更新:2022/06/21
絶対に無視できない超電導リニアの問題点(その2)
~国交大臣の2014年の工事認可は自動的に違法~
タイトルが「その2」なんて大袈裟ですが、20日に掲載のページの訂正です。
JR東海は、ヘリウムのいらない、高温超電導物質を用いた超電導磁石の開発をしているはずです。いまだにニオブチタン系の超電導磁石を搭載した試験車両で実験を続けているのですが、2023年度中に高温超電導磁石の採用について判断を出さなくてはならないはずなのに、開発の状況について何も公表されていません。
と、書いたのですが、「2023年度中」は「2022年度中」が正しいです。国土交通省のHPの「超電導磁気浮上式鉄道実用技術評価委員会」というページの「<開催状況>」の最後の「○平成28年度 超電導磁気浮上式鉄道技術評価」というページ。
超電導リニアの技術開発については、平成2年の運輸大臣通達(当時)に基づき、JR東海と鉄道総研が共同で作成した「超電導磁気浮上方式鉄道技術開発基本計画(以下「技術開発基本計画」という。)」により推進されています。
現行の技術開発基本計画における開発期間が平成28年度をもって終了することから、本日、JR東海と鉄道総研より、今後の技術開発の方向性等について、「超電導磁気浮上式鉄道実用技術評価委員会(以下「技術評価委員会」という。)」に報告され、審議・了承されましたので、お知らせします。(別添資料参照)
今後、本日の技術評価委員会の評価結果を踏まえた、技術開発基本計画の変更申請を受け、改訂作業(国土交通大臣の承認)を進めていくこととします。
「別添資料(PDF形式)」は、JR東海と鉄道総合技術研究所が説明に使ったスライドのようです。日付は2017年2月17日、タイトルが「超電導リニアに関する今後の技術開発について」。
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2ページに「現行の技術開発基本計画」の状況について赤い文字で「営業線に必要な技術開発は完了」と書かれています。そして「今後の技術開発の方向性」では、「1.より一層の保守の効率化、快適性の向上のための技術開発(重点開発課題)」として3つの項目が上げてあるのですが、その一つに「高温超電導磁石の長期耐久性の検証」があります。そして「2.技術開発期間の延長(平成28年度完了 ⇒ 平成34年度完了)」として「上記課題の技術開発に要する期間に加え、関連設備の検査周期を踏まえた技術開発の完了時期を平成34年度とする」と説明がしてあります。
平成34年は2022年ですから、高温超電導磁石が実用できるかどうかの判断は2022年度中(2023年3月)にされるということになります。
ところで、高温超伝導磁石の採用については、スライドの4ページ目。
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「液体ヘリウム・液体窒素を用いない高温超電導磁石について、長期耐久性を検証したうえで営業車 両への導入の可否を判断する。」となっていますから、「営業線に必要な技術開発は完了」としているのに、ちょっと理屈が通らないと思うのです。
実験線の走行試験では、いまだに液体ヘリウムで冷却するニオブチタン合金の超電導磁石をつかっているようです。超電導磁石は従来の鉄道でいえば車輪にあたる重要な部品です。その材質が決まっていないということで、「営業線に必要な技術開発は完了」しているなら「重点開発課題」として取り上げられるはずないと思います。
入手困難な液体ヘリウムを使い続けるとすれば、超電導磁石の「信頼性」は低いといわざるをえないです。また、それに変わるものが使えるかどうか、いまだに決まっていないことも、来年の3月にならないと判断できなというなら、少なくとも、2014年の建設の認可の時点では走行方式が技術的に完成していると判断はできなかったはずですから、国交大臣の認可は違法といえるのではないかと思います。
1980年代にロサンゼルスとラスベガス間の高速交通機関として、超伝導方式ではなく常電導のトランスラピッド方式が候補にあがって、鉄道の車輪にあたる部分が、当時「実証された技術」であったエレクトロニクスを活用したものだったことがその理由だったのですから、たとえば、ロサンゼルスとラスベガス間の路線について、いま、もういっぺん、1980年代とおなじような検討がされたとしても、またトランスラピッド方式が候補になると思います。
JR東海のリニア中央新幹線専門のHPの「FAQ」にヘリウムについての質問と回答があります。
Q10. 超伝導リニアにはコイルを冷却するためのヘリウムが必要とのことですが、ヘリウムが入手困難になることはありませんか。
A. 超伝導磁石を冷却するための液体ヘリウムは循環使用しており、メンテナンスを考えても消費量はわずかです。また、名古屋開業時に必要となるであろうヘリウムは、最大でも日本のヘリウム年間輸入量(令和元年度実績)の約1%にとどまるお想定しており、数年かけて調達することを考えれば、1年あたりの調達量は更に低下します。以上のことから、ヘリウムの入手には問題はありません。
さらに、現在開発を進めている高温超電導磁石では液体ヘリウムは不要であり、営業線に投入することで、必要量は更に減少すると考えています。
高温超電導磁石の詳細についてはこちら
つかう量が少ないから入手に困らないという説明です。「入手困難になること」には、環境問題から天然ガス(ヘリウムは天然ガスの副産物。工業的にはこの方法が唯一のヘリウムを手に入れる方法。)の採掘が国際的に禁止されるとか、戦略物資なので産出国が輸出しないというようなこともあるのですから、JR東海の答えは答えになっていません。「こちら」には:
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省メンテナンス・低コスト化を目指すため、超電導磁石の構造をシンプルにする技術を導入し、営業線で使える耐久性を検証しています。
従来の超電導磁石は液体ヘリウムや液体窒素を使って冷却していました。
しかし、別の素材を超電導磁石に使用し冷却温度を抑えることで、液体ヘリウム・液体窒素が不要となり、構造のシンプル化による省メンテナンス・低コスト化を目指しています。
との説明がありますが、解説の図解のなかの文字がほとんど読めませんね。
TDKの「じしゃく忍法帳」の「第123回 「超電導磁石と小型冷凍機」の巻」に液体ヘリウムや液体窒素を使わない冷凍機の話がありますが…
ともかく、「もっとも重要な部品について」、営業用の車両の仕様が決まっていないということは事実。
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リニア建設は全幹法に基づいて認可されたのですが、全幹法の背後というか土台として鉄道事業法があるわけで、走行技術のカギとなる部分について、技術評価委員会が適正な判断をしたとはいえないので、つまり瑕疵があったので、国交大臣の2014年の工事認可は自動的に違法と判断できるのではないかと思います。