更新:2022/08/10
オオザッパなリニア計画
開業が2年先送りされた
もともとリニア新幹線の名古屋までの開業は2025年の予定でした。しかし、201年4月28日に、景気低迷で東海道新幹線の収入が減ったため
(*)という理由で2027年に延期すると、JR東海は発表しました。
* 『日経』2010年4月28日21時41分 "JR東海、リニア開業27年に延期発表 新幹線の収入減で"
まずは、新幹線の利用が多いからという建設理由はないことになりますが、それはそれとして、2年先送りというような、「こまかい」ことがいえる計画なんでしょうか?
早くて2035年、トンザもあるかも
南アルプストンネル長野工区は、2027年を開業時期とするなら、ガイドウェイの設置や電気工事や試運転に2年必要とすれば、2025年までにトンネルを完成させないといけなかったはず。長野工区で斜坑口から掘り始めて先進坑を掘り終わるまでの距離が一番長いのが除山斜坑。斜坑部分が1870m、そこから静岡工区との接続部までの先進坑が約5090mで合計約6960mです。除山斜坑の掘削開始は2017年4月27日ころでした。少なくともこの区間は8年以内に掘らなければならないはず。つまり1か月当り約73m掘れば良いわけです。しかし実際に現在までにどれぐらいのペースで掘れているかといえば、約33~35mといったところ、期待していたペースの約半分。ざっといって、残りの部分を5000mとして、掘削だけに約11年(*)はかかる可能性もあるのですから、開業は2035年以降という予想もできます。
* 先進坑は掘削断面積が斜坑の約半分なので(細いので)、残り約5000mを5年7か月位で掘るとすれば10年8か月≒11年。2022年+11年+2年。
工事に18年半かかる静岡は着工時期未定
大井川の水問題と南アルプスの生態系への影響に関連して、静岡工区の着工の見通しがたっていません。最近はじまった国交省の有識者検討委員会は結論が出るのに2年はかかるだろうとの声もあります。JR東海は静岡工区の工事は5年半でできるといっているので、それに試運転期間などの2年を加えると7年半。今年が2022年なので2029年以降の開業になってしまいます。JR東海はトンネルの掘削のペースが1カ月あたり100mは掘れるとすれば5年半といっているのです。しかし、長野工区の実績(1カ月33~35m)から考えると、トンネル掘削だけで16年半かかる可能性もあり、開業時期は、静岡県がいま着工を許したとしても2040年よりあとになる可能性もあります。
相次ぐ工事計画変更
長野県内では伊那山地トンネルは、はじめは3つの斜坑口と名古屋側の本坑口から掘削の予定でしたが、本坑口付近でヤードの確保が困難なこと、また付近に斜坑を掘る場所も確保できず、結局1つの斜坑から2方向に掘るように計画変更。1方向は下り勾配で掘らなければならなくなりました。また、青木川斜坑からの掘削は、実は伊那山地ではなく、中央構造線の東側の実質的には南アルプスを掘削することになります。まず青木川が約30m上を流れる中央構造線を越えなくてはならないし、その先には蛇紋岩が存在する青田山の下を掘らなくてならないので、現在、非常に慎重に調査をしているようです。
中央アルプストンネルの松川工区では、松川右岸の岸壁から本坑を直接掘る予定が、岸壁が想定よりもろいことがわかって、斜坑を掘るように変更をしています。この斜坑も地質が弱く時間がかかりました。つまり「トンネルは掘ってみないとわからない」。
中間駅の西に続く風越山トンネルは最初はNATM工法で掘削する計画でした。しかしトンネルの上部で地下水を利用が654か所もあることがわかって、東の3.3㎞の区間は水資源に影響の少ないシールド工法に変更。シールド工法はNATMの5倍以上の費用がかかるといわれます。
都市部の大深度地下トンネルも難航
東京の起点、品川駅の少し南から昨年10月から掘削を開始した首都圏第1トンネルの工事は、北品川立坑からシールドマシンを入れることが上手くいっていないようです。このニュースは5月に報道されました。
JR東海 > 各工区のシールドトンネル工事の概要 > 東京都・第一首都圏トンネル(北品川工区) > シールド掘進工事(調査掘進)の進捗状況 (2.1MB)
8月9日には、愛知県春日井市内の第1中京圏トンネル・坂下西工区の立坑から発信するはずだったシールドマシンがカッターが破損するなどしてまだ立坑の中にとどまっているというニュースが出てきています。
JR東海 > 各工区のシールドトンネル工事の概要 > 愛知県・第一中京圏トンネル(坂下西工区) > シールド掘進工事(調査掘進)の準備状況 (2.1MB)
都市部の大深度地下の大口径断面のシールド工法が最初から上手くいっていないということです。
掘ってみないと分からないトンネルがネック
そもそも、2025年だとか2027年だとかに名古屋まで開業できるという性質の建設工事でなかったはず。リニア中央新幹線はほとんど部分がトンネルなんですから。開業時期にことさらこだわることのできるような事業でないのに、「2027年には開業しますよ」というのは無責任というものです。
まあ、いつできるか分からないけれどやりますというのも無責任な話ですね。
そして、アメリカ東海岸、首都ワシントンとボルチモア市間のリニア計画も実は上手く進んでいない。事業中止の結論もある環境影響評価(事業者でなく連邦鉄道局が実施)の途中で手続きが止まってしまっています。
長野県や飯田市や沿線自治体がJR東海の計画についてマユツバと思わなかったとしたら、いや、いまだに気が付かないとしたら、どうかしてると思います。
太平洋戦争は日米開戦前に、陸軍参謀本部も陸軍省もアメリカの工業力を研究して戦争に勝てないことは分かっていたそうです。それでも開戦して結局負けました。JR東海のリニア新幹線計画も、以前から批判がありましたから、建設を始めたこと自体が失敗だったといえるかもしれません。
長野県知事選に立候補した、落選して残念だったのですが、金井忠一さんは、「リニア中止」を公約にあげていました。のちのち先見の明があったと評価されると思いますが、県民の9割はアベさんを支持してしまいました。
前の飯田市長のようにリニアの失敗を見据えて口をつぐむリニア推進派も出始めています。
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