更新:2022/05/22
風越山トンネルと用地交渉についての参考資料
リニア新幹線の飯田市内で掘削の予定の風越山トンネルは住宅地、農地、学校用地などの地下の平均70~80mほどの深さを掘削する計画です。JR東海は、30mより深い部分を掘削する地上の所有者にたいして承諾を得ることはしないと説明しています。土地の所有権は地下に及ぶと民法207条に規定されているので、JR東海が説明通り工事を進めるとすれば、これは不法行為と言わざるを得ません。
中間駅や風越山トンネルの予定地の飯田市上郷地区の住民がつくった「リニアから自然と生活環境を守る沿線住民の会」のメンバーから、非常に参考になる資料を教えていただいたので紹介します。
これら2つの資料から分かることは、JR東海は不法行為をあえてやろうとしていることです。そして、国交省は目をつぶっている。飯田市も飯田市議会の市民の権利や安全を守ろうという意識がない。
本村伸子衆議院議員の国会質疑(2015年3月20日・国道交通員会)
2015年10月24日に名古屋市内で共産党主催のリニアシンポジウムが行われ、会場で配布されたパンフレットに紹介されています。
5ページに、本村伸子議員と宮本徹議員の国会質疑の要点が載っています。
[拡大]
そのうち、2015年3月20日の国土交通委員会での本村さんの質疑を抜粋しました。
「第189回国会 国土交通委員会 第2号(平成27年3月20日(金曜日))」より抜粋
○今村委員長 次に、本村伸子君。
○本村(伸)委員 日本共産党の本村伸子です。
予算委員会の質疑に引き続いて、リニア中央新幹線の問題について質問をさせていただきます。よろしくお願いを申し上げます。
三月二日の予算委員会で、私は、リニアルートの地権者の皆さんの土地の所有権について質問をいたしました。民法第二百七条の規定に、「土地の所有権は、法令の制限内において、その土地の上下に及ぶ。」ということが規定されており、大深度地下法の使用の認可を受けたとしても、土地の所有権は上下に及ぶ、なくならないということを確認いたしました。
その上で、JR東海が説明会やホームページで、大深度地下法による認可を受け使用する場合には、地上の権利が及ばない、所有権が及ばない、なくなるかのような間違った説明をしていることを指摘し、大臣がいつも答弁をされております丁寧な説明どころか、間違った説明をしているんだ、これを撤回し、説明し直させるべきではないかと質問をいたしました。
それに対して鉄道局長は、JR東海に対しましては、正確で、かつわかりやすい説明をするように指導してまいりたいと思いますと答弁をいたしました。
そこで、伺います。その後、国土交通省として、JR東海に具体的にどのような指導をされたんでしょうか。
○藤田政府参考人 JR東海に対しましては、常々、正確でわかりやすい説明を行うように指導しているところでございます。
先般の先生からの御指摘につきましても、JR東海に伝えたということでございます。
○本村(伸)委員 伝えていただいたということですけれども、こうしたやりとりの中で、皆様方にお配りをしております資料の1の部分でございますけれども、JR東海は、土地の所有権についてごまかすような説明のホームページを書きかえました。本文は変えておりませんけれども、参考という部分で、赤線が書いてあるところですけれども、「大深度地下にも土地の所有権が及んでいると解される。」と書いた大深度地下法の解説書の引用を載せたという変更でございます。
しかし、間違った説明というのは、予算委員会で取り上げたこの部分だけではないわけでございます。資料の2をごらんいただきたいんですけれども、JR東海のホームページの別の箇所にも、これも赤線を引いている部分ですけれども、「同法による大深度地下には、地表の権利が及ばないとされておりますので、権利の設定及びそれに係る補償は行いません。」と書き、この部分は全く直しておりません。
私は、このJR東海の対応というのは、丁寧さに欠けますし、不誠実であるというふうに思います。JR東海は、間違った説明をしてきたということに対して反省がないのではないでしょうか。
国土交通大臣、JR東海にもっと丁寧な指導、しっかりとした指導をするべきではないでしょうか。大臣、お願いいたします。
