更新:2023/02/21
JR東海が自爆テロ?
『静岡新聞』の記事、 "リニア県境ボーリング21日開始 JR東海が伝達、静岡県「極めて遺憾」" によれば、20日、JR東海は山梨県側からの高速長尺ボーリングを21日に開始しすると静岡県に連絡したそうです。静岡県の川勝知事は「『本県の要請に対する調整が整わないまま開始することは極めて遺憾』」と述べたそうです。また、「川勝知事はコメントで『一方的に回答を送付された。地域が理解し、納得できる対応を強く求める』との考えを示した。」。
山梨県側から掘削している南アルプストンネルは静岡県境の約1㎞手前からの掘削について、前方の地質状況を調べるための高速長尺ボーリングをしたいというJR東海と、湧水を心配から高速長尺ボーリングをしてもらっては困るという静岡県の間で何の合意もできていません。
社会情勢や会社の現状は、以下の報道からわかるとおりに、JR東海にとってはリニアどころでない状況と思うんですが、JR東海の金子社長やリニア建設部の皆さんは、本当にどうかしていると思います。
〇 『日経』1月8日 "Views 先読み:鉄道各社、相次ぎ値上げへ 経営戦略の転換が急務"
本文でJR東日本の高輪ゲートウェイ駅(東京・港)周辺の再開発をあげ、「総事業費は約5800億円と財務上重い負担だが、鉄道や不動産事業だけでなく生活サービスなど『非鉄道ビジネス』強化の拠点とし、開業後に年間560億円の営業収益を見込む。」とし、JR東海については、「リニアは東海道新幹線との客の奪い合いも避けられず、収益の改善は見込み難い。計画見直しの議論が広がるのは時間の問題だ。」と書いている。
〇 『日経』1月29日 "新幹線 移ろう誘致熱 整備計画50年、開業へ地元の壁"
「全線開業を目指す4新幹線は工事や着工の遅れが目立つ。資材や人件費高騰にくわえ、コストを冷静に見極めようとする地元の壁も高い。人口減で自治体財政は苦しく、新幹線開業のハードルが上がる。」
〇 『静岡新聞』1月30日 "社説(1月30日)新幹線停車増調査 湧水の不安解消が先だ"
〇 『日経』1月31日 "JR東海、最終利益2.6倍 10~12月 新幹線など利用上向く"
によれば、東海道新幹線の利用者数は2018年12月と比べ83%、運輸収入はコロナ前の73%。「JR東海では『運輸収入などが上向いているが、新型コロナの影響もあり先行きは不透明』としている。」
〇 『中日』2月8日 "JR東海 鉄道依存脱却へ 収益多角化目指し10年計画"、"新幹線頼み タガ外そう JR東海 中村副社長に聞く 不動産に力 駅ビル生活密着"。
「ウェブ会議の普及など生活様式の変化で完全な回復は見通せない。新幹線に依存してきた従来のビジネスモデルからの転換は不可避となった」JR東海は、グループ全体として鉄道事業以外の事業の収益力を強化する10年計画の長期ビジョンをまとめ、鉄道依存からの脱却を目指す方針。「新幹線の高い収益性に依存してきた社員の意識改革を促し、非鉄道事業の利益をコロナ前から倍増すると掲げる」。中村副社長は「この2、3年が勝負」という。
〇 『朝日デジタル』2月8日 "脱・新幹線依存へ、JR東海グループに指針 「10年で利益倍増」"(紙面9日)。
「コロナ禍の影響で21年3月期から最終的なもうけを示す純損益が2年続けて赤字だった。23年3月期は黒字になりそうだが、コロナ禍前の4割に満たない見通しだ。建設中のリニア中央新幹線の東京・品川―名古屋間も、27年の開業が困難になっていて、事業費の見込みも以前より1・5兆円ほど多い約7兆円にふくらんでいる。」
〇 『信毎』2月19日 "(社説)考とともに 論説委員・東條勝洋 リニアの先には いびつな国が見えないか"(web版)。
リニア計画の発想のもとにあるは、「日本の『頭脳・体幹部』」である、東京、名古屋、大阪の三大都市圏への集中がもっとも重要ということ。「地方への視点は乏しい」。「大都市に近づく。経済成長とつながれるかも、という期待。うまくいくだろうか。住民不在の巨大事業をやり通せたとして、出現するのは、何ともいびつな国の姿のように思えてならない」。
太平洋戦争で負け続けていた大日本帝国が本土空襲、2度の原爆投下、ソビエトの参戦までいってようやくポツダム宣言の受諾を決めたのと似たような結果になるだろうと思います。被害を受けるのは沿線地域の住民です。
高速長尺ボーリングの開始は、葛西敬之氏なきあと、JR東海の社内で経営方針の対立が出て来たことへの後ろ向きの反動なのかも知れませんね。金子社長の自爆テロ!?