更新:2023/04/03

御嵩町の住民が豊丘と大鹿の残土置き場を視察

 FoEジャパンの企画で、岐阜県御嵩町の「上之郷地区リニアトンネル残土を考える会」のメンバー3名が、豊丘村と大鹿村のリニアの残土置場を視察があって、同行したので、残土置場の現在の様子の写真を掲載します。

 午前中は、豊丘村内の本山と戸中の残土置場を豊丘村から参加した人たちと意見交換しながら視察しました。大鹿は午後からでした。

 「上之郷地区リニアトンネル残土を考える会」は3月下旬に御嵩町内に計画されているリニア新幹線工事の残土処分場について反対の決議書を御嵩町長に提出しています。


豊丘村・本山(130万㎥)

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ブルーシートが見えるあたりが盛り土の最上部。

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撤去する予定のえん堤が埋まったかたちになっています。手前に工事車両のための道路ができています。JR東海は、まず盛り土の最下部にまで道路を開き、最下部に調整池を建設して、最下流側から残土を埋め立てると説明していたので、工事がこの部分まできたときに掘り返して、えん堤上部の堆積物とともに撤去するはずです。

(2023/04/08 補足)まお、この本山には水源涵養保安林の指定がありましたが、解除の申請の理由として「鉄道施設」を造る目的であり、公益性があるので、適正であるとされ指定は解除されました。解除できる場合にあたるかどうか疑問があります。


 本流へ流れ込む支流の谷からも工事車両を谷に入れる道路が作ってありました。以下、3枚の写真。

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 この部分について、特に斜面との境目を見ると、風化した表土を削らずに埋め立てているように見えると指摘した方がいました。

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 地理院地図にも記載のある雨裂(うれつ)(下写真)。山の斜面の白いライン(黄色矢印)付近まで埋め立てると思いますが、雨裂からの土砂はそのまま盛土の上に載るのではないかと思います。なお、プレハブ小屋のあるあたりで、2017年4月にJR東海は移植のために希少植物の採取を行いました。アセスメントが環境保全の目的で行われるものであることをJR東海が理解していたなら、保安林指定の解除申請さえ未提出の段階で移植作業を行ったことは、先進資本主義国の企業としてどうなのかなと思いますね。

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 最大の支流の谷(以下、2枚の写真)。ここも支流の上流側から埋め立てが行われています。林道からアクセスするのでこうしなければならないのかも知れません。2枚目の写真では下流におりていくための仮の道路が見えます。写真には3台のキャタピラ式のダンプカーが写っています。坂島斜坑口からの残土を埋めているのですが、坂島から本山まで来る林道は退避場を作るなど改良されましたが、全線でダンプカーが対向運転できる道路ではないです。残土の運搬体制がネックになっているのではないかと指摘する方がおりました。

 工事の進め方として、まず一番下流に調整池をつくり、下から順に盛り土していくとはいっても、最初の上流から一番下流まで工事車両が入れる道路(パイロット道路)を作らねばならないわけで、現在はパイロット道路をつくるために上流部を埋め立てているのかも知れないのですが、JR東海や村の説明不足のためだろうと思いますが、工事の仕方が説明会や保安林指定解除のための森林審議会での説明と違っているではないかという指摘もあります。人里離れた山中の工事なので村による細かなチェックや、住民の監視が必要だと思います。

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 坂島斜坑口の少し上流にあるの残土仮置き場(下の写真)。ブルーシートに覆われて約2000㎥以上の要対策土が保管されています。御嵩町からの参加者が、仮置き場が虻川の岸辺にあることについて、増水時に有害物質が流出する危険があるのではないかといっていました。

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 戸中の残土置き場(下沢、下の写真3枚)。

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放水口からいったん布団かご部分染み込んで布団かごより下流に水が湧き出るような仕組みになっているようなのですが、擁壁下部の放水口から流れ出る水の量と、手前の水量が違うように見えると指摘された方がいました。

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上の写真は橋の上から撮影。同じ橋の上から下流側を撮影。上流から来た水をポンプで吸い上げパイプで虻川方向(画面では右側)に流しています。この橋は欄干がなく危険なため覗き込めず、橋の下になにがあるのかわかりませんでした。

 戸中・下沢(くだっさわ)の残土置場は一番下の部分の下流、約100mで虻川に流れ込みます。盛土が崩れた場合には、合流部分は、崖が迫り虻川の川幅が狭くなっているので、川をせき止める可能性があって、非常に危険です。


 豊丘村では、2016年に約52万㎥の谷埋め残土の計画を住民が撤回させた事件がありました(*)。なかなか広まらない話なんですが、長野県内の残土の総量974万㎥の約70%にあたる合計約672万㎥分の候補地が、住民運動や地元自治会の協議の結果撤回されてきました。

* ジャーナリスト樫田秀樹さんのブログにレポートがあります。 "リニア計画には反対しないが、リニア工事で受ける被害には反対する。長野県豊丘村の住民運動が残土埋め立て計画を撤回させた"


大鹿村

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釜沢集落から見下ろした三正坊の残土の仮置き場。おもに拡張した部分が見えています。写真では右側の林の向こう側に、最初に仮置きを始めた部分があるので、残土がどれぐらい搬出されたのかはここからでは分からなかったです。

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釜沢集落から見える南アルプス。

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三正坊の残土置き場。農地の一時転用は期間が3年。更新を繰り返して置き続けています。釜沢から上蔵の間の先進坑が開通したのに、ほとんど残土は減っていないように見えました。

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県道、2020年7月に起きた地滑りの対策事業で、県道脇に設置された集水井戸。

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アカナギ(鳶ヶ巣崩壊地)直下の小渋川の川岸に残土を盛土する工事の準備工事が始まっていました。

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セメントのサイロが並んでいました(薄緑色のタンク)。

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小渋川斜坑ヤードの西側にある残土仮置き場は最後はJR東海の電力変換所になる予定。左の緑色のシートの下は要対策土。要対策土はこの電力変換所予定地内で埋め立ての試験をすることになっています。

 青木地区にある牧場の入り口付近から中部電力がリニアの電力変換所に電力を送るための送電鉄塔が見えました(下の写真の赤丸の中)。

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稜線部を拡大。左の鉄塔は天竜川の西側から大西山のてっぺんに見える鉄塔だろうと思います。

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上の鉄塔の下にブナの木が見えます。

 青木では、御嵩町の人たちと、地元の人たちが意見交換会をしました。御嵩の方たちは、リニアについて特にメリットはないと言っていました。実際のところ、飯田市や下伊那だってメリットはほとんどなくて、工事中に受ける迷惑、いつまでも災害危険と共に残る残土など、本当はデメリットだらけだと思うのですが…。