○藤田政府参考人 御指摘の修正を施したページ、この参考を追加したページでございますけれども、JR東海によりますと、これは権利関係を説明する部分でありますので、正確を期すために参考資料もあわせて記載することとしたというふうに聞いております。
それから、補償に関する部分、この部分は、できる限りわかりやすく平易な用語で表現したものであるというふうに説明をしておりますが、いずれにしましても、JR東海に対しては、正確な情報が伝わるように指導してまいりたいと思いますし、先生の御指摘、伝えてまいりたいと思います。
○本村(伸)委員 もっと踏み込んだ指導をしていただきたいというふうに思います。
おかしいと思いますのはこれだけではございません。大深度地下ルートの問題を引き続き申し上げますけれども、資料の3をごらんいただきたいというふうに思います。
これは、JR東海が事業説明会で説明をしたQアンドAですけれども、この部分を読み上げますと、「大深度地下区間では、家屋調査は行わないのですか。」という質問に対して、シールド工法でやるから地盤沈下は発生しないんだ、だから家屋調査の必要はないんだというふうに書いております。しかし、大深度地下の工事で地盤沈下や水漏れなど絶対に起こらないと言えるんでしょうか。
資料の4と5、次のページを見ていただきたいんですけれども、この資料の4が、黒い部分が愛知県春日井市のリニアルートでございます。この大深度ルートの愛知県春日井市では、そちらの地図にも書かれておりますけれども、リニアルートのすぐ近くで、亜炭廃坑が原因と見られる陥没が次々と起きております。三月十五日に陥没したのが、資料の5の公園の写真でございます。
リニアルートで地下を掘るとこうした陥没が誘発されるのではないかと住民の皆さんが不安に思うのは当然だというふうに思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。
○藤田政府参考人 大深度地下につきましては、大深度地下法によりまして、建築物の地下室等に通常供されることがない地下四十メートルの深さ、または、通常の建築物の基礎ぐいの支持地盤の最も浅い部分から十メートルの深さ、このいずれか深い方から下の空間というふうに定義をされております。このため、大深度地下区間における構造物は、強固な支持地盤よりさらに十メートル深い場所に整備されることとなります。
それから、一般的に、シールド工法は地下水の流出などが生じにくい工法でありまして、JR東海の環境影響評価書におきましても、「シールド工法そのものによって、地下水の流出などが原因で地盤沈下が生じたというような事例は確認されておりません。」という記載がなされております。
こうしたことから、適切に施工が行われれば、大深度区間のシールド工法による地盤沈下は生じないものと考えております。
このため、JR東海は、地上部の家屋調査は行わない方針と聞いておりますけれども、念のため、実際の工事の際には、トンネル工事による地盤への影響を確認するために、地表面の状況について変位がないことを確認しながら進めていくというふうに聞いております。
それから、御指摘の亜炭の採掘跡でございますけれども、既往の文献や自治体が実施したボーリング調査により、愛知県春日井市の東部の丘陵地に分布していることが確認されております。
この亜炭採掘跡の対策としまして、JR東海は環境影響評価書の中で、トンネル工事実施前に綿密な空洞調査を行い、必要に応じ空洞の充填などの対策を講じることから、地盤沈下対策は可能である、こういうふうにしております。
いずれにしましても、リニア中央新幹線につきましては、地域住民等への丁寧な説明による地域の理解と協力を得ながら、安全かつ確実な施工が行われるようにJR東海を指導してまいります。
○本村(伸)委員 大深度地下は地下四十メートルよりも深い部分だということなわけですけれども、私は先日、名古屋第二環状線、国道三〇二号の周り、名古屋市天白区、緑区の地盤沈下、土砂の移動の問題で調査に行ってまいりました。
地下三十四メートルのところまで共同の管渠の立て坑、これはシールド工法でやるというふうに言われておりますけれども、その周りの家屋や外壁で、家と外壁と土壌の間に空間があいたり穴があいたり、壁にひびが入ったり、そういうことが発生をしております。
地下三十四メートルというこの事例を見まして、私は、大深度地下四十メートルよりも地下だから大丈夫だと言われても、とてもそれを信じることができないということを痛感いたしました。絶対に安全だと言い切れないと私は思います。
大深度地下トンネルの工事を今実施している東京の外環道の話もお伺いをいたしました。東京外環道では家屋調査を実施するとしております。
資料の6を見ていただきたいんですけれども、これは東京外環道の資料でございます。赤い枠のところにこう書いてございます。「本線トンネル工事はシールド工法を採用することから地上への影響は生じないと考えており、施工の際にも細心の注意をはらって進めて参ります。 しかし、万が一、建物や工作物に損害等が発生し、工事の施行に起因すると確認された場合には、当該損害等に対して補償をさせていただくため、工事実施前の建物等の状況を把握する調査を実施致します。」ということで、家屋調査を行うとしております。
外環道では家屋調査を大深度の部分でも行うということを、間違いないと思いますが、確認したいと思います。
○深澤政府参考人 お答え申し上げます。
東京外環の本線トンネル工事は、大深度地下を使用したシールド工法を採用しております。地上への影響は生じないものと考えております。
ただし、東京外環は大深度地下を活用した初めての道路事業であることから、念のため、大深度地下を使用する部分についても、工事実施前の建物等の状況を調査することとしております。
具体的には、トンネルの地上部に当たる地域とその周辺について、建物の柱の傾斜や基礎のひび割れ状況などを写真や調書で記録するものです。
引き続き、施工の際にも細心の注意を払いながら事業を推進してまいります。
○本村(伸)委員 外環道もリニアも、大深度地下法の使用の認可を受けてやる事業です。リニアはまだ申請さえ行われておりませんけれども、国直轄の東京の外環道は家屋調査をやるけれども、JR東海は家屋調査をやらなくてもいい。事業者の違いで地権者、住民の皆さんがこうした差別的な扱いを受ける。認定する国土交通省として、こういうことを認めるのか。
リニアルートの場合でも、大深度の部分も含め、少なくとも家屋調査を行うべきだと思いますけれども、いかがでしょうか。
○太田国務大臣 今、道路局長からもお話をさせていただきましたが、東京外環の本線トンネル工事、大深度地下を使用したシールド工法を採用して、地上への影響は生じないものと考えておりますという答弁をいたしましたが、その上でこの調査をしているということでございます。
大深度地下におけるシールド工法による工事については、適切に工事が行われれば地上への影響は生じないもの、このように考えています。今まで、そうした例としては、掘っていきますから、そこのところが、シールド自体が壊れるということがなければ、これは地上への影響というのは生じないということが言えるんだと思います。
そうした地上への影響は生じないものと考えているその上で、東京外環では、今道路局長が説明したように、万が一、建物や工作物に損害等が発生して、工事の施行に起因すると確認された場合には、当該損害等に対して補償するために、念のため、工事実施前の建物等の状況を把握する調査、家屋調査を行うこととしているところです。
また、リニア中央新幹線についても、同様の目的で、工事の施行による建物や工作物への影響を確認するために、念のための措置として、工事の施行に合わせまして、地表面の沈下量等を測定する調査を実施する予定と聞いているところでございます。なお、具体的な調査方法については、今後検討されるとのことでございます。
いずれにしましても、大深度区間での工事を含めて、安全かつ確実に工事が行われるようJR東海を指導監督していきたいと考えています。
なお、大深度地下利用の申請につきましては、大深度法に基づき適切に対応してまいりたいと考えております。
○本村(伸)委員 名古屋の第二環状線、三〇二号の事業では、家屋調査を事前にいたしました。事後、影響が出ていても、家の経年劣化だといってなかなか補償してくれないということで、住民の皆さんが泣いておられる例があるわけでございます。
こういう公共事業よりも、JR東海の対応は私はひどいというふうに思います。住民の皆さんの側からしたら、家屋調査もしないで、本当に、万が一の場合、何かあったときに、JRがちゃんと補償してくれるのか、そのことを疑わざるを得ないということだというふうに思います。
