望」
「東濃リニア通信」が三菱総合研究所の「超電導技術の将来展望」という興味深い内容のページを紹介しています。
MRI(磁気共鳴診断装置)が「われわれが生活する上で、身近な超電導製品」である以外は、超電導を利用した技術は実用化はあまり進んでいないようです。理由は冷却に使うヘリウムが高価で取り扱いが難しい点で、安価な液体窒素で冷却できる高温超電導物質の研究開発が行われてきたと説明しています。
三菱総合研究所のこのページは、主に送電技術への高温超電導の利用について説明しています。
送電線に、「超電導ケーブルを使うことで、損失がほぼゼロで大電流を送電でき、さらに既存ケーブルに比べて小径化することも可能である」けれど:
- 「液体窒素の冷却にコストがかかるため、完全に損失ゼロとは言えない」
- 送電線に事故が遭った場合に、「超電導送電では単に(電線を)交換するだけではなく、冷却機の停止や再開なども考慮する必要があり、安全対策や早期復旧対策において、これまでの送電技術にない問題が多く存在する」
- 超電導送電ケーブルは地下に埋設する
(ほとんど地下を走る超電導リニアと共通点) - 「経済的な課題は、国内需要の減少と初期コストが課題」、「東日本大震災後に電力需要が減少した」
- 「技術を開発する側と、利用する需要側のマッチングがうまくいかず導入が進んでいない」
経済活動を分散化するとか、電力の地産地消というようなことを考えると、電力の損失が大きい長距離の高圧送電線に依存するような全国的な電力のやり取りがこれからもあるのだろうかという問題。
高圧送電線はところどころに鉄塔をたてて、鉄塔の間は電線を空中に張るようになっていて、電線の下の山林を伐採する程度のことはしますが、地下に埋設するような工事はしません。
結局、「現在、超電導技術が最も利用されているのは、「低温超電導」を使う磁気共鳴断層撮影装置(MRI)」で、「それ以外の用途では、高い磁場の発生を要する研究開発用の設備などが中心となっている。」わけで、「たとえコストがかかっても、超電導でしかその性能を実現できないもの」ということになりそうです。
超電導リニアへの高温超伝導の活用については具体的な説明はありません。 送電線についてと同じ程度の具体的な超電導技術の採用の必要性の説明がありません。なぜでしょうか?
時速500㎞程度の高速で走行する磁気浮上式鉄道はすでに中国の上海で常電導方式のトランスラピッドが2004年から営業運転をしています。高速の磁気浮上式鉄道にとって、超電導技術は「たとえコストがかかっても、超電導でしかその性能を実現できないもの」とはいえないです。
「技術を開発する側と、利用する需要側のマッチングがうまくいかず導入が進んでいない」という点は超電導でも常電導でも磁気浮上式鉄道についていえることです。超電導より優れている常電導方式のトランスラピッドはドイツが開発したのですが、ドイツ国内での建設はコストに見合う需要がないという理由で中止になりました。ドイツは開発もすでにやめています。