更新:2022/07/05、訂正と補足 07/07、補足 07/08

鉄道の父は何思う、北品川立坑

東海寺そばで、墓穴を掘るJR東海

 ストップ・リニア!訴訟の控訴審の第1回口頭弁論があったので6月30日に東京へ行ってきました。裁判は午後だったので早めに出発して、品川駅の南にあるリニアの第一首都圏トンネルの北品川立坑(非常口)付近を見てきました。

 北品川立坑は山手線の大崎駅と品川駅の間で、大崎駅から山の手通りを品川駅方向に徒歩で約十分。

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大崎駅

 居木橋(いるきばし)交差点から残土の積み出しヤードが見えました。

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 居木橋の上から目黒川を渡る残土運搬のベルトコンベアが見えます。ベルトコンベアは完全には完成していないようです。その背後に山手線と新幹線の鉄橋があります。

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コンベアの背景に山手線電車のグリーンのドアが見えています。

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目黒川をまたぐコンベアの下側

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目黒川左岸からみた残土積出ヤード

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目黒川左岸からみた残土積出ヤード

 ベルトコンベアは山手線と新幹線のガード下をくぐります。

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新架線のガード下から。ベルコンは山手通りを横断して北品川立坑の工事ヤード(と電力変換所予定地)に入ります。

 ベルコンが道路を横断する位置から先に「みたけほどうきょう」があります。歩道橋の上から立坑ヤード周辺が見渡せます。

 「みたけほどうきょう」から西を見たところ。「光村」と書かれた薄茶色のビルの手前が残土積み出しヤードの位置です。ベルコンの左には目黒川にかかる「御嶽橋(みたけばし)」。たぶん、北品川立坑から掘り始めたシールドマシンはこの写真の右のヤード内で停止しているようです。行く手に目黒川があるので、地表から穴を掘ってシールドマシンを修理するにしても大変な場所だと思います。

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(JR東海、環境影響評価関連図 東京 その1に加筆)

 これはヤードの対岸、目黒川左岸にある広大な土地でなにか工事がおこなわれていました。リニアと関係あるのかないのかは分かりません。(2022/07/29 補足:グーグルマップで調べると、製薬会社の第一三共株式会社の品川研究開発センターのようです。山手線、東海道本線、東海道新幹線、目黒川に囲まれた広大な敷地です。ストリートビューが見れる空色の道路で囲まれた部分から判断。)

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 ヤードの出入口

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 北品川立坑ヤード。緑色のクレーンの先端の真下に立坑があります。ヤードの奥の緑地には、沢庵和尚(萬松山東海寺の最初の住職)賀茂真淵(国学者)、渋川春海(江戸時代前期の天文暦学者)、西村勝三(明治の実業家)、井上勝の墓がある東海寺大山墓地(しながわ百景)があります。大山墓地への経路、ヤードの東南の角に「史跡・官営品川硝子製作所跡」があって、右手の路地を進むと大山墓地です。

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「Sustainable Development Goals」は「持続可能な開発目標」。リニア計画では大量のトンネル残土は山間部の谷に処分され周辺に災害の危険性を残すし、明り部では移転対象となった住居や建物がまっさらの家でも全部がゴミとして処分されました。リニアを建設しないことこそが「持続可能な開発目標」に沿ったものであるはず。こういう看板に「子どもたちに誇れる仕事を、 まじめに まっすぐ 人と地球の架け橋に 誠実 和して同ぜず」はどうかなと思います。これじゃリニアに反対する人たちは不真面目でねじ曲がった根性の持ち主で、付和雷同のはずかしい人たちみたいじゃないですか。

 東海寺大山墓地の一番北のほうに井上勝の墓がありました。井上勝という人は、「鉄道の父」といわれる人で、日本の鉄道の建設に最初から関わった人。初代鉄道頭として1872年に新橋・横浜間の鉄道を開通させました。井上のお墓は鉄道記念物になっています。

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 墓地の南に立坑ヤードがあります。

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 墓地側から立坑の一部が見えました。左の青い筒は送風機。「HE」と書かれた奇妙な格好の設備はなんなんでしょうか?

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 ヤードの東側には東海道本線。

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 昨年10月14日から始まった試験掘削は3月末までに、300mの予定が50mしか掘削できずにシールドマシンが停止した状態のようです。金子社長は会見で土が取り込めないと説明したそうです(*)。土が取り込めないのはシールドマシンの胴体が地面に締め付けられて前進させるジャッキの能力が足りずにマシンが前進できない(どうじめ)状態になっているのではという見方もあるようです。

* 『東京新聞』5月27日 "調査掘進が進まぬ理由は…「土をうまくマシン内部に取り込めない」 JR東海社長が説明"

 シールドマシンを設計し直して掘り直したり、改造したりする手があると思いますが、約5.5か月で50mしか掘れないということなら、9200mの北品川工区を掘り終わるまでに、単純に計算すれば、約85年の歳月が必要になります。いま大人の人で生きている人はたぶん誰もいないはず。貧血を、立ちくらみを起こしそうな大事業だと思います。(この段落訂正しました。掘削開始を昨年9月からと記憶していたため7か月としていましたが2021年10月14日掘削開始なので3月末までは約5.5か月です。)

 こうなってしまった原因はなにか? 「鉄道の父」の墓の下を掘るような計画は、なにか「おそれ」ということを知らぬ行いだと思うのです。

 東海寺のそばで、墓穴を掘るJR東海。

 なお、Yutube の次のページでこの付近の動画を公開されているかたがいます。

関連ページ

2022/07/08 補足

 下の写真を見ると山手通り(都道418号線)は路面が波打っているのが分かります。目黒川に沿った道路なのにという感じがしますね。もともと地盤が緩いのでしょうか。

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 歩道橋から東側の様子をグーグルマップのストリートビューで調べて見ました。

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 やはり少し波打っています。立坑ヤードに沿っている部分でストリートビュー見ようとすると山手トンネルの内部が表示されてしまいます。目黒川の下には山手トンネル(中央環状品川線)があってその下にリニアのトンネルを掘る計画(*)。山手トンネルにも何らかの影響が出るのではないかと思いますが、この付近でシールドマシンが立ち往生しかけているのです。(東海道本線より東の部分にストリートビューの「人形」を落とすと地上部分が表示出来ました。)

* JR東海 > 「中央新幹線第一首都圏トンネル新設(北品川工区)シールドトンネルにおける安全・安心等の取組みに関する説明会」(2021年6月8日) の8、10ページ

 このスライドによれば、シールドマシンが西に向かって掘る距離は約8.2km で、北品川工区は北品川立坑から東の1㎞も含んで、合計で9.2㎞ということです。

 ヤードの標高は3.1mなのでトンネルは海面より低い場所です(大山墓地は井上勝の墓付近で8.6m)。品川区のハザードマップではヤードと大山墓地の境が浸水するしないの境になっています。北品川非常口(立坑)は災害時には使えない可能性があります。

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品川区のハザードマップの「浸水ハザードマップ(想定最大規模降雨)」より。「対象とした降雨想定最大規模規模降雨 (時間最大雨量 153㎜)(総雨量690㎜)」