そもそも大深度地下法というのは、この制度を使えば地権者の皆さんの同意も要らないんだ、土地物件の詳細な調書もつくらなくてもいいんだ、補償金も払わなくて済むなど、事業者にとっては大変都合のいい制度になっている。一方で、地権者の皆さんや住民の皆さんにとっては、了承もなしに地下に大規模な構造物がつくられる。どこの地下が使われているのかということは正確にはわからないという状況で、本当に勝手な制度だというふうに思うんですね。
私どもは、最低限、地権者の皆さんや住民の皆さんの了解を得てからやるというのは当然のことだというふうに思います。私どもは、大深度地下法の使用の認可のための申請は提出させるべきでないということも強調しておきたいというふうに思います。
まだまだおかしい点は山積しているわけでございます。
今度は、大深度法の対象地域ではない地域、岐阜県、長野県、静岡県、山梨県、神奈川県の一部の問題についてお伺いをしたいと思います。
JR東海主催の事業説明会が今もなお各地で行われているわけですけれども、資料の7をごらんいただきたいというふうに思います。これは岐阜県で行われた事業説明会での資料です。「岐阜県内のトンネル区間における用地取得」という資料でございます。
ここには、このように書いてございます。1、トンネルの上部が五メートル未満の場合、土地を取得する。2、トンネルの上部が五メートル以上三十メートル未満の場合、区分地上権を設定するというふうに書かれております。
これを読みますと、つまりは、JR東海が地下三十メートルと勝手に区切って、それよりも深いところは補償しないというふうに言っていると同じことだというふうに思います。
先ほども申し上げましたように、民法では、土地の所有権はその土地の上下に及ぶと書かれております。
法務省に確認をしたいんですけれども、地権者の皆さんの個々の同意なしに勝手にトンネルを掘ってもいいのか、これは権利侵害に当たらないのかということを確認したいと思います。
○金子政府参考人 お答えいたします。
民法第二百七条は「土地の所有権は、法令の制限内において、その土地の上下に及ぶ。」と規定している、これは委員御指摘のとおりでございます。そして、その土地の所有権は、一般に、当該土地の所有権を有する者の権利の行使につき利益の存する限度で当該土地の上下に及ぶというように解されております。
権利の行使につき利益の存する限度内であるか、あるいはそれを超えているのかにつきましては、個別の土地の具体的な使用態様に応じて判断されることになります。
ある土地の地下を土地の所有者の同意を得ることなく開発する行為が、このような利益が存する限度内でされるのであれば、それは土地所有権の侵害となるというふうに考えられます。
○本村(伸)委員 ありがとうございます。
ここでもう一つ確認をしたいんですけれども、整備新幹線の場合、三十メートルよりも深い部分は補償しないと一律に説明したことがございますでしょうか。
○藤田政府参考人 整備新幹線の事業は、鉄道・運輸機構が実施しております。鉄道・運輸機構によりますと、トンネル上部の土地の利用状況に応じて権利設定、それに伴う補償がされております。
これまでの実績で申し上げますと、上部の土地が山林や農地の場合は二十メートルよりも浅いところについて、それから、宅地の場合は三十メートルよりも浅いところについて区分地上権の設定が行われておりまして、それに伴う補償もされているということでございます。
こうした考え方につきましては、事業を開始する際の事業説明会、あるいは実際の工事に着手する際の工事説明会等の場で説明を行っているというふうに聞いております。
○本村(伸)委員 整備新幹線も、一律にここで切ってしまうということはやっていないということでございます。JR東海が勝手に三十メートルで区切って、そこから地下は補償しませんということを言っているわけでございます。地権者の皆さんは、それに対しておかしいと言う権利があるというふうに思います。
もう一つ確認をしたいんですけれども、個々の地権者の皆さんの同意、承諾がなかったら勝手なトンネル工事は認められないと思いますけれども、いかがでしょうか。
○藤田政府参考人 先ほどの法務省の御答弁にもありましたように、一般に、ある土地の地下を開発する行為に係る土地所有者の同意につきましては、個別の土地の具体的な使用態様に応じて個別に判断をする必要があるものと考えております。
○本村(伸)委員 JR東海は、土地の所有権が上下に及ぶということも説明をしておりません。そして、個々の地権者に、先ほど鉄道局長が言われたような説明さえしていないわけでございます。全く住民の皆さんや地権者の皆さんをないがしろにしているやり方であり、私は到底認めることはできないというふうに思います。こういうことを黙ってやっているわけです。それで、安く早くということでリニア事業を強行しようとしております。
太田大臣にお伺いしますけれども、このままJR東海にこうした勝手なことをやらせていいのかということを、大臣の認識をお伺いいたします。
○太田国務大臣 このまま勝手なということではなく、これまでもトンネル工事というのは全国でさまざまやってきて、そうした流れの中から現在やろうとしているということだと思います。
ただし、私は、地元住民等への丁寧な説明を行って、地元の理解と協力を得た上で事業を進めるよう、その着工認可の際も申し上げたところでありまして、今後とも地元の声に十分に配慮しながら工事を進めるよう、JR東海を指導監督していきたいと思っております。
○本村(伸)委員 次から次へと、丁寧な説明とは全く違うことが事実として寄せられるわけでございます。住民の皆さんをごまかすような、地権者の皆さんをごまかすようなことは絶対にあってはならないということを申し述べておきたいというふうに思います。
まだまだ問題は山積をしておりまして、次に資料の8をごらんいただきたいんですけれども、私は予算委員会の中で、JR東海が主催をいたしました事業説明会で、東京都の町田市と神奈川県の川崎市の県境の立て坑、この図でいいますと8番の資料の右下の非常口の部分ですけれども、ここから出す土砂の搬出のルートをめぐって、JR東海は、町田市側では町田市側には搬出しないと述べ、川崎側では町田市側に搬出する、通すという二枚舌を使って住民の皆さんをごまかすことまでやっているということを質問いたしました。
この町田市と川崎市の県境の立て坑予定地をめぐっては、おかしなことがまだあるわけでございます。
左の方の資料ですけれども、この立て坑の予定地の土地というのは、三五%が国が所有する国有地でございます。リニアの工事実施計画の認可がおりたのは昨年の十月十七日ですけれども、その直前の九月二十九日の国有財産関東地方審議会において、中央新幹線事業用地として時価売却するという関東財務局長の処分方針を適当とする答申が出されております。
この審議会の中で、委員の中のあるお一人がこういうふうにおっしゃっておりました。ここで審議するのはまだ早いような気がする、「一旦住民の方に説明して、」「ある程度そういう丁寧な説明をされた上で、この審議会で、こういう説明をJR東海は現地でしました、残土の問題についてもいろいろ住民から不安もありましたけれども、今おっしゃったような、運転手がきちんと気をつけるようにしますということを説明して大方の了解を得られました、ということで初めてここで審議するというのが筋のような気がするのですが、何か少し話を急ぎすぎているような気がします」と懸念を表明されております。
そして、この委員の方は、「私はこの件に関してはイエスと言い難いので、その点はきちんと議事録に明記していただけませんか。十年以上に及ぶ工事なので、それだけ住民の暮らしに大きな影響を与えると思います。」「搬出路の問題とかその辺の説明が十分にまだなされていない」「正直言ってこの段階でイエスとの判断はできません」ということをこの委員の方は述べられました。
審議会のほかの委員からも、「住民運動がどうであれ、手続に従って粛々と進めるということですね。」と質問がありました。これに対して財務省の担当者は、「はい、そうでございます。」というふうに答えました。このことは、本当に住民の皆さんを無視した許しがたい内容だと私は思います。認可もされていないのに、住民の皆さんへの説明も行わずに、意見も聞かずに国民の皆さんの財産である国有財産の売却を決定するというのは、本当におかしいというふうに思います。
審議会の審議の中で、なぜ急いだかということについて、二〇一五年三月に間に合わないから、認可の前に住民の皆さんに説明せずに審議をしたという話でしたけれども、なぜ二〇一五年三月に間に合わせなければならなかったのか、御説明をお願いいたします。
○飯塚政府参考人 お答え申し上げます。
