更新:2023/01/17
大鹿村リニア連絡協議会、2023年12月22日
大鹿村のホームページにリニア中央新幹線情報No.56が掲載されました。いっしょに「第26回大鹿村リニア連絡協議会質疑応答概要」も掲載されています。
大鹿村内のトンネル工事の状況についてちょっと誤解していた部分もあったので「リニア中央新幹線情報 No.56」に基づいて整理します。
また、南アトンネル内の避難経路(先進坑)についても、山梨県の早川斜坑口から大鹿村の小渋川斜坑口まで連続してはいないようです。静岡県内で停車した場合どうするかという点で問題があると思うのですが。
南アルプストンネル・長野工区
南アトンネルの先進坑は途中で切れている?
(1)小渋側斜坑口から掘削している工事は、先進坑の工事で蛇紋岩が確認されていたため(情報No.56は、「先進坑の一部区間において、石綿鉱物が含有されている蛇紋岩を確認しました」としている)、本坑工事でも蛇紋岩が出る可能性があるので工事を中断し再開の準備中で、名古屋方向(小渋川橋りょう方面)へ本坑を掘削している。
(2)釜沢斜坑口からは品川方面へ向かって本坑の掘削を進めている。ということは、釜沢斜坑と本線との接続部と除山斜坑の本線との接続部の間(約1442m)には先進坑がないという意味になりますが、そうすると、静岡県内で列車が停止した場合は、除山斜坑から救出に向かうことになります。(大鹿分室に電話で確認したところ(1月17日午後)、アセス段階では南アトンネルは全線で先進坑を掘ると説明したけれど、釜沢から先については地質の状況が把握できたので本坑の掘削を始めた。静岡県内で停車した場合も、小渋川非常口までいかなくても除山非常口から救援できるわけだが、釜沢・除山間の避難経路としての先進坑については検討中とのことでした。ただし、大鹿村中心部から除山非常口に行く道路事情を考えると小渋川非常口からの救援の方がよいと思います。)
(3)除山斜坑口からは品川方面(静岡方面へ)先進坑を掘削している。
[補足 2023/01/27] 2022年10月15日の第25回大鹿村リニア連絡協議会の質疑応答の中で、釜沢・除山間の工事について、「釜沢非常口で先進坑でなく本坑を掘削しているが、先進抗で地質調査をしながら確認後、本坑掘削すると思われるが、並行して掘削していくことでよろしいのか。」という質問に対して、JR東海は「過去に長野県企業局が導水管(*)を掘削している実績と除山非常口からの斜坑の掘削から、この地質調査結果と照らし合わせ同等の地質であると判断したことが一つです。また、先進坑から超長尺ボーリングを除山非常口に向かって削孔しており、その結果も踏まえつつ、前方の地質を確認しながら本坑の掘削を行っております。」と答えています。大鹿分室への質問の際、最初、回答は改めてということでしたが、なんとか答えさせた内容(上記)は、すでに連絡協議会で説明していた内容。電話での突然の質問であっても、既に回答済みのことであれば、上役と相談しなくても答えることはできるはず。こんな社員の使い方をしていてはもったいないと思いますね。社員さんの皆さんたちもそう思いませんかという話。(* 長野県企業局が掘った導水管というのは、小渋川斜坑口の隣にある県の大鹿発電所と小河内沢の御所平の取水口を結ぶトンネル。取水口付近でトンネル掘削で水量が半減するといわれています。)
[ 拡大 ] 「中央新幹線南アルプストンネル新設(長野工区)工事における環境保全について(JR東海)」の図を加工。一部の数字は図を測って算出したものです。
伊那山地トンネル・青木川工区
私、中央構造線の位置を青木川=中央構造線と「誤解」していたようです。
「リニア中央新幹線情報 No.56」より。
青木川斜坑口からの工事は青木川の下を通過して現在国道152号線沿いの民家の下付近を掘削中。作業時間を調整している。民家の地下50m以上はあると思うので工事の騒音や振動の問題があるのでしょうか。
中央構造線で本坑を掘削する前に調査用の小口径の調査トンネルを掘る予定。調査トンネルは埋め戻す予定。
深ケ沢の残土置場は11月に工事が完了。
トンネル工事の進み具合は?
「第26回大鹿村リニア連絡協議会質疑応答概要」にトンネル工事の進ちょく状況について質問してくださった方への回答がのっていました。
- 小渋川斜坑口からの工事については、本坑全長1700m(小渋川橋りょうから釜沢斜坑との接続部までか)の2割程度
- 釜沢斜坑と本線の接続部から除山斜坑と本線の接続部の間の本坑1500mのうち2割程度
- 除山斜坑口からの工事は品川方面への5000mのうち1割程度
補足 2023/01/22
除山斜坑の長さは1870m、本坑との接続部分から静岡工区までの先進坑の長さ4940m(*)。除山で掘削が始まったのは、実質的には2017年11月1日。連絡協議会のあった2022年12月22日までの日数は1877日(5年1カ月と21日)。12月22日に約1割を掘削したと説明しているので、斜坑口から静岡工区まで全長6810mのうち2364mほどを掘削したことになります。掘削期間で掘削距離を割ると1か月当り約37.8mという数字が出てきます。残りの距離は4446mなので、37.8mで割れば、117.6カ月と、これは9年と約10か月になります。今のペースで掘り進めると、トンネルの完成は2032年8月下旬になってしまうはずです。除山斜坑口からの区間は長野工区で最長で、この区間が工事の完成時期の目安になると思います。ガイドウェイの設置や試運転にそれから2年かかるというので開業は2034年秋になるはずです。
* 『南信州』2022年9月2日 "【大鹿村】大鹿村内で掘削を進めているリニア中央新幹線南アルプストンネル長野工区の本坑と先進坑を公開" によれば。
1か月当り37.8mという数字は2020年の7月の豪雨や地滑りの影響などで工事を中断した期間も含めて計算しているので、順調に進めばもっとはやいペースも可能だろうとは思いますが、当初の見込みの1か月当り約60mのペースでもトンネルの掘削完了までに6年以上かかると思います。プラス2年で2031年が開業時期かと思いますが、静岡工区の完成はさらに遅くなるはずです。
JR東海の金子社長は、2020年6月26日に行われた静岡県知事との会談の中で、1か月当り100m掘れるといっているのですが、それでもトンネル掘削だけであと3年と8カ月。2027年には間に合いません。
JR東海の新しい社長は「1月11日の記者会見で、リニアの開業時期について『静岡工区の課題以外にも難しい工事が多くあり、現時点では申し上げられない』」と発言しており、静岡だけが工事の遅れの原因ではなく、そもそも、2027年開業という目標が無理だったといえると思います。そういう無茶な計画は、利潤を重視する民間企業なら絶対にやらないものでしょう。戦前の鉄道省以来の官僚的体質が抜けていないJR東海だからやらかしてしまったことだと思います。
釜沢と除山の間は地質が分かったので先進坑は掘らないということで、除山斜坑の先は先進坑を掘っているということは地質が十分に把握できていないということだろうと思います。土被りはさらに深くなるのでさてどうなることか。そして、静岡県境に近付けば、静岡県から「ちょっと待て」の声がかかるでしょう。
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