更新:2022/07/16
住民の会の要望に対する飯田市の回答
1日、「リニアから自然と生活環境を守る沿線住民の会」が、飯田市とJR東海に対して、リニア計画に関連して要望書をだしました。6月30日に飯田市からの回答があって、住民の会から世話人代表はじめ7名が市役所で回答書を受けとり、約1時間の質疑を行いました。飯田市側からは副市長、リニア推進部長などが出席しました。
住民の会の要望書
飯田市からの回答文書
開業の見込みは遥かに遠ざかったのに
開業時期の見通しがない現状。軌道や駅はできたけれどリニアは来ないのではないかという声も聞かれます。関連工事が無駄になります。関連工事がこのまま進むことについて心配している住民もかなり多いのです。それに対して、2027年の開業が難しいことはわかっているが、長野県内の工事については、「JR東海、長野県ともに、2027年までの整備を進めていく旨が発表されており、現時点でもその方向性は変わっていません」という理由で、このまま進めるといっています。
開業時期が見通せない理由は、静岡県の問題だけでなく、大鹿村で2017年に南アルプストンネルの掘削が始まった時点ですでに2027年には間に合わないという予測は可能だったし、県内の各地の工事は予定よりどこも2年から3年は遅れているし、工事のペースも予定より遅くなっています。さらに、始発品川駅の約1㎞南から試験掘削を始めた第一首都圏トンネル北品川工区では、約半年で300m掘削する予定が50m、工事ヤード内でシールド機が停止したままになっています。都市部の大深度地下法適用のトンネルで一番最初に掘削の始まった現場です。これらの情報は新聞でも分かることです。地域社会が壊れることへの危機感がありません。リニア新幹線は地方を壊していきます。
トンネルの深さに関係なく土地所有者の承諾は必要
風越山トンネルの計画線上に住む住民に対して、工事前に承諾を取るのかどうかという問題について、1月に飯田市は、JR東海は個々の土地所有者の承諾をとることはしないと説明しているといっていました。
今回の回答は、「説明の重要性は飯田市としても認識」とはしていますが、「適切な時期に関係する皆様のご不安や心配を取り除くためにも、説明会を開催して頂くよう、市としてもJR東海に対し強く求めて参ります」というもので、「個々の所有者の承諾を得るよう求める」という内容でなく、しかも、飯田市の役割は住民への注意喚起であるとしてきしているのに、その点に答えていません。
質疑では、法的問題にも関心を持っていると説明したようですが、この問題は、「赤信号で止まる予定ですか?」と聞いているようなものなんです。赤信号では止まるという原則は守るべきですね。
都市部で、承諾を得ずにトンネルが掘れるように大深度法を制定したのは、大深度法の適用できない地域や事業では、必ず所有者の承諾が必要だということがあるからです。
補償については影響の可能性からするしないという判断は、20mとか30mなどの深さ(60mで行った例もある)で区切って来たことはあったようですが、掘削することについての承諾は全ての場合について行うことが原則になっているようです。JR東海が明確にしていないのこの点。ただし、鉄道施設の安全を図るという視点からいえば、区分地上権を設定して登記する交渉を土地所有者と行い契約を結ぶ必要があると思います。補償とは別に、どこになにがあるのか明確にしておくと作業が必要です。
なお、あるところで聞いた話では、風越山の区分地上権設定(深度5~30mとなる地上の範囲)に伴う補償は「永代」で10万円以下(面積全体で)だったそうです。
シールドトンネルは住民にとっても、JR東海にとってもヤバイ
風越山トンネルの工事方法の適否について第三者の立場の専門家の意見を聞くこと、検討委員会を設置することについて、長野県の環境影響評価技術委員会がJR東海に助言するといっています。しかし、この助言は、今後JR東海が出す予定の「風越山トンネル上郷工区についての環境調査と保全について」(こんな名前になるはず)に関するものです。例えば、豊丘村本山の残土置場について、県の助言は盛り土の安定計算をJR東海が行った2次元解析ではなく、現在主流の3次解析を行って住民に説明するようにと助言したのですが、JR東海は2次元解析で十分と反論しています。飯田市の回答は論点をずらしています。「外部の有識者等の意見も踏まえながら安全に工事を進めていくようJR東海に求めて参ります」とあたかも、環境影響評価技術委員会が住民が求めている第三者的立場の専門家と誤解させようとする意図が見えます。
中川村の半の沢の盛り土、大鹿村の小渋川の岸辺の残土置場については長野県が専門家の検討委員会を設置しました。阿智村上清内路の残土置場でも、村が専門家の現地調を依頼し意見を求めています。
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