議員御指摘の土地につきましては、JR東海より、中央新幹線の事業用地といたしまして平成二十七年度から本件土地での工事を着工することを前提に、本年三月に取得したいとの要望が関東財務局に出されているところでございます。
財務省といたしましては、このようなJR東海における事業スケジュールを踏まえまして、関東財務局において本件土地を本年度中に売却することを決定したものでございます。
○本村(伸)委員 JR東海が正式に財務省の方に要望を出されたのが昨年の八月、そして、その翌月の九月にはもう審議会を行って答申を出しているわけでございます。JR東海の言い分は聞くけれども、住民の皆さんには説明もしない、意見も聞かない。
確認しておきますけれども、この今の段階で、国有財産のこの土地の売却について、住民の皆さんへの説明はあったんでしょうか。
○飯塚政府参考人 お答え申し上げます。
一般的に、国有地を含めて土地利用に際しまして、地元の住民等に御説明が必要な場合には、土地の利用者において説明を実施することが基本でございます。本地につきましても、事業実施主体であるJR東海において対応すべきものと考えてございます。
したがいまして、財務省といたしましては、本国有地について住民説明会を行っていないところでございますが、昨年九月に開かれました御指摘の国有財産関東地方審議会での御意見、いろいろな御意見が出されました。ここでの御意見も踏まえまして、JR東海に対しまして、工事実施についての周辺住民に対する丁寧な説明への対応を文書等で要請したところでございまして、JR東海において適切な対応が行われるべきものと考えてございます。
○本村(伸)委員 国土交通大臣、JR東海にいつも大臣は丁寧な説明ということをおっしゃっておられますけれども、国自身が国有財産の売却について住民の皆さんや国民の皆さんに知らせずにやっているわけです。こういうやり方はおかしいというふうに思いませんでしょうか。契約はやめるべきだ、契約させるべきではないと思いますけれども、いかがでしょうか。
○飯塚政府参考人 事務方からお答えさせていただきます。
本件に係る事業につきましては、JR東海が昨年十月に国土交通省から事業実施計画の認可を受けているものでございまして、財務省といたしましては、事業者において地元に対して説明を行って、事業が円滑に進められることを前提といたしまして、本件土地を売却するものでございます。
本件土地につきましては、先ほども申し上げましたが、昨年九月の国有財産関東地方審議会での御意見を踏まえまして、JR東海に対して、周辺住民に対する丁寧な御説明への対応を要請したところでございまして、JR東海において適切な対応が行われるべきものと考えてございます。
○本村(伸)委員 JR東海に対して丁寧な説明というふうに大臣はいつも言っているのに、国自身が丁寧な説明をしていない、これは本当におかしいというふうに思います。
この国有財産の売却については、住民の皆さんへの説明からやり直すべきだと思いますけれども、国土交通大臣、ぜひお答えください。
○太田国務大臣 財務省から話したとおりでありますし、説明はJR東海がやるべきであるということについて、私の方からも、丁寧に説明をということを申し上げたいと思います。
○本村(伸)委員 いつも国土交通大臣は、丁寧な説明、丁寧な説明ということを繰り返しているわけですけれども、国自身が住民の皆さんに対して、国民の皆さんに対してしっかりとやっていないということについて抗議をしておきたいというふうに思いますし、対応を改めるべきだということも申し上げておきたいというふうに思います。
次に、残土の問題についてもお伺いをいたします。
大臣は、所信表明演説の中で、「さきの臨時国会で成立した改正土砂災害防止法が一月に施行されたところであり、住民に対する土砂災害の危険性の周知や避難体制の充実強化を促進してまいります。」と述べておられます。
広島のあの悲惨な災害を受けてだというふうに思いますけれども、土砂災害防止というのは重要な課題で、対策を万全にするべきだと思いますが、大臣、いかがでしょうか。
○池内政府参考人 お答え申し上げます。
御指摘のとおり、昨年八月に発生いたしました広島市の土砂災害を受けまして、昨年の臨時国会で土砂災害防止法が改正されまして、本年一月から施行されております。
国土交通省といたしましては、住民の方々に土砂災害の危険性を早期に認識していただき、避難体制の充実強化を図ることが重要と考えております。
このため、現在、都道府県による基礎調査をおおむね五年程度で完了し、警戒区域等の指定が速やかに行われるよう、都道府県への支援を強化しているところでございます。
引き続き、都道府県に対する財政面そして技術面での支援を行うことにより、土砂災害対策を推進してまいりたいと考えております。
○本村(伸)委員 土砂災害の防止というのは、国民の皆さんの命を守るためにも大変大事な問題だというふうに思いますけれども、先日、私はこういうお話をお伺いしました。
長野県の豊丘村で、土砂災害警戒区域、土砂災害特別警戒区域の地域をリニアの残土の最終残土置き場にする計画をJR東海が村に対して言ってきたというお話をお伺いいたしました。静岡県でも残土置き場が過去に崩落したことがあるような、大変危険な地域だということも伺っております。こういう災害を誘発するようなことが絶対にあってはならないというふうに思います。
私は、いつもこのリニアの問題で国土交通省とやりとりをしておりましても、JR東海がおやりになることだからと言って、国が安全性について責任を持っていただいていないということを痛感しております。
ぜひ大臣に、この土砂災害防止、リニアの問題でもしっかりと責任を持ち、国としてリニアの問題の、南アルプスの問題もそうですけれども、安全性という問題について、しっかりと責任を持つんだ、国として責任を持つんだということを明言していただきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。
○太田国務大臣 安全であるということは大事なことなんですが、例えば、今、土砂災害防止法の土砂災害を防止するということと残土の問題というのは直接関係するものではなくて、私は村がどういうことを言ったか知りませんが、足立先生の方からも時折、残土のことについてあるんですが、残土を積むことによってそれが崩落をするということもあれば、あるいは山の形状ということを残土を使ってしっかりしたものにするという工事をする場合もあればということで、残土の扱いということについても、私は、それら両方の面からも十分対応ということをしっかり安全の中でしていかなくてはならないというふうに思っているところです。
そういう意味では、残土といい、工事といい、建設主体であるJR東海が責任を持って工事をやるべきでありまして、工事の安全性についてJR東海が責任を持って確保しなければならない、このように思っております。
昨年十月の工事実施計画認可の際に申し上げましたが、工事が安全かつ確実に行われるよう、JR東海には引き続き指導監督をしていきたいと思っているところであります。
○本村(伸)委員 このリニアの問題は、民間事業者であるJR東海の事業でございます。ゆえに、情報開示の義務はJR東海にはないという問題も予算委員会で指摘をいたしました。
民間営利企業の事業であるにもかかわらず、これは次の問題に移っておりますけれども、土地の買収について、自治体に業務委託をするケースも少なくないと聞いております。山梨県、岐阜県、名古屋市、愛知県と業務委託をしております。
山梨県では、例えば、協定書の用地の取得事務の項目のところに用地交渉等という部分がありまして、県の職員が補償内容等の内諾を取りつけるということがありましたり、契約の項を見てみますと、売買契約書の作成も県の職員が行う、土地等の権利者から記名押印を徴した契約書、印鑑証明等、契約、補償金等の支払い及び登記に必要な書類を受領するということまでございます。
日本国憲法十五条には、「すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない。」ということが明記をされております。全体の奉仕者であるべき自治体の職員が、一民間企業の土地の買収に手をかして、一部の奉仕者になっているのではないかというふうに思います。
民間事業者の用地買収に自治体の公務員が手をかすのは私はおかしいと思いますけれども、いかがでしょうか。
○藤田政府参考人 リニア中央新幹線は、全国新幹線鉄道整備法に基づく事業でございます。具体的には、国土交通大臣が基本計画を定め、整備計画も決定し、建設主体としてJR東海を指名し、建設の指示を行ったところでございます。
この全国新幹線鉄道整備法におきましては、第十三条第四項でございますけれども、「地方公共団体は、」「新幹線鉄道に関し、その建設に要する土地の取得のあつせんその他必要な措置を講ずるよう努めるものとする。」という規定がございます。
これに基づいて、JR東海は、地域の事情に精通した沿線の地方公共団体に用地取得の協力を依頼し、順次、用地取得事務の委託に関する協定を締結しているというところでございます。
○本村(伸)委員 終わりますけれども、この問題について、リニアの問題については、本当に問題が山積をしております。ぜひこの委員会でもJR東海を呼んで集中審議をしていただきたいということを提案させていただきたいと思います。ぜひ御検討をお願い申し上げまして、質問を終わらせていただきます。
○今村委員長 理事会において協議いたします。
地権者承諾と「限界深度」
国土交通省の「国土交通政策研究所」の「ディスカッションペーパー」のページに掲載されている:
「国土交通政策研究所の見解を示すものではありません」とはしていますが、戦前(1936年)の大審院の判例の紹介など、比較的わかりやすくトンネルの用地交渉についてどうすべきか説明されています。まとめとして:
トンネル掘削に当たっては、地権者に無断で工事を行うことは許されず、補償の要否に関わらず、承諾を取得することが必要で、承諾が得られない場合は土地収用手続を行うべきことが原則である
としており、補償と地下の深さについては:
、「限界深度」補償基準を三大都市圏や政令指定市域内などの都市部と、地方部とを通じて一律に定めて機械的に適用することは困難で、4に引用した「諸事情を総合的に勘案」する必要があり、特に他の公共・公益事業主体が地下空間の権原取得をすでに実施している地域では、「承諾」ではなく、「地域における慣行」を踏まえた「権原取得」による対応が必要と考えられること、(*)
電力会社は、水利権との関係もあって、発電所用の送水管などの地下トンネルについての用地手続きは厳密に行っているようです。
JR東海が建設しようとしているトンネルは多数の乗客を乗せた列車が走るのですから、運行の安全という点からも、全ての地上部分で所有者の承諾を得ることが必須だと思います。
リニア計画は、現在、東海道新幹線の利用者が低迷、静岡県で着工できない、品川からの大深度トンネルの工事が上手くいっていない、ヘリウムの不足、周辺自治体や政府機関や市民からの批判でアメリカ東海岸の計画の環境影響評価手続きが停止、相次ぐトンネル坑内事故など、いろいろな不安な要素があります。
2027年の開業ができないことが確実になって、少なくとも2035年以降になるとの予測も出ているリニア。以前は、リニアの夢に浮かれている状況であった飯田市内なので、トンネル上部の所有者の承諾を得る作業は、それほど困難を伴うことではなかったはず。2020年10月の、風越山トンネルと同じシールド工法の東京外環道の陥没事故以来、飯田市内でも風越山トンネル工事について心配する市民が出てきているようです。
JR東海と飯田市はこの8年間なにをやっていたのかといえますね。
補足:2022/06/01
* 「権原」(けんげん、「権限」と混同を避けるため「けんばら」と読むこともあるようです)。 ⇒ 『コトバンク』 > 権原。例えば、ある土地の地下にトンネルを建設する場合に、事業者が土地所有者であること、または、地上権契約に基づく賃借権などを持つ土地の利用権者であることなど、法律上正当なものとされるための根拠。「権原」というコトバがひっかる印象ですが、原則どおり、他人の所有する土地の地下にトンネルを掘るには所有者の承諾はいるということです。執筆者の中西さんは 地権者が裁判所に工事差止命令を求めた場合裁判所が命令を認容する可能性が高く、また損害賠償請求訴訟が提起されれば不利は免れない
、と書いています。これまで整備新幹線では承諾を得ずに掘ってきたけれど文句は出なかったということが法律上正当なものとされる根拠となり得るのかという問題については、「現在の「地権者承諾」の運用状況」として、独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構(以下「鉄道・運輸機構」)の行う鉄道建設事業の用地取得実務においても、何らかの形で「地権者の承諾」は得てトンネル工事を実施することとしています。
と書いていますが、関係地域全体への工事説明会での説明が個別の「所有者の承諾」にあたるものとはいえないはずです。