更新:2021/11/06

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ファクトチェック:10㎝浮上と1㎝浮上

中央新幹線の建設主体、営業主体のJR東海への指名について審議した、「交通政策審議会陸上交通分科会鉄道部会中央新幹線小委員会」の席上、委員からでた質問と国交省の回答のやり取りです(2010年3月3日の第1回と4月14日の第2回の議事録から要約)。

Q(委員).トランスラピッド(上海リニア)とJR東海のリニアは技術的にどう違うのか? 上海で実際に乗ってみてほとんど在来の鉄道と変わらないような感じを受けたが、トランスラピッド方式を中央新幹線に使った場合に何かさしつかえがあるのか?
A(国交省).一番の違いは浮上する高さ。揺れなどを考慮すると高速走行では常電導で1㎝浮上のトランスラピッドより、超電導磁気浮上方式の10㎝浮上が適している。500㎞/hを目指す場合、常電導の1㎝浮上は不適切。超電導の方が高速安定性が高い。地震が起きたときのようなことも含めて安定的に走るためには10㎝の浮上高さが必要。トランスラピッドも、現在のところ営業最高速度430㎞/hで走っている。500㎞/hは実現できていない。

国交省は事実と異なった説明をした

(1)超電導リニアは「磁気バネ」で支えているので、ガイドウェイのなかで左右上下ともに遠心力や荷重の変化で車体が中心からずれる。ずれのためのゆとりを考えると10㎝浮上が必要。10㎝浮上というけれど、左右の隙間は実際は4㎝しかない。左右についてはカーブでは最大1.5cmずれる。一方、トランスラピッドでは隙間を検出して制御することで浮上量(上下)も左右の隙間も常に1㎝を保っている。浮上の仕組みがまったく違うのに、単純に10㎝と1㎝を比べても意味がない。

(2)上海で走行しているトランスラピッドは500㎞で営業運転が可能な車体。路線の長さ、カーブの状況から、430㎞で運行をしている。リニアの路線と同じ線型ならもちろん500㎞運転は可能。逆に超電導リニアは上海と同じ線型では走れない。審議会より7年前の2003年11月、上海で試運転期間に時速501㎞で走行していた。つまり500㎞は実現できていたので国交省は委員に虚偽の説明をしている。 なお、工事認可取り消し訴訟で、裁判所は認可に至る各段階で瑕疵があれば認可は自動的に違法という枠組みで審理を進めたいと提案、被告側(国側)代理人は同意している。

(3)ガイドウェイと車体の間の左右の隙間がどれぐらいあるか。JR東海と共にリニアの開発をしている鉄道総合技術研究所が出版した『ここまで来た!超電導リニアモーターカー』(交通新聞社、2006年)によれば4㎝。名古屋の「リニア鉄道館」、山梨県都留市の「山梨県立リニア見学センター」の試験車両の実物展示を見ても明らか。しかし、JR東海は技術的な機密事項なので公表できないとバカみたいな説明をしている。

(4)リニアはコンクリート製の軌道。トランスラピッドは鉄。地震などで軌道の連続性を保つ可能性は鉄の方が高いと思います。三六災害の時、飯田線伝いに歩いて、川を渡るのに、橋が落ちて宙ぶらりんになったレールの上を歩いて渡ったという話を聞いたことがあります